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第2-2話 魔導翻訳付与教官とお嬢様?生徒

 

「僕はセシル・オルコット。 みんなと同じ教官一年生で、年齢も24歳でみんなとそんなに離れていないから、気楽に行こう」


 イレーネ教官が退出した後、僕は生徒たちに改めて自己紹介していた。


「田舎のカント共和国出身で、魔導革命全盛の帝国にはまだ慣れていないけど……キミ達と一緒に成長していけるよう、全力で教えるから、よろしく!」


「はい、よろしくっす!」


「はい、よろしくおねがいしますわ」


 僕の自己紹介に元気よく返事するカイと、柔らかな返事を返すクレア。


「今日はこの後チュートリアルを行う予定だけど……ん? どうかしたのクレア?」


「…………うううっ……もう耐えられない」


 イレーネ教官から渡されたカリキュラムをチェックしながらファイルをめくっていると……目の前でクレアが顔を赤くしながらぷるぷると震えている。


 熱でもあるのだろうか、僕が心配していると……。


「セシル教官! すいませんっ! あたしもう我慢できないんですっ、着替えてきてよろしいでしょうかっ!?」


 意を決したように顔をあげたクレア、いままでのお嬢様っぽい空気をどこかに投げ捨てると、しゅたっと右手を挙げ、元気な声で叫ぶ。


「え? 着替え……?」

「大丈夫だけど……スキルチェックとチュートリアルの説明をしたいから、急いでね?」


「ありがとうございますっ! すぐ戻ってきます!」


 彼女はカバンを持って立ち上がると、ぴゅ~っと全力疾走で教室を出て行ってしまった。


 ……あれ、やけにキャラ違わない? 深窓の貴族令嬢はどこに?

 困惑する僕をよそにきっかり2分後、息を切らせながら彼女が戻ってきた。


 ガラッ……


「ふぅ、ふぅ……お待たせしましたっ!」


「……え?」


 開かれた教室のドア。

 そこに立っていた彼女はまるで別人だった。



 腰まであった金髪はウィッグだったのだろう、肩までの長さに。

 大きな青い瞳はそのままに、きりりと力強く吊り上がった眉。


 服装はもちろん純白の学院制服だが、上半身は半袖となり、スカート丈は短く。

 すらりとしているが、鍛えられた筋肉を感じる生足の足元はスニーカーだ。


 化粧を落としたのか、肌は適度に日に焼けていて、深窓の令嬢改め、爆走元気美少女という雰囲気に変わっていた。


挿絵(By みてみん)


「う~~っ、すっきり!」


「教官、すいませんでしたぁ! あたしの両親、おしとやかな魔法使いになれなれってうるさいんですけど、やっぱあたしには無理なんですよねっ!」


「あたしはおじいちゃんのあとを継いで、格闘で世界を目指しますっ!」


「なので、あたしは魔法使いより格闘家としてのカリキュラムを希望します! よろしくお願いしますね、セシル教官!」


 グイっとガッツポーズしながらにっこり笑うクレア。


 ここ、魔法士官学院なんですけど……なぜここに来たのか……。


 担当教官として、わかった! と軽々しく言えない僕は、困惑しながら彼女のスキルシートを確認する。


 レベルは15……体力500に魔力は1000!?

 このレベル時点ではとびぬけた魔力量か……スキルレベルを確認する。


 爆炎魔法B、氷雪魔法B-、電撃魔法C+……格闘S

 むむ……十分な魔法の才能は有りつつ、格闘スキルが飛びぬけているのか……。


 ”尖った特徴を持つ生徒”とはこういう事ね……僕は改めてイレーネ教官の言葉を思い出していた。


 それにしても、彼女の希望を無視するのも心苦しいな……何かうまい育成方法を考えてみるか。

 もともと教育が好きな僕は、彼女の育成方針について考えを巡らせるのだった。



「……おっと、話がそれたね」

「今日は昼食の後、街の郊外にあるチュートリアルダンジョンに挑戦する」


「いきなりの実戦になるけど、これが特A科クラスのカリキュラムの基本だと思ってくれ」

「チュートリアルダンジョンは、全3階層のダンジョンで、最奥に設置されているクリア証明書を取ってきたら終了となる」


「僕も同行するし、主目的はクラスのスキルとコンビネーションを確認する場とはいえ、本物の魔獣が出てくるダンジョンだから、ふたりとも気を抜かないように」


「はいっ! セシル教官」


「了解っす、教官!」


 元気よく返事をするふたり。

 特A科の初めての活動が始まろうとしていた。



 ***  ***


「ふたりとも、準備は出来た?」


 ここは学院があるニールズの街郊外、学院の外部施設として存在するチュートリアルダンジョンに僕たち特A科クラスは到着していた。


 ここにはチュートリアルダンジョンだけでなく、1年生から3年生までいろいろなレベルの生徒に合わせた訓練用ダンジョン、さらに学院に併設されている魔導研究機関の新開発魔法実験用ダンジョンまでが存在する巨大エリアである。


「ばっちりっす! 教官!」


「あたしも大丈夫です、セシル教官!」

「う~、腕がなるわね! 頑張ろうね、カイ君!」


 ここに来る道中で、クレアとカイもある程度打ち解けたようだ。


 3人目の合流はもう少し先だけど、特A科クラスは1つのパーティとして行動することが多くなるはず……まずはコンビネーションを深めていくことが重要だろう……。


 僕はそう考えながら、生徒たちを連れてチュートリアルダンジョンの第1層に足を踏み入れた。


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