序章
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季節の変わり目。
少し冷たさを含む風が城内を抜けて行く。
その風は書物を抱えて歩く二人の文官の袖を揺らした。
「今日は肌寒いが良い天気だな」
「ああ、陽が出ていると気分が良い」
「こりゃあ眠くなる」
「おーい、今日は昼にお二人が戻られるんだぞ」
「分かってるよ、ただ言ってみただけだ」
「ご無事だと良いな」
他愛もない会話をする二人の文官。
その一人が話を続けた。
「あのお二人なら心配いらないだろ」
「それもそうか」
ははは、という笑い声。
そして二人は作業室へと消えた。
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『蒼覇様と紫晏様がご帰還されたぞ!!』
見張り台に立つ者の声が城内へ伝わる。
その声を聞き、武官達は揃って門の前に列を作った。
『門を開けろ!!』
見張りの合図で重々しい扉がゆっくりと開く。
徐々に見えて来る扉の向こうからは、二頭の馬に乗った青年達が伺えた。
そして扉が全て開き切る前に、青年達を乗せた馬は城内へと帰還した。
「蒼覇様、紫晏様、お帰りなさいませ」
そう言った武官は手を合わせ、二人に深く頭を下げた。
そして、
「只今戻った。留守番ご苦労だったね」
白銀の髪に、常磐色の瞳を持つ青年と
「留守の間、ありがとうございました」
亜麻色の髪に、琥珀色の瞳を持つ青年が言った。