探偵再開ルート:「脚本どおりの凶行 ―横浜スタジオ殺人未遂事件―」
ご覧いただきありがとうございます。
今回は、凛奈が主演を務める連続ドラマの撮影現場で起きた“模倣事件”編です。
台本に書かれた襲撃シーン――
それが現実で誰かを傷つける。
ドラマと現実、フィクションとリアルが交錯する瞬間。
女優として“役になりきる”ことと、
探偵として“真実を見る”こと。
両方の視点を持つ凛奈だからこそ、たどり着ける答えがあります。
今回は、ステージ裏の静かな対決をお楽しみください
■Scene1:台本ページ“43-B”の悪夢
被害者は助監督の新人アシスタント・岡崎由梨(22)。
リハ用ナイフを胸元ぎりぎりでかわし負傷。
床にはドラマ台本43-Bページのコピー。
〈ACT3. 看護師ユナ、背後から刃物で襲われ…〉
犯人はスタッフに紛れ現場から消えた。撮影は急遽中断。
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■Scene2:キムチで読む“犯人視点”
控室で凛奈はキムチを一口。
視界にフラッシュ。
*コピー機前で台本を大量印刷、赤ペンで“×”を描く人物。
*リハ室隅でユナの衣装を撫でる手。
袖口に制作パスの色――緑(美術部)。
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■Scene3:プロップ倉庫の対峙
倉庫で凛奈は美術助手・**佐竹廉(27)**を見つける。
彼は3年前に脚本家志望で持ち込みを断られ、今回も改稿案が却下されていた。
「俺のシーンが採用されれば世界がざわつく…証明したかった!」
凛奈は台本コピーを掲げる。
「あなたの“ざわつき”は人を傷つけた瞬間に終わる。
脚本家なら、観客の心を動かす“余韻”で勝負して」
震える佐竹はナイフを落とし、警備員に身柄を預けられた。
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■Scene4:スタジオ非常階段、姉妹の帰還
夜、信恵がコーヒーを差し入れ。
「女優一本で行くって言ってたのに、やっぱり探偵してる」
「脚本より“現実”の方がトラブル多いでしょ?」
二人で笑い、夜風を吸う。
「改修中の事務所、もうすぐ完成だね」
「うん、ステージと探偵、どっちの依頼も受けられるようになるよ」
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■Epilogue:照明スタンドに映る小瓶
撮影再開直前、凛奈は照明リフレクターに映る自分の影を見つめる。
胸ポケットでキムチ瓶が小さく揺れた。
「女優と探偵、どちらの幕も閉じない。
次の舞台は…観客席が決める番」
スタジオの赤ランプが点灯し、再生のカチンコが鳴った。
――Special Chapter END & シリーズ一区切り――
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は「ドラマの台本」が現実を引き起こす、
凛奈にとっても予想外の事件を描きました。
人の心を動かすために書かれる脚本。
でも、伝え方を間違えれば、人を傷つける“凶器”にもなる――
その危うさと、それでも物語を書く人間の想いを、
佐竹廉というキャラクターに重ねています。
今回もまた、凛奈は「女優」と「探偵」のどちらも捨てきれませんでした。
だからこそ、彼女は両方の世界を行き来して、
ステージでも、現実でも、“真実”と“感動”を届けようとします。
次回は、改修を終えた釜山の事務所編、
あるいは新たな事件への幕開け――
また次の舞台で、お会いしましょう。