サイドエピソード 「1億5000万円の行方 ―紙面を賑わすキムチ探偵と事務所改装計画―」
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、探偵であり女優でもある朴凛奈が、「ちょっとした皮算用」と「大胆な自己投資」で新たな一歩を踏み出すエピソードです。
――愛媛での依頼報酬・1億5000万円。
皆さんなら、どう使いますか?
凛奈は「地元の街おこし」と「自分の夢」、そして「キムチと探偵事務所の未来」に使うことにしました。
お金の使い方も、彼女らしく。
新聞広告で“世界のキムチ探偵”としてデビューし、ソウルでも釜山でも名を知られる存在へ――。
今回も、事件ではなく日常の中にある「挑戦」と「ユーモア」をお楽しみいただけたら嬉しいです。
それでは本編、どうぞ!
1. 換算と皮算用
愛媛で受け取った 1億 5000万円。
帰国したその夜、凛奈はオンライン両替サイトを開き、ざっくりレートを叩き込んだ。
1円 ≒ 9.6ウォン(20○○年春)
1億5000万円 × 9.6 ≒ 14億4000万ウォン
― 預金:10億
― 運営予備費: 3億
― 事務所改修: 1億(=日本円で約1000万円)
― 残り: 4000万 → 予備+寄付
「――14억 4천만 원……ゼロが多すぎて実感ない」
と書き込み、合計を二度見してから深呼吸した。
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2. “一面広告”という投資
翌日、ソウルの老舗紙 『東亜経済デイリー』 編集局へ。
探偵活動の取材で顔見知りになっていた文化部デスクに、凛奈は切り出した。
「事件じゃなく“私の素顔”を広報したいんです。
女優と探偵、二足のわらじが“地元の誇り”になるように」
デスクは驚きつつも面白がり、日曜朝刊一面の“ヒューマン枠”を確保。
タイトル案は――
〈キムチで時を越える女優探偵、釜山から世界へ〉
掲載料は広告扱いで 1200万ウォン。
「自己投資よね」と小切手を切る凛奈。
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3. 紙面効果――電話パンク
発行翌朝、事務所の固定電話が鳴り止まない。
•CMオファー(食品・旅行・教育ソフト)
•高校の講演依頼
•「失踪中の猫を探して」レベルの相談まで20件以上
マネージャー兼秘書・チェ代理は耳に受話器を挟みつつ悲鳴を上げる。
「代表! 電話回線を増設しないとパンクします!」
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4. 改修プラン:1億ウォンで夢を積む
凛奈は 改修予算 1억 원(およそ 1000万円) を地元建設会社に提示。
•1階:カフェ兼待合いロビー(一般相談者が入りやすい)
•2階:女優部門の自撮りスタジオ+セルフオーディションルーム
•地下:キムチの熟成室+機密資料アーカイブ
「“キムチと真実”が同じ地下で発酵する…ちょっとロマンあるでしょ?」
工期は3か月。地元雇用 15名、釜山産資材優先──新聞効果で「街おこし案件」扱いとなり、市から助成金も決まった。
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5. ソウル駅発・女優モード再開
着工当日、ヘルメット姿で鍬入れ式を済ませると、凛奈はスーツケースを引いてKTXのホームへ。
行き先は東京・横浜──日本サスペンスドラマのゲスト主演だ。
駅構内ビジョンには、今朝の新聞一面が映し出されていた。
〈世界で噂の“キムチ探偵”、俳優業でも快進撃!〉
手を振る作業員に笑顔で応えながら、凛奈は確認する。
ポケットの小瓶――まだ半分ほどキムチが残っている。
「俳優だけの日も、探偵だけの日も、
胸の発酵だけは止めない――。」
KTXが滑り出し、釜山の街が遠ざかる。
14億ウォンの未来は、線路の先でなお ferment(発酵)し続ける。
お読みいただき、ありがとうございました。
今回は「経済活動編」というか、「キムチ探偵・起業家モード」な凛奈でした。
――女優・探偵・事務所代表・地域貢献者。
どこまでも多才で、けれどキムチと釜山への愛だけは一途な彼女の姿を描きました。
なお、今回のレート計算や韓国の新聞広告事情、地元企業とのコラボなども、できる限りリアルに寄せつつフィクションとして脚色しています。
「釜山の街おこし案件」として市から助成金が出るくだりは、実はモデルケースもあったり……?
次回は、日本でのゲスト主演ドラマ編、あるいは釜山の事務所改修後の新事件を予定しています。
どこへ行っても、誰と出会っても、凛奈の胸の中ではキムチが発酵し続ける――
そんな彼女の日常を、これからも楽しんでいただければ嬉しいです。
また次の発酵タイムでお会いしましょう。