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第95話:虹の城に囁く残響 ―佐賀・唐津城と青い絣(かすり)の記憶とほどけた母の声



今回のキムチ探偵は、佐賀・唐津が舞台。朝焼けの中に浮かぶ唐津城、呼子のイカ、そして伝統のかすり……風情ある港町で描かれるのは、“親子の記憶”と“母の願い”。


事件の発端は、絣をまとった女性の遺体。そして導かれるように明かされる、仲間の一人――夕姫の過去。


食と想い出、織物の糸のように結ばれていく物語を、ぜひ最後までお楽しみください。


■Scene1 唐津駅・朝焼けの虹の城


唐津駅に降り立った私たちは、まずその姿に息を呑んだ。


朝焼けのなか、虹のように輝く白亜の天守――唐津城。別名、舞鶴城。まるで空に浮かぶ幻の城のようだった。


「まるで空に浮かんでるみたいだね」


凛音が呟いたその一言が、今日の旅の予感を告げていた。


私たちは呼子の朝市に向かい、名物・イカの活造りを頬張っていた――そのときだった。


市場の裏手で騒ぎが起きた。漁師の叫び声とともに、倒れていたのは青い(かすり)を身にまとった中年女性の遺体。


観光に来たはずの私たちは、またしても“真実”に呼ばれたのだった。


■Scene2 青い絣と“さとみ”の記憶


遺体の身元は不明。しかし、凛音がキムチを口にした瞬間、彼女の視界に青い光の波紋が広がった。


「……“さとみ”って、声がした」


それを聞いて、夕姫が凍りついたように動きを止めた。


「それ……もしかして……」


遺体が身にまとっていた(かすり)。それは、かつて夕姫の母・夕子が若い頃に愛用していたものと、酷似していた。


「……私の母、二十年前に突然、姿を消したの」


地元警察の協力で進めた調査により、遺体の本名が判明する。


佐田聡美さだ・さとみ――かつてGRT48の運営初期に関わっていた女性だった。


だが、そこに記された名前には、さらに深い謎が隠されていた。


■Scene3 唐津城・天守の“隠し部屋”


凛音の能力が導くまま、私たちは観光客のいない時間帯の唐津城へと向かった。


その天守の奥に、人目を避けるように残された“隠し部屋”があった。


そこには、古びたカセットテープと、色あせた日記帳が残されていた。


再生されたテープから流れ出たのは、柔らかな声。


「私は、生まれた子に会えなかった。でも、せめてこの声だけでも、いつか届けられたら……」


その声を聞いた瞬間、夕姫の目から涙があふれた。


それは、母・夕子の声だった。


■Scene4 呼子港・一通の古い手紙


翌日、夕姫は市内にある古民家――夕子が一時身を寄せていたという場所を訪れた。


その郵便受けの裏に、埃をかぶった一通の封筒があった。


中には、夕子の筆跡による手紙。


「私が逃げたのは、“あの男”からあなたを守るため。

あの人は……本当の父親ではない。

あなたの本当のお父さんは、地元の建設会社の会長さん。

あなたを守れる人に、育ててもらいたかったの」


夕姫の出生の秘密が、二十年の時を経て明らかになっていく。


■Scene5 食と追憶の中で


その午後、私たちは少し足を止めて、唐津の名物に舌鼓を打った。


・呼子のイカの活造り

・ふわふわのいかしゅうまい

・虹の松原のベンチで味わった唐津バーガー

・車を少し走らせて、嬉野温泉のとろける湯豆腐


さくらが、海を見つめながら呟く。


「自分のことって、分かってるようで分かんないよね」


凛音が、笑いながら白菜キムチを小皿に置いた。


「でも、食べ物は裏切らない。ちゃんと残るよ。記憶と一緒にね」


■Scene6 絣の糸が繋いだ親子の証


解剖の結果、佐田聡美の死因は持病の悪化とされていた。


しかし、彼女の胸ポケットから見つかった布切れに、刺繍された“ゆうき”という文字。


それは、幼いころの夕姫が、祖母から呼ばれていた名前だった。


「たとえ会えなくても……お母さん、ずっと見てくれてたんだね」


凛音が最後に見せてくれたのは、佐田聡美が夜の唐津城を見上げていた光景。


その背中にあったのは、母としての後悔、でも確かな愛だった。



■Scene7 心を結ぶ唐津線


唐津駅のホームで、私たちは次の旅へ向かう電車を待っていた。


「行こう、次は宮崎。海と祈りの地よ」


夕姫が、ほんの少し強くなった笑顔で言った。


「私……自分のルーツを知って、少しだけ、大人になれた気がする」


凛音は、そっとキムチの小瓶を夕姫の肩に置いた。


「いつか、誰かのために使って。

あなたの物語が、誰かの希望になるから」


そして列車が、ゆっくりと動き出す。


——記憶と感情を乗せて、私たちの旅は続いていく。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!



佐賀編では、夕姫のルーツと、母との絆を描きました。

青い絣に託されたメッセージ、カセットに残された声、一通の手紙――どれも時間を超えて“愛”を伝えてくるものばかり。


人は、誰かのために名前を刺繍し、声を残し、食べものを分けあう。

そのすべてが「忘れたくない記憶」なのだと、凛音たちは教えてくれました。


次回は、宮崎編。

海辺の神社、南国の空気、そしてまたひとつの“祈り”が、物語を動かしていきます。


キムチ探偵の旅、次回もどうぞお楽しみに!


もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ見逃さないようブックマークを!


皆さまの応援がある限り、キムチ探偵の物語は、まだまだ続いていきます。

感想・レビューも大歓迎です!一言でも励みになります


それでは、また次の事件でお会いしましょう!

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