第104話:富山湾に響く奇妙な灯 ―舵村本部長と“キムチの記憶”―
■Scene1 富山駅・風の静まる午前
ソウルから成田経由で富山へ。
凛奈が立ったのは、北陸新幹線で富山駅に…
出迎えたのは、かつて富山で幾度となく連携した富山県警・舵村本部長。
飄々とした口調のまま、彼は言った。
「久しぶりやな、探偵業。……復帰祝い、富山のキムチやで」
凛奈は首をかしげた。
「富山で、キムチ……?」
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■Scene2 写真の真相・“灯籠の文字”
舵村が見せたのは、雨晴海岸にある灯籠の写真。
その石の側面に、明らかに後から刻まれた**「김치(キムチ)」の文字**。
地元では、ここ数日で「灯籠に祟りがある」「毎晩誰かが泣いている声がする」と噂が広がっていた。
また、近隣の漁港では3夜連続で“網にかかっていた魚が全て消える”事件が。
「怪談っぽいやろ? でも、これは“お前向き”や思うてな」
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■Scene3 海岸に残る足跡と赤い線
雨晴海岸に到着した凛奈は、キムチをひと口。
視界に広がったのは、灯籠の裏手に続く“波に消えかけた足跡”と、
そこに残された“真っ赤な線”――まるで何かを示すように、海の方角へと伸びていた。
夜、再びその地点に立つと――
灯籠の中から、わずかな“甘酸っぱい発酵臭”が漂ってきた。
「……まさか、中にキムチが?」
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■Scene4 発見された“封印の壺”
灯籠の台座を外すと、中には20年前の新聞紙と共に埋められた陶器の壺。
壺の中には、キムチと共に一冊の手帳があった。
そこに記されていたのは、戦後まもなく富山に移住した在日韓国人一家の記録。
彼らは「自分たちの文化を守るために、キムチを灯籠に封じて祈りを捧げた」と。
そして、手帳の最後にはこう記されていた。
「もし灯籠が開かれたとき、この地に再び“記憶”を呼び戻す者が現れる」
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■Scene5 語られなかった歴史と祈り
舵村本部長は言う。
「この土地には、語られんまま“埋もれた物語”がようさんある。
せやけど、こんな形で蘇るとは思わんかったな」
凛奈は、灯籠にそっと手をあてた。
「これは、怪談じゃない。“誰かの人生”がキムチに封じられていただけ」
翌日、壺と手帳は市の文化財として正式に保管されることになった。
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■Scene6 帰路と、次なる気配
富山駅のホームで、凛奈は舵村と別れる。
「また、呼ばれたら来るんやろ?」
「うん。その時まで、瓶を満タンにしておきます」
その夜、ソウルへ戻った凛奈のもとに、新たな連絡が。
件名は――「釜山港の少年と“沈むビル”」。
凛奈はそっと、ポケットの中のキムチ瓶を握り直した。
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