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第107話:再始動──“日本列島事件録”への招待


■Scene1:探偵じゃなくても、事件は追ってくる


春の釜山。暖かな朝日が窓から差し込むなか、私は静かにキムチ瓶のない鞄を閉じた。

数ヶ月前に探偵業を休業して以来、私は女優として働いている。撮影、CM、バラエティ。忙しいけれど、充実していた。


「凛奈、次は日本の仕事ね」

母の梵夜が言う。全国を巡る番組出演依頼が届いたのだ。

観光地を巡る、いわゆる女優×旅のバラエティ。でも、私にはわかっていた。

どこかで“また”事件に巻き込まれる。――きっとね。



■Scene2:羽田空港にて、見慣れた顔


日本に降り立った私を出迎えたのは、富山の舵村本部長だった。

「凛奈ちゃん、久しぶり。実はちょっと困っててね……」


彼が差し出した封筒の中には、奈良県と和歌山県で起きた連続窃盗と強盗事件の資料が入っていた。

観光地で、観光客ばかりを狙った同一犯と思しき人物がいるという。


「私はもう探偵じゃ……」

「鞄にキムチが入ってなければ、それもいい。でも……気をつけて」


その言葉に、なぜか背筋が伸びた。



■Scene3:奈良・東大寺と興福寺の間で


奈良といえば、鹿と寺。私は興福寺から東大寺へ歩く観光コースの途中で、盗難事件に遭遇した。

叫ぶ外国人観光客。追いかける私。すると、背後から何かが迫る。


ナイフだ。

避けきれず、腕に浅い切り傷を負った。犯人は逃げた。観光地での殺人未遂――これは、ただの窃盗じゃない。


私はホテルに戻ってから、こっそりキムチ瓶を取り出す。

「……しょうがないわね」



■Scene4:過去へ、そして観光地の罠


キムチの酸味と辛味が口の中に広がる。過去の風景が戻る。

さっきの観光地。フードを被った男は、鹿せんべい売り場の裏でナイフを仕込んでいた。


そして彼は、客の財布を奪い逃げ、追いかける者に対してナイフで応戦していた。

偶然ではない。完全な“計画犯”だ。


男の動線を確認し、興福寺の出口に先回りした私は、彼の進行を止めた。

「歴史のある場所で、なにやってんのよ」


警察が取り押さえる。境内には、いつも通りの鹿が穏やかに鳴いていた。



■Scene5:犯人の動機


逮捕された男は元・観光ガイド。コロナ禍で仕事を失い、生活に困窮していた。

「奈良の観光なんて、もう誰も来ないって思ったのに…」


「でも、それでも来てる人を傷つけちゃだめよ」

私はそう言って立ち去った。


だが、彼の供述には続きがあった。

「次は和歌山で会う約束があるんだ…アイツに」


和歌山――。第二の事件が始まろうとしていた。



■Scene6:そして、和歌山へ


私は再び移動する。

和歌山の白浜には“アドベンチャーワールド”がある。パンダもいる。

でも、そこに忍び寄る影を感じていた。


「今度こそ、防がなきゃ」

キムチ瓶を鞄に入れて、新たな地へ。


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