第1-2話 翻訳付与士、面接を受ける
「う~ん、どれにしよう……よりどりみどりで逆に迷うなぁ」
ギルドを辞めて自宅に戻ってきた僕は、改めて自分に届いたスカウトメッセージを確認していた。
何しろ1000件以上もあるので、見るだけでも大変だ。
忙しい所はイヤだな……宮廷魔術師とか、一見華やかに見えるが、場合によっては宮廷魔術師 (ワンオペ)の国とかあるはずである。
責任は重く、仕事は忙しい……そんなのは給料がいいだけでここのギルドと変わらないので、お断りである。
勇者パーティへの加入は栄誉だが、体力は人並みの僕……いきなり超絶SSランクダンジョンなんかに連れて行かれた日には速攻あの世行きである……これもボツ。
「……ん? ”コーウェン魔法士官学院 魔導教官 月給1万センドから”……」
あるスカウトに目を留める僕……給料は他に比べて安いが(それでも今の5倍)、魔法学院の教官職……。
確かこの学院は世界最高峰の魔導研究機関でもあったはずだ。
僕はさっそく端末でコーウェン魔法士官学院の情報を集める。
……おお! 帝国貴族の子女や、各地から優秀な魔法使いの素養を持った少年少女たちが集まるのか……。
って、女子の制服、めっちゃ可愛くね!?
清楚な制服に身を包んだ奥ゆかしい深窓の令嬢が、「せんせい……」と僕を呼ぶ。
教官と生徒……紡いだ信頼関係はいつしか愛情に変わり……!
良い! かわいい女子生徒にちやほやされ、先生と呼ばれる生活……も、もしかして貴族令嬢と玉の輿も……!
一瞬で妄想に沈む24歳健康男子……気が付いたら僕は採用面接の申し込みを送っていたのだった。
*** ***
「面接の日取りは7日後……速攻決まったな」
僕が申し込みを送ってくすぐ、食い気味の返信が即座に返され、あっという間に面接の日程が決まってしまった。
僕は面接に備え大人っぽい正装を買いそろえ、帝国本土への船便を予約すると旅立ちの準備を整えていた。
ん? 郵便受けに一通の書状が入っているのに気づく。
送り元を見ると……僕が所属していたギルドからだ。
破って捨てようと思ったが、一応僕も大人である……退職金をくれるかもしれないし。
淡い期待で封筒を開いた僕が見たのは……。
”栄転する(笑)セシル君送別会のお知らせ……会費70センドにまけてやる ギルド長アキム”
嫌味たっぷりの送別会へのお誘いだった。
どこの世界に、煽られながら招待された自分の送別会に金を払って行く奴がいるんだ……。
一瞬で冷めた僕は、招待状を紙飛行機の形に折ると、ギルドの入り口から中に飛ばし、意気揚々と帝国行きの船に乗り込むのだった。
さあ新天地! 楽しみだなぁ!!
*** ***
「それでは、面接官が来ますのでこちらの部屋でお待ちください」
帝国に着いた僕は、コーウェン魔法士官学院まで移動すると早速面接に臨んでいた。
学院は帝都郊外の小さな街にある。
豊かな緑と美しい小川に囲まれた暮らしやすそうな街……季節は桜の咲き誇る春。
どこかホッとする空気が漂う街を、僕は一瞬で気に入っていた。
街の広場から上り坂を上った先にコーウェン魔法士官学院の建物がある。
歴史ある学院らしく、よく使いこまれた白亜の校舎。
対魔法コーティングが施された、演習場を兼ねる広いグラウンド。
敷地内には生徒たちの寮と思わしき建物と、真新しい研究棟もある。
なにより、制服姿で歩く女子生徒たちの姿がかわいいのである。
純白のセーラー服、科によって違う色の襟をつけるらしいそれを着た女子生徒は、天使のようだ。
絶対合格してここで働きたい……!
僕は改めて気合を入れなおしていた。
*** ***
「待たせてすまんね、君がセシル・オルコットか」
「ウチに応募してくれてありがとう。 期待してるよ」
軽いノックの後入室してきた面接官。
立ち上がって迎えた僕が見たのは……。
えっ……子供っ!?
あげかけた驚きの声をかろうじて抑え込む。
現れた”面接官”は、くるくるとくせ毛気味にカールした桃色の髪、ぷにぷにほっぺ、スレンダーな体躯と、どこからどう見ても幼女な女の子だった。
「?? ……ああ、私はイレーネ。 ここの主任教官だ」
「こう見えてハイエルフとのハーフでね。 これでも39歳だ」
「しかし、私を見て驚きの声をあげないとは……ふふふ、加点1だ」
イレーネと名乗った面接官の少女……もとい女性はいたずらっぽく微笑む。
ハイエルフとのハーフさんか……相当珍しい……というか、かわいい……。
緊張していた僕は、思わぬ面接官の登場に、すっかり力が抜けていた。
「私はまどろっこしいのが苦手だし、ウチは実力主義でね……さっそく君のスキルを確認させてもらおう」
「”能力探査”(スキャン)」
ポワァ……
志望動機は? アナタのアピールポイントは?
面接で聞かれるであろう質問を色々考えていたが……イレーネ教官は形式にはこだわらない人のようだ。
そのぷにぷにの手を僕にかざすと、能力探査魔法を発動させる。
「……まずはスキル診断アプリの通りか……ん? これは……なにっ!!」
探査が終わったのだろう……なにを見たのか、急に眼を見開くイレーネ教官。
「”魔導翻訳適正SSS”だとっ!? た、確かにこのスキルセットならありうるが……しかしこれは断トツ世界最高値……!」
”魔導翻訳適正”とは何のことだろうか?
確かに僕は、難しい魔法を低レベルの術師でも使えるように術式を簡略化するスキル……”魔法翻訳”が得意だけど、彼女が言ったスキルは聞いたことがない……。
思わず僕が頭の上にハテナを浮かべていると、がしいっ! と僕の肩を掴むイレーネ教官。
「……採用だ」
「はいっ!?」
「採用だと言っている。 むしろ、逃がさんぞ……」
「キミには特A科クラスを受け持ってもらう」
「えええええええっ!?」
細かい点を確認する間もなく採用が決まり、こうして僕の学院生活が始まったのだった。
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