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第102話:小劇場の招かれざる遺体 ―女優と探偵と二重の仮面―


■Scene1 ソウル・弘大ホンデの劇場前、午前8時


「凛奈さん、おはようございます!」


小劇場《극장 달빛(月光劇場)》の稽古場。

凛奈は今日から2週間限定の舞台「静かな炎」に主演女優として出演していた。

朝から軽いリハーサルの予定――だったが、スタッフの声がどこか硬い。


「控室のひとつが開かないんです。鍵も中から……」


凛奈の胸に、探偵としての“嫌な感覚”がよぎる。



■Scene2 扉の向こう、招かれざる遺体


劇場の管理責任者と共に鍵をこじ開けると、そこには――

男性の遺体。俳優チャン・スンウ(29)、明日ゲスト出演予定の若手演技派。


うつ伏せで倒れた彼の近くには、割れた香水瓶と台本。

外傷はない。警察は“睡眠薬による事故死”の可能性を視野に入れる。


だが、凛奈が鞄からキムチを取り出してひと口。

視界に浮かんだのは、二重になった台本の書き換え跡と青い照明の残像だった。


「これは、事故じゃない……“演出された死”」



■Scene3 リハーサル室とふたつの仮面


凛奈は座長であり演出家のパク・ギュジン(43)に話を聞く。

「彼、台詞に口を出すタイプだったからね。演出にも反発してたよ」


別の共演者からは「私たちの稽古に混ざって台詞を覚え直していた」との証言も。

だが、凛奈の能力が捉えたのは――

遺体の手元の台本と、リハーサル用と別の書体。


つまり、誰かが彼用に“改ざんした台本”を用意し、混乱させていた。



■Scene4 控室の隅と、もう一つの香り


凛奈は控室に残された香水の成分と、舞台用スモークマシンの機材に目を留める。

「この香り……意図的に香水と混ぜられてた」


分析の結果、“高濃度の睡眠作用成分”が含まれていた。

遺体のポケットに入っていたお守り袋には、仕込み型の香料カプセル。


つまり――

彼は部屋に入った瞬間に睡眠作用を受け、台本の混乱も重なって脳が停止したのだ。



■Scene5 凛奈、演じる者としての怒り


犯人は――照明係であり、舞台制作アシスタントの女性スタッフ(26)。

かつてスンウに厳しく否定された経緯があり、

「演技を“殺される”前に、あの人を“舞台の上で死なせたかった”」と涙ながらに語った。


凛奈は一切怒らず、ただ静かに言った。

「舞台は命じゃない。演じるって、“生きることを何度も繰り返す”ことなの」


「そこに命を終わらせる余地なんて、ないのよ」



■Scene6 公演初日、舞台の幕が上がる


事件は解決。舞台は予定通り、凛奈主演で初日を迎えた。

舞台袖でさくらと夕姫から贈られた花束を抱え、凛奈は静かに舞台へ。


「今日も、私の“もうひとつの人生”を生きます」

――微笑みながら、客席の灯を見上げる。


その胸ポケットには、小さなキムチ瓶が――

まるで、スポットライトのように、赤く輝いていた。



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