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第7-1話 特A科クラス、代表になる

 

「「「帝国学生大演習?」」」


 生徒たちの声がハモる。


「ああ……秋に開かれる学院対抗の総合競技会……

 昨年まではウチともう一つの士官学院である帝国総合士官学院の対抗戦だったんだけど、今年から冒険者養成学院などにも参加範囲を増やして帝国中にある学院対抗の総合競技会に発展することになったんだ」


 長いようで短かった夏季休暇明け、通常なら9月に行われる帝国総合士官学院演習へ向けて準備を進めるところなんだけど、今年から新設される”帝国学生大演習”が9月末に開催されるため、僕は生徒たちに”帝国学生大演習”の説明を続けていた。



「なるほど……先日の実技試験の方式変更といい……帝国政府に”何かの意図”がある事は間違いなさそうですね……」


「政府は、”突出した才能”の発掘をもくろんでいる……?」


「はい、そこ! 深読みしない」


 保安局特殊要撃部隊を退官し、9月より帝国軍士官候補生の身分で引き続き特A科クラスに所属することになったルイが鋭い指摘をする。



「”突出した才能”……つまりあたしか!?」


「……たしかに、クレアさんの”魔法拳闘士”スタイルは唯一無二のものですが……完成されたプレーヤーとは、知力、体力、技術のバランスがとれている必要がありますからね」


「クレアさんは”知”がゴブリンなみ……どちらかと言うと、特A科クラスは”チームとして”それを目指すべきでしょう」


「……る、ルイたん……休み明けでも毒舌の切れが最高だね……」


「ふふふっ……ほかの所も……いろいろとパワーアップしましたよ?」


「ごくり……ほかの所……」


 さっそくルイがクレアを手玉に取っている。


 転属して吹っ切れたのか、ルイは前よりもっと感情を表に出すようになった。

 その小悪魔っぷりにクレアなどはすっかり魅了されているが。


 対するクレアも、実家でいい出会いがあったのか、特に魔法を格闘スタイルに織り込むという点について、大きく実力を伸ばしてきていた。


 これは、夏季休暇中冒険者として武者修行をしたというカイも同様だ。


「”帝国学生大演習”については、イレーネ教官もいろいろ動いているから、様々な思惑があるのだろうけど……

 まず僕たちがするべきは、”帝国学生大演習”に向けて鍛錬を積むことだね」


「”個人戦”は自由にエントリーできるけど、”団体戦”は、”勲章ポイント”上位のクラスのみがエントリーを許される。

 ウチの枠は3枠! 特A科クラスは学内でもトップクラスの実績を上げていると言っても、他のクラスも実力を伸ばしてきている……」


「油断せずに残り1か月、気合入れて行こう!!」


「「「はいっ!」」」


 元気よく揃った生徒たちの掛け声。

 特A科クラスは1か月後に迫った帝国学生大演習に向けて動き出した。


 ***  ***



「”個別スキル部門”に、”総合部門”ですか……」


「ああ。 ”個別スキル部門”は、さらに剣技、格闘、攻撃魔法、回復・補助魔法に分かれている」


「ウチのクラスは、団体戦の”総合部門”を目指すとして、”個別スキル部門”は生徒の希望を確認ですかね」


 ここは学院の教官室、僕はイレーネ教官より帝国学生大演習の詳細の説明を受けていた。


「そうだな……団体戦の総合部門は希望者も多いから学院ごとにエントリー可能枠を設けているが……個人戦の個別スキル部門は学生なら誰でもエントリー可能だからな」


「野に埋もれた思わぬ才能が出てくるかもしれんぞ……」


 イレーネ教官はそう言ってにやりと笑うと、”個人戦”の募集要項を人差し指でとんとん、と叩く。


「……やはりこれは、”魔獣世界ケイオス”の活性化への対策の一環ですか? ウチのルイも疑ってましたが」


「まあ、それもあるがね……例の”商社”の件もある……帝国としても軍や政府関係だけでなく、臨機応変に動ける人材を発掘しておきたいという意図もあるようだ」


「ウチとしては、学院の名を上げるチャンスでもある……そんな背景なぞ気にせず、精進してくれたまえ」


「はいっ! ありがとうございます!」


「ふふ……君のクラスがトップを取ったら……今度は帝都で飲み明かそう……心配するな、ホテルは取っておくよ」


 そう言うと悪戯っぽく微笑む教官。

 夏季休暇中の一件の後、こうやってからかわれることが増えた気がする……僕はすこしドキドキしながら教官室を出て、生徒たちのもとへ向かうのだった。



 ***  ***


「よし、なんとか”団体戦”、”総合部門”の代表枠を確保だ!」


「やたっ! さすがウチのクラス!」


「まあ、このメンツなら当然でしょう(ドヤぁ)」


「うっす!」


 帝国学生大演習を来週に控えた土曜日の放課後……学院内の”勲章ポイント”実績を魔導通信端末で確認しながら安堵の息をつく僕。


 僕たち特A科クラスは、他クラスの猛追をかわし、学院トップの成績で団体戦の代表枠を確保することが出来た。


 生徒たちのテンションも上々だ。


「でも、2位のクラスとの差は少しだったよね……”大食い大会への参加依頼”の結果が順位を分けたか!」


「……ウチの学院、たまに変なクエストを請けますが……今回はクレアさんの悪食節操無し胃袋さんのおかげですね……貴族令嬢として嫁の貰い手が無くなりそうな特徴ですが、今回は助かりました、ありがとうございます」


「ぐさぐさっ!」


 毒舌の刃でクレアを刺しているルイを横目で見つつ、個人戦のエントリーシートを確認する。


「クレアは当然の”格闘部門”に、ルイは”攻撃魔法部門”。 カイは”回復・補助魔法部門”で良かったのか?」


「うっす! クラスとしても、オレが固いだけじゃいけないと思うんで、夏季休暇中も修練を積んでたっす!」


 個人戦の意向について僕が確認すると。鼻息荒く答えるカイ。


 クラスを1つのパーティと考えたとき、カイが回復魔法と補助魔法を習得してくれると非常に助かる……チームとしての実力向上を考えてくれるカイに、確かな成長を感じていた。


「よし、これでエントリーしておく!」


「月曜日は早朝から帝都に移動だから、明日は十分休養しておくように!」


「「「はいっ!」」」


 生徒たちの元気な返事が教室に響く。

 様々な思惑が交差する”帝国学生大演習”がいよいよ始まろうとしていた。


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