0歩目 少年、落ちる。
「きれい…」
灯りすらない洞窟の、細い道中。
ボロボロな白衣を着た、若干8歳の少年がそうつぶやいた。
手の中には、綺麗な水晶。その詞を知らない少年はなんと表現したらいいのかわからないようだ。
しばらくそれをじっと見つめていたが、突然それは粉々になって壊れてしまった。
「あ……」少年は寂しそうにした。
が、すぐにそこを離れて、またさらに奥へ進んでいった。
少年は若干歩き、開けた空間に出た。
沢山の鍾乳石が生えており、それらは特殊な物質を纏って青白く発光している。
少し先には大きな水溜りもあり、光を反射し、とても幻想的な空間が形成されていた。
「わぁ……」少年は目を輝かせながら、辺りを見渡した。
どこを向いても鍾乳石が輝いている。そんな空間で、少しテンションが上がった少年は、ルンルンと、水溜りに向かって歩き出す。
ちゃぷ…ちゃぷ…ちゃぷ…
水の弾ける音を3回。少年はすっかり鍾乳石にみとれていた。
と、少年は不注意で滑ってしまう。
ズルっ。「あ。」
後ろには、硬い床。この速度で身体を打ち付けられれば、ただでは済まない。
そんな予想とは反対に、少年の身体が床につく瞬間に床は液状化した。
「うわぁっ!」
少年はそのまま床の向こうへと、落ちていった。