第7話:伝説の探偵、祖母・夏栄の過去へ
■Scene 1:1987年・ソウル、再び
タイムジャンプの衝撃から覚めた凛奈が目を開けると、そこは再び1987年。
舞台は、GLORY ONEの前身「SONAエンタ」の裏手にある古びたレンガ通りだった。
「……ここか……過去の戦場は」
そのとき、警察官の制服を着た若い女性が通り過ぎる。
長い脚に、切れ長の目。
あまりにも見慣れた顔――
「……ば、ばあちゃん!?」
「……あんた、誰や?」
振り返ったその人は、若かりし日の朴・夏栄。
警察に所属する特別捜査班の刑事だった。
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■Scene 2:若き夏栄と凛奈の“禁断の邂逅”
夏栄は凛奈の姿をじっと見つめると、眉をひそめてつぶやく。
「……妙やな。どこかで見たような顔してる」
「こ、こんにちは……私は、その、ただの観光客で……」
「釜山弁が出とるで」
「……!」
凛奈は観念したようにため息をついた。
「……私は、未来から来た。ばあちゃんの孫――朴・凛奈」
数秒の沈黙ののち、夏栄は腹を抱えて笑った。
「ええわ、信じたる。面白い奴やし、目が嘘をついとらん」
「……マジで!?」
「キムチ探偵の血筋に、嘘はないんやろ?」
それは凛奈にとって、生涯で初めて――“探偵”として認められた瞬間だった。
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■Scene 3:3人の失踪者と記憶操作の研究所
凛奈は夏栄と共に、SONAエンタの地下にある“記憶転写研究室”に潜入する。
そこではすでに、3人の芸能練習生が意識を失って横たわっていた。
その頭には、脳波を記録・編集する装置が取り付けられている。
「これが……GLORYの始まり?」
「“自我を分割し、別人格を植え込む”実験や。これが成功すれば、人は“完璧な理想の自分”に書き換えられる」
「そんなの……人間じゃない」
「せや。人間を“作品”に変えるってことや」
だがそのとき、警報が鳴り響いた。
侵入がバレたのだ。
「凛奈、逃げろ!」
「……一緒に!」
「ええ、走るで!」
だが追手の中に、1人だけ“見覚えのある顔”が混じっていた。
GLORYの科学主任・ク・ヨングン――未来で凛奈が出会った“影凛奈”の設計者だ。
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■Scene 4:封じられた記憶と“光と影”の選択
隠し部屋で息を潜める凛奈と夏栄。
そこで凛奈は、壊れかけの記録媒体を発見する。
そこに映っていたのは、記憶改変実験の第一号として利用された子供たちの映像。
彼らは、洗脳のために“初恋の記憶”や“家族の愛情”を切り離され、作り替えられていた。
「……この中に、セジュンの父親がいる」
「“心”を消された子供たちが、未来に“影”だけを残す……」
「でもそれが、“未来を創る正義”だと信じられとるんや」
夏栄の声が震えていた。
その瞬間、凛奈は決意する。
「私は、ばあちゃんの“正義”を受け継ぐ。誰かの“心”を奪う正義なんて、未来にはいらない」
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■Scene 5:別れの時、そして継承
逃走の末、ふたりはついにタイムジャンプポイントへとたどり着く。
だが――残された時間は、わずか30秒。
凛奈は、過去に残るように言われる。
「ここにおれば、GLORYの始まりを止められるかもしれん」
だが、凛奈は首を振る。
「違うよ、ばあちゃん。未来を壊すんじゃなくて、“未来を変える方法”を見つけるのが私の役目だよ」
夏栄は、ふっと笑った。
「それ、ええ顔やな。ほんまに“キムチ探偵”や」
ふたりは強く抱き合い、凛奈は祖母から古びたキムチ壺を手渡された。
「この中のキムチで跳べ。“未来を越えて、希望を繋ぐキムチ”や」
赤い光が凛奈を包む。
そして凛奈は、再び現代へ。
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エピローグ:事務所での報告と決意
現代の釜山、探偵事務所。
凛奈は戻るなり、記録映像と音声データをクラウドに保存した。
「これで……GLORYの過去も未来も、少なくとも“見える”ようにはなった」
祖母のキムチは、今も冷蔵庫の中で静かに発酵を続けている。
「ばあちゃん、ありがとう。私は、必ずこの時代を守るよ」
凛奈の目に、もはや迷いはなかった。
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