雨の日の心霊スポット
こちらは百物語四十八話になります。
山ン本怪談百物語↓
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大学時代、付き合っていた彼女と「心霊スポットデート」という変わったデートをよくしていました。
夜中に2人で心霊スポットを歩き回るというだけのシンプルなものです。
その日は、M県の山奥にあるIトンネルという場所に向かいました。
車で荒い山道を進みながら、カーナビを見て場所を何度も確認する。
「あっ!あのトンネルじゃない?」
しばらく車を走らせていると、目の前に目的のトンネルらしきものが見えてきた。
「うぁ、雨降ってきたよ…」
それと同時に、予報外れの大雨がいきなり降り出した。大粒の雨が車のボンネットや窓に激しく叩きつけられていく。
「後ろの席に傘置いてあるからさぁ。場所もトンネルだし、大丈夫だよ」
俺たちはトンネルから少し離れた場所へ車を停めると、2人で相合傘をしながらトンネルの入り口まで歩き始めました。
「今日は雨降るって言ってなかったのにねぇ」
「こういう日もあるよ。今回はトンネルだから、濡れる心配もあんまりないし…」
俺たちは雨に濡れないように気をつけながら、ゆっくりとトンネルへ向かいました。
トンネルの中は薄暗いライトで照らされており、人の気配どころか虫もいない不気味な空間でした。
ザァーーーーーーー…
傘に向かって、大きな雨粒が勢いよく叩きつけられる。
「雨も激しくなってきたし、とりあえず中へ入ってみようか?」
「えぇ…ちょっと怖いなぁ…」
雨も激しくなってきたので、俺たちは怖がりながらもトンネルの中を歩いてみることにしたんです。
ザァーーーーーーーー…
「うわ、これ見ろよ」
トンネルの中へ入ると、すぐ近くに枯れた花束と缶ジュースが置かれていることに気がついた。どうやら、このトンネルで誰かが亡くなっているらしい。
ザァーーーーーーーー…
「ここで女の人が死んだって噂は本当だったんだ…」
傘に雨粒が叩きつけられる中、俺たちはさらに前へ進んでいく。
ザァーーーーーーーー…
トンネルの真ん中まで来た時、彼女が『異変』に気がついた。
「ねぇねぇ…ちょ、ちょっと聞いていい?」
「なんだよ…」
彼女がいきなり俺の手を強く握り始めたのです。俺はてっきり、何か告白でもするのかと思ったのですが…
ザァーーーーーーーー…
激しい雨粒が傘に叩きつけられる中、彼女はゆっくりと足を止めた。
「私たち、今トンネルの中を歩いているんだよね?」
「あぁ、そうだけど?」
彼女はさらに強く俺の手を握った。そして…
「う、うぁああああああああああああああああっ!!」
彼女が俺の手を引きながら、いきなり歩いて来た道を戻り始めたのです。
「どうした!どうしたんだよっ!?」
「いいから早くっ!逃げなきゃやばいよっ!!」
彼女は泣きながら俺の手を引いて走り続ける。まだ意味がわからなかった俺も、彼女と一緒に急いでトンネルを抜け出しました。
「はぁはぁ…なんだよ!どういうことだよ!?」
雨の中を走り続けた俺たちは、無事に車へ戻ることができました。車の中へ入ると、俺はすぐに彼女へ走り出した理由を聞いてみました。
「なんで!?どうしてわからなかったのっ!?」
彼女は持っていた傘を見つめながら、震える声で話し始めた。
「トンネルの中にいるのに、どうして傘に雨があたるのよぉ?」
薄い水色だった傘は、どういうわけか真っ赤に染まっていた。
次回のお話は「夏のホラー2021」の特別篇を予定しております!
7月08日の深夜に出す予定なので、よろしくお願いします!