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第103話:雪と煙、消えた兄の真実 ―釜山・海辺のキムチ探偵―


■Scene1 釜山駅・冷たい風の中で


春の終わり、凛奈は故郷・釜山へ戻っていた。

久々の家族との再会――のはずだった。


だが、父と母の表情は冴えない。姉の信恵が言う。

泰亨テヒョンが……2日前から連絡が取れないの」


彼は韓国アイドルグループ「○○○」の人気メンバー。

次回カムバックに向けてレコーディング中だったはずが、突如姿を消したという。



■Scene2 楽屋に残された“煙”と手紙


凛奈はテヒョンの所属事務所を訪れ、控室を調査。

そこには燃えかけたメモ帳と、かすかに焦げた煙の匂い。


残されたメモの断片に書かれていたのは――

「ファンじゃない、あれは“監視”だ」


キムチをひと口。

視界に浮かんだのは、テヒョンの視線と、マネージャーの不審な行動。



■Scene3 釜山港・霧に消えた足跡


釜山港の防犯カメラに、帽子を深く被ったテヒョンの姿。

しかし、その直後に映ったのは――

まったく別人のように見える“同じ服装の人物”。


「これは入れ替わってる。誰かがテヒョンになりすましている」


凛奈は霧深い港の路地裏で、隠された防音スタジオを発見する。

中には、彼のスマートフォンが放置されていた。



■Scene4 ステージの裏側にある恐怖


調査の末、テヒョンの失踪は**ストーカー型ファン(サセン)**による監禁未遂事件であることが判明。

犯人は、元練習生で現マネージャー補佐の女性。

彼女はかつて同じ事務所に所属し、テヒョンの同期だった。


「私は、アイドルになれなかった。でも……あなたは私の代わりに歌ってくれると思ってたのに」


彼女は“理想の兄”として、彼を永遠に自分のそばに留めようとしていたのだった。



■Scene5 兄妹の静かな時間


テヒョンは無事に保護された。

その夜、釜山の実家で凛奈と並んで座る兄は、ぽつりと言った。


「姉ちゃんはずるいよ。探偵も女優も、なんでもできるんだもん」

「でも、私はキムチ食べないと事件解けないよ?」と凛奈が笑うと、

彼も少しだけ微笑んだ。



■Scene6 そして、日本からの奇妙な便り


翌日。凛奈のスマートフォンに、1通のメールが届く。

差出人:舵村本部長(富山県警)

件名は――「コレ、見覚えないか?」

添付された画像は、海沿いの石灯籠に“キムチ”の文字が刻まれた奇妙な写真。


「なんで富山に……?」


凛奈はキムチの瓶を握り直し、静かに呟いた。

「これは、偶然じゃない。――呼ばれてる」



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