第92話:黒い福銀と白いキムチ ―博多、誘拐と毒の迷宮―」
アイドルグループGRT48の現役メンバーたちと共に、
今回、舞台となるのは――九州・福岡。
博多の街に潜む連続事件。
一人の銀行頭取の娘が誘拐され、
消えた企業の内部資料、
そして市販薬に潜む“見えない毒”。
いくつもの事件が、まるで一本の糸のようにつながりながら、
やがて「九州の光と影」を浮かび上がらせていく。
事件の鍵を握るのは、“キムチ”と“記憶の視界”。
そして――信じ合う仲間の存在でした。
中洲の夜景と、もつ鍋の温もり。
その狭間で揺れる、人の心と真実の輪郭。
福岡を皮切りに、九州七県を巡る“探偵旅”が、今ここから始まります。
どうぞ最後まで、“九州編”の幕開けをお楽しみください。
■Scene1 博多駅前・春の朝
「……親友の娘が、誘拐されたの」
その一言で、私の今日という日が静かに、しかし確実に狂い始めた。
電話の主は安川凛音。
GRT48グループ所属の現役アイドルで、親戚でもある。
彼女の震える声の先には、かつての仲間であり今は福岡銀行頭取となった松園浩一の娘――松園美咲(24)がいた。
彼女は小・中学校時代、GRT48の林さくら(23)と与田夕姫(25)と同級生だった。
届いた犯人からの要求は、1億5,000万円の現金。そして――
「警察には絶対に通報するな。交渉役は、そちらの“キムチ探偵”だけに限る」
犯人は、かつて九州銀行に勤めていた元職員(46)。
業績悪化による解雇を恨み、同業他社への逆恨みによる凶行――それが今回の動機だった。
■Scene2 警固公園近く・現金受け渡しの罠
犯人が指定してきた現金の受け渡し場所は、天神・警固公園。
福岡の中心街にある、昼でも夜でも人通りの絶えない場所だ。
私は凛音の腕をそっと叩いた。「能力を……使って」
彼女は頷き、特製のキムチをひと口かみしめる。
その瞬間、凛音の視界に“黒い点線”が走った。
――犯人の逃走ルートが見えた。
正規の出口を使わず、地下街を抜けて福岡空港行きの通路へ向かっている……!
私と夕姫は即座に分かれて追跡を開始。
逃走中の男に凛音が声を張る。
「もう終わりにして! 美咲ちゃんの命を、お金の道具にしないで!」
追い詰められた男はついに観念し、逮捕。
美咲は倉庫の中で無事に保護され、涙ながらに凛音に抱きついた。
事件後、福銀頭取からそっと渡された封筒。
中には、2億円の小切手が入っていた。
「娘の命の恩人に、せめてもの感謝を……」
■Scene3 西日本鉄道本社・10年前の封印
「10年前、西鉄で都市再開発のときに提出された設計書……どうしても見つからないの」
相談してきたのは、さくらの兄であり、西日本鉄道本社に勤める社員。
都市再開発プロジェクトに関する極秘資料が、社内データから忽然と消えていた。
デジタルにも、物理的資料庫にも存在しない“何か”。
凛音が再び、白菜キムチをかみしめる。視界に現れたのは――
「旧事務棟・天井裏」。そこに、答えがあった。
埃にまみれた封筒。
中には、当時の不正な利権や金の流れを示す手書きの記録と、押印された建築設計が封じられていた。
10年前の闇が、静かに陽の下へとさらされた。
■Scene4 コスモス薬品・社長夫人と毒薬混入
福岡・熊本・鹿児島のコスモス薬品7店舗で販売された市販薬に、微量の毒物が混入していたことが発覚した。
対象となったのは以下の7店舗――
福岡では、
・福岡野間店(福岡市南区):被害者は女性・29歳、風邪薬を購入。
・博多駅南店(福岡市博多区):男性・62歳、持病の胃薬。
・春日宝町店(春日市):女性・34歳、鎮痛剤。
熊本では、
・熊本長嶺西店(熊本市東区):男性・41歳、栄養ドリンク。
・熊本清水新地店(熊本市北区):女性・19歳、市販の風邪薬。
鹿児島では、
・吉野店(鹿児島市吉野町):男性・51歳、高血圧用のサプリ。
・宇宿店(鹿児島市宇宿):女性・76歳、便秘薬。
合計7名が意識不明となったが、いずれも命に別状はなく、回復の見込みがあるとされている。
だが、これは単なる製造ミスではなかった。
社長夫人が長年、受けていたストーカー行為と関連があることが判明する。
犯人は、元開発部研究員。
社内不倫が社外に漏れ、逆恨みによる報復だった。
「なぜ、致死量に達しなかったのか?」
その理由が明らかになった時、背筋が凍った。
――犯人は、夫人をじわじわと苦しめる“生き地獄”を意図していたのだ。
正義は、執念に勝てるのか。
その問いを胸に、私たちは事件を締めくくった。
■Scene5 中洲・夜のご褒美グルメ
怒涛のような数日間のあと。
凛音、さくら、夕姫、そして私の4人は、ようやく福岡・中洲の夜へ繰り出すことにした。
食べたものは、福岡が誇る“夜の名物”たち――
・もつ鍋(やま中)
・博多華味鳥の水炊き
・博多ラーメン(一双)
・屋台の焼きラーメン
・明太子と冷凍うどんをお土産に
さくらが笑顔で言う。
「こういう時間が、いちばんの幸せかもしれないね」
その言葉に、誰もが頷いた。
■Scene6 那珂川の夜景と3人の誓い
夜風が気持ち良い、那珂川のほとり。
ライトアップされたキャナルシティの灯りが、水面に揺れていた。
凛音は、そっと言った。
「九州の闇は、福岡だけじゃない。あと6県……ぜんぶの“光と影”を、この目で見届けたい」
さくらと夕姫が肩を寄せ合いながら、はっきりと頷く。
「私たちも、最後まで一緒にいるよ」
たとえどんな事件が待っていても。
キムチの味が導くかぎり、私たちは“真実”にたどり着ける。
■Scene7 出発・次の目的地へ
翌朝。私たちは**特急「かもめ」**に乗り込んでいた。
次の目的地は――長崎。
グラバー園、長崎ちゃんぽん、そしてまだ見ぬ次の事件。
九州を縦断する探偵旅が、今、静かに始まった。
「さあ、行こう。次の県へ」
私はキムチの小瓶をバッグに入れ、席に深く座った。
ご覧いただき、ありがとうございました!
今回は「福岡編」として、GRT48メンバーたちの絆と都市に潜む闇を描きました。
アイドルとして、仲間として、そして“キムチ探偵”として――
それぞれが向き合った「光と影」、感じていただけたなら嬉しいです。
次回は長崎編へ。
異国情緒漂うグラバー園、坂道の先にある旧領事館、そして港町に隠されたもう一つの事件――
九州縦断探偵旅、まだまだ続きます。
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