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第5-3話 実技試験と貴族クラス(中編)

 

「”予選”に向けて必要なスキルと、作戦はこんなものだろう」

「付与可能な魔法のリストはここにあるから、各自確認しておくように」


「は~い、セシル教官!」


「了解です、セシルさん」


「教官、了解っす!」


 生徒たちから元気な返事が返される。


 ここは特A科クラスの教室。

 僕たちは明日から始まる実技試験に向けて、最後のミーティングをしていた。



「”予選”は生徒だけで戦うんですよね?」


 実技試験のレギュレーションが書かれたプリントを確認しながら、クレアが発言する。


「ああ。 学院の中級ダンジョンを使い、第5階層への到達速度と魔獣撃破数がスコアとして評価される」


「教官間でも実力差が大きいので、教官の予選参加は禁止されているが、僕の”魔法付与”は禁止されていない」


「範囲攻撃系の魔獣魔法や、竜魔法も準備しているからそれは好みで使ってね」



「ふむふむ……その評価基準だと、クラスの人数が少ない特A科(ウチ)は不利になるのでは?」


 僕の説明に、もっともな疑問を呈するルイ。


「それは心配なく。 スコアの算定基準に、”行動ターン数”があるんだ」


「一度行動するごとに1ターン加算されるから、より少ないターン数で多く魔獣を撃破し、第5階層へ到達した方が評価が高くなる」


「少数精鋭なウチの方が向いているルールだと思う」


「なるほど……それを聞いて安心しました」


「ほかに質問はないかな? それじゃ、付与する魔法は明日の直前ブリーフィングで」

「解散!」


「「「ありがとうございました!」」」


 みんなの挨拶にも気合が入っている。


 特A科クラス初めての実技試験が、いよいよ始まる。



 ***  ***


「おお、Hクラスの連中、凄いな……」


 中級ダンジョンの前に貼られているスコアボードの数字を見て、他のクラス連中のどよめきが起こる。


「ふん、アイツらなら当然だ」


 教官であるオズワルドも、言葉とは裏腹に得意満面だ。



 現在、20クラスを終えて、Hクラスがダントツの一位。


 さて、次は僕たち特A科クラスの番だ。

 必要な魔法も”付与”し終え、メンバーの準備も万端だ。


「よし、緊張するなとは言わないけど、いつも通り行こう」


「新人教官のはみ出し者クラス、特A科は最初そう言われていたけど……もはや僕たちの実力を疑う連中はいないと思う」


「この数か月積み上げてきた実績を、他のクラスに見せてやろう!!」


「「「はいっ!」」」


 みんなの返事が気持ちよく重なる。


 クレア、ルイ、カイのパーティは、気合十分、試験ダンジョンに飛び込んでいった。



 ***  ***


「な、なんだこのスピードは……」


「あの魔法……魔獣の技か? このクラス、一体どうなっている??」


 ダンジョン入り口の魔導スクリーンには、ダンジョン各所に設置されているカメラで撮影された映像が映っている。


 ふふふ……我らが特A科クラスの一挙手一投足にどよめく観衆が誇らしい。



 シュパパパパッ……!


「”デバフ・ブレス”」


 パシュゥウウウウ……


 まず、ルイがオプションビットを飛ばし、魔獣の群れを魔導フィールドで囲む。


 間髪入れず、付与した魔獣魔法”デバフ・ブレス”を使用する。


 これは、妖魔系の魔獣が使ってくる技で、範囲内の敵の能力を下げ、バッドステータスを与える。


 他クラスの生徒たちが練習ダンジョンで悩まされているおなじみの技である。


「ナイスだよ、ルイっ!」

「つぎは、あたしっ!」


「うおおおおっ、”ファイア・シュート”!」


 クレアが使ったのは、爆炎系の初歩魔法だが、絶大な魔力を持つ彼女は、現れた爆炎をしなやかな足先にまとわせる。


 ……いいね、術式のアレンジも魔力のコントロールも完璧だ。


 学術試験の勉強を通じて、魔導に対する理解を深めてくれた彼女に僕がプレゼントした、彼女用にチューニングされた新作魔法……。


 ブオオオッッ!


 魔獣の群れの真ん中に降り立ち、蹴りを一閃!


 舞うような動きに沿って広がった爆炎は、一気に魔獣の群れを焼き尽くした。


「ダンジョン最奥まで……後はトラップだけ! カイ君!」


「うおお、行くっす! ”ダイヤモンド・ガード”!」


 最後に強化された防御魔法でカチカチになったカイが最奥に続く通路に突撃し……発動したトラップを踏みつぶしたのだった。



 ***  ***


「うおおおっ、すげぇ! Hクラスのスコアを100ポイント上回って……ダントツトップだ!」


「やだ、あのルイって子、すごくかわいくない……? あとでサイン貰いに行こっ」



 次々に驚きを口にするほかのクラスの生徒。


 ふぅ、努力した彼女たちと、僕の付与魔術が組み合わせれば、これくらいできることは分かっていたけど、結果が出るとやっぱりうれしい。


 僕はがんばった生徒たちを迎えるため、ダンジョンの入り口へ駆け出すのだった。


 それを口惜しげに見つめる男が一人。

 あっさりと記録を塗り替えられたHクラスの教官、オズワルドである。


「おのれ……外国人教官の平民クラスめ……私の輝かしい実績に泥を塗りおって……」


 Hクラスの連中を明日に備えて鍛えなおすのはもちろんだが……やはりこの”マジックアイテム”を使う必要があるか……。


 裏社会のつてを使って”とある商社”から入手したこの腕輪……私のクラスは常にトップにいる必要があるのだ……。


 血の色をした宝玉が妖しく光る”腕輪”……それを装備したオズワルドの目が、わずかに金色に輝いた……。


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