第3-2話 銀髪少女エージェント登場
「……どうも、合流遅れました」
「本日からコーウェン魔法士官学院、特A科クラス所属となるルイースティア・セブンスです」
「名前が長いと思いますので、ルイとお呼びください」
ルイと名乗った少女は、浮遊魔法を解除したのか、ふわりと地面に降り立つ。
歳の頃は12~13歳に見える(学院の入学願書で見たが、13歳だったはず)。
同世代と比べると少し低い背丈。
きらりと輝く美しい銀髪をツインテールにしており、ネコミミ型の髪留めで留めている。
吸い込まれそうな大きな深い赤の瞳は、わずかに吊り上がった目尻と合わせ、理知的な光をたたえている。
少女らしい柔らかな頬に、桜色の唇。
スレンダーな体躯を純白の学院制服で包み、足元は黒のタイツとローファー。
クールで涼しげな印象を与える抜群の美少女だ。
彼女はオーガを黒焦げにしたネコ型の魔導武器?を空中から回収し、ポシェットにしまうと、大きな目をぱちぱちとさせながら、無表情にこう告げる。
「ふむ……わたしの派遣元から、セシルさんのスキルが凄いと聞いていましたが……」
「オーガレベルの魔獣に不意打ちを許すとは……特Aクラス、こんなものですか」
「なっ!?」
特に悪気があって言ったのではないだろう……あくまで事務的に、感じたことを口にするルイ。
「むぅ……見た目かわいいのに、かわいくないことを言う……あたしはともかく、セシル教官は凄いよ?」
ルイの言い方に少しむっとしたのか、反論するクレア。
「失礼しました……言い方が悪かったようです」
「ですが、わたしも”軍”からこのクラスに所属するように命令されましたので……自分が成長できる場でないと、来た意味がないかと」
「オーガは群れで行動するので、まだいるはずです」
「先ほどは私が倒してしまいましたから……みなさんには実力を証明して頂かないと……」
あくまで淡々と述べるルイ……”軍”か。
僕がもらった経歴書には、”帝国軍”所属としか書かれていなかったけど、先ほどの術式から考えて……特殊部隊を抱える特別な部署から派遣されてきたという所かな。
僕は3人に気づかれないように魔導の気配を探る……1、2、3……オーガはあと3体いるようだ。
今後の指導の事を考えても、彼女の戦い方はしっかり見ておくべきだろう。
「なるほど、僕の探査魔法でも……オーガはまだ複数いるな……そうだね、まずはルイ、教官としてキミの戦い方をもう一度見せてくれるかな?」
「さすがにセシルさんも気づきましたか……了解しました」
やはり彼女もオーガの気配に気づいていたようだ。
僕とルイの視線の先、斜面に広がる茂みから、2体目のオーガが姿を現す。
ウオオオオオンンッ!
「……行きます! ”オプションビット”!」
彼女は、雄たけびを上げるオーガに向けて臆する様子もなく構えると、先ほど感じた帝国特殊部隊の物と思われる術式を展開する。
ヒュンヒュンヒュンッ!
軽い発動音がし、ルイのポシェットから3機のネコ型魔導武器……オプションビットが飛び出す。
ウオ、ウオオオオンッ!
向かってきた「それ」を脅威と感じたのか、丸太のような腕を振りながら、叩き落そうとするオーガ。
「そんなもの……当たりません!」
ルイの髪飾りが赤く輝き、膨大な魔力が放出される。
彼女の魔力に反応し、複雑な軌道を描きながらオーガの腕をかわしていくオプションビット。
「ふっ……ふっ……!」
彼女の操作に即座に反応するオプションビットは、的確に魔力ビームをオーガに撃ちこんでいく。
1分後、先ほどと同じように黒焦げになったオーガが転がっていた。
「ふぅ……ふぅ……はい、倒しました」
わずかに息が乱れている……額に一筋の汗を垂らしつつ、勝利のポーズ取るルイ。
わずかに口角が上がったドヤ顔がカワイイ。
もしかして、根はおちゃめな娘なのかもしれない。
「うぐっ……なにあれ、反則じゃない?」
ルイの鮮やかな戦闘シーンに、クレアが舌を巻いている。
ただ、あのオプションビットは魔力の消費が激しそうだ……彼女の戦い方は、もっと改善の余地がありそうだね。
「よし、講評は全部終わってからにしよう……次、クレアとカイ!」
仲間を倒されて怒り狂ったのか、3体目のオーガが踊り出てくる。
「…………」
興味深そうにふたりを見るルイ。
どれどれ……特A科クラスの戦い方を彼女に見せるとしようか。
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