第5-2話 実技試験と貴族クラス(前編)
「トーナメント方式の実技試験ですか……」
「ああ、より実戦的に特化した人材を育成しようという事でね」
「今年度から2日間にわたって行われることになった」
ここは学院の教官室……大事な通達があるという事でいつもより早く出勤した教官陣は、主任教官であるイレーネから、来週から始まる実技試験についての説明を受けていた。
期末試験の一環として、学術試験に続き行われる実技試験……昨年までは学院のダンジョンで与えられるミッションをクリアする地味な試験だったのだが、今年はそれに変更が加えられるようだ。
「学院ダンジョンを使用したミッションは例年通り行うが……コイツのクリアスコアを予選として上位8クラスを選抜、トーナメントにより士官学院の最強クラスを決めることになった」
「生徒それぞれの成績評価は別途行うが……優勝クラスには皇帝陛下から勲章と金一封が頂ける……各クラスは奮励努力するように!」
「……優勝クラスは私に酒をおごってくれ」
主任教官のため、特定の担任クラスを持っていないイレーネ教官がにやりと微笑む。
なるほど……確かにこの方式なら、突出した才能を持つ人材が出てくるかもしれない……しかも面白そうだ。
僕がひそかに意欲を燃やしていると……。
「よき趣向ですが……このルールですと我がHクラスが簡単に優勝してしまいますな、出来レースだ」
そう自信たっぷりに言い放ったのはHクラスの担任、オズワルド教官だ。
確か、Hクラスは上流貴族のみを集めた特別クラス……オズワルド教官本人も大貴族で、魔導関連企業のオーナーを務めていたはずだ。
もともと、教官職の一部は貴族の名誉職として枠が確保されており、形だけ教官職に就く貴族は多いが、彼は今までと異なり結果を出しているので内外から注目されていた。
「いやぁ、最近、軍の特別クエストの解決などで目覚ましい結果を出しておられる”特A科クラス”……セシル教官殿のクラスと戦うのが楽しみですなぁ!」
「”魔導翻訳適正SSS”なる、怪しげなスキルで我が伝統あるコーウェン魔法士官学院に潜り込んだ若輩の外国人講師……」
「どのような手品を使っておられるか、大変気になるところではありますが……おっと失敬、口が過ぎましたな」
ねっとりとした口調で嫌味たっぷりに喋るオズワルド教官。
やれやれ……特A科クラスが結果を出し始めてからやけに彼に絡まれるよなぁ……田舎の外国出身なのも、僕が若輩なのも事実だけど。
「いえ、僕などまだまだなので……運よく予選を通過し、オズワルド教官のクラスと当たった際は、胸を借りさせていただきます」
カント共和国ギルドの連中に比べると全然マシとはいえ、どこの組織にもこういう輩はいるのもだなぁ……。
僕は懐かしさすら覚えていた。
「はっはっはっ! さすがはセシル教官、わきまえておられますな! それではせいぜい頑張ると致しましょうか」
僕のお世辞に大笑いすると、オズワルド教官は教官室を出て行ってしまった。
よし、特A科クラスの生徒たちにも実技試験の事を説明するか。
僕は教官室を出て、特A科のクラスへ向かった。
*** ***
「あ~~~っ!! Hクラスの連中ですねっ! あいつらムカつきます!」
クレアたちに”実技試験”の詳細を説明し、念のためHクラスの事に触れた瞬間、クレアが爆発した。
「お、おう……なんかあったの?」
彼女の剣幕に、思わず困惑する僕。
「Hクラスって貴族クラスじゃないですか、一応あたしの実家も貴族なんで……こないだクラスリーダーのジョンスとかいうキザな奴が、あたしをナンパしてきたんですよ!」
「”オレのクラスに来ないかい? キミの家のためにもいいと思うんだ”だって! あたし、ウチが大好きだから行くわけないって~の!」
「ああいう身分をカサに着るキザな奴、大っ嫌いなんで足を思いっきり踏んでやりましたよ!」
よほど腹が立ったのか、バンバンと机をたたきながら憤慨するクレア。
……つ、机が壊れるからそのくらいで。
「ああ……あの身分だけあって頭にプリンが詰まってそうな、のーたりん金髪連中ですか」
「こないだわたしを見て……”なんでここに初級学校のガキが?”……などど言いやがりました」
吐き出されるルイの毒舌が隣に座る金髪貴族令嬢に被弾しているが大丈夫だろうか? 「あ、あたしの頭はプリンじゃないよね?」と震えているけど。
「初級学校……いくらわたしの背丈が標準よりすこ~し小さいとはいえ初級学校……もうすぐ14になりバインバインになる予定のルイちゃんを捕まえてその言い草……」
「クレアさん、八つ裂きにしましょう……!」
「そっ、そうだよねルイ、やっつけよう!」
バインバインになるかどうかと言われると望み薄だと思うが、ルイは子供扱いされたことにたいそうお怒りのようだ。
「よ、よしっ! 他のクラスは人数も多く、上級生もいるから不利なところはあるけど……」
「この数か月、君たちは誰よりも成長したと僕は思うよ!」
「特Aクラス、絶対に優勝するぞ!」
「「「おおっ!!」」」
元気のいい掛け声が、僕たちの教室に響いた。
「……ときにカイ、彼女たちが事件になりそうなくらいブチ切れたら、フォロー頼むね」
「う、うっす!」
男性陣の心労は減りそうになかった……。
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