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第4-3話 特A科クラスと領主の陰謀(前編)

 

「ふぅ……この湯加減……最高ね!」

「景色もいいし……クエストであることを忘れそう」


「確かに、宿のお料理も美味しかったですし、おんせん……初めて入りますが、気持ちいいです」


 湖畔の温泉宿……女湯の露天風呂からは、満天の星空と、月の光が煌めく湖面が見える。


 広々とした湯船に長い手足を思い切り伸ばしながらくつろぐクレアとルイ。

 少女たちは至高のひと時を味わっていた。


「あれ? ルイったら温泉入ったことないの?」

「どこ出身だったっけ?」


「詳細な情報は機密情報なのでまだ明かせませんが……わたしは孤児院の出身なので、このように観光旅行すること自体がほとんどありませんでした」


「機密情報ってまたミステリアスな事を……って、ごめん、嫌なこと聞いた?」


「?? いえ、もう過ぎた事ですし、わたしは本当の両親の顔も覚えてませんので」


 あちゃー、またあたし無神経なこと聞いちゃった……と後悔するクレアに対し、何か問題が? とケロリとしているルイ。


「も~、またこの子はドライなんだから…………そうだ! あたしがお姉ちゃんになってあげよう!」

「さっそく今夜は一緒のおふとんで……うへへ」


「……間に合っています」


「それに、わたしの姉を名乗るにしてはクレアさんは頭の中身と成績が足らないのでは?」


 ルイたんのすべすべほっぺを堪能……と煩悩全開で迫るクレアを毒舌で一刀両断するルイ。


「ぐはっ……ごもっともで」


 ぶくぶくと撃沈されるクレア。


「それより、わたしが気になるのはその胸の脂肪です!」


「わたしと3歳しか違わないはずなのに……この質量の違いは何ですか? 何かのチートですか?」

「理不尽です!!」


「魔導的に解析させてください……というかやはり頭の中身と反比例するのでしょうか?」


 湯船に沈むクレアにあらがうように浮かぶ2つの大きな胸。


 ブラジャーが引っ掛かりようもない絶壁の自分と見比べ、半べそをかきながらクレアに指を突き付けるルイ。


 そっと毒舌を添えることも忘れない。


「る、ルイたん……その脳天に突き刺さるような毒舌はやめて……」


 次々に繰り出される毒舌の刃に翻弄されていたクレアだが、体勢を整えるとにやりといやらしい笑みを浮かべる。


「むふふ……胸を大きくしたいならぁ!」

「よく食べて、よく揉むのじゃぁ!!」


「きゃっ、クレアさん、やめてくださいっ!」


「ふふふ、減るもんではなし、よいではないか~」


「なんかクレアさんに触られると減りそうです!」


 湯船の中でジャバジャバとじゃれ合う美少女ふたり。

 その声と水音は隣の男湯にも聞こえていたのだが……。



 ***  ***


「ふぅ……カイよ」


「……うっす!!」


「水音と共に戯れる美少女……いいものだな」


「……うっす!!!!」


 男湯に入っている僕たちは、その声と水音を十分に堪能していた。



 さて、女性陣のお風呂は長いだろう……僕たちはそろそろ上がるか。

 そうカイに声を掛けようとしたのだが……。


 ふと、湖の方から魔()()()()()()()()()


 さすがに一流の温泉宿……魔獣除けの対策は完ぺきで、魔獣が紛れ込むことは考えづらいのだが。


「”サーチ・アイ”……」


 僕は即座に探査用の暗視魔法を発動させる。


 ちなみに、女湯には魔法的なガードが掛かっており、これらの暗視魔法で覗くことは出来ないのであしからず。



 視界が一瞬でクリアになり、夜のとばりが下りていた湖面を、まるで真昼のように見通せる。


「アレはカエル型の魔獣か……?」


 視界をズームさせると、大きな目を持ったカエルのような姿をした魔獣が、鏡のように穏やかな湖面から両目のみを突き出しているのが見える。


 その視線の先は女湯を向いているようだが……。


 それにこの微弱な魔導通信波は……まさか、視覚データをどこかへ送っているのか?

 おいおい、盗撮犯かよ……あまりに下劣な犯行にあきれた瞬間……!



「あっ……待ってクレアさん!」


「くぉら! 乙女の柔肌を盗撮するとか、恥を知りなさい! こらっ、出てこ~い!」


 同じように暗視魔法で盗撮犯?の正体を確認したのか、少し慌てたようなルイの声に続き、貴族令嬢とは思えない大きなクレアの声が響く。


「ルイ、”水上歩行”を使うよ! あたしがアイツをとっ捕まえてやるっ!」


「ダメダメ、クレアさん、せめて前は隠して……」


 ばじゃ、ばしゃんと水音がし、止めるルイの声も空しく、目の前の湖面に飛び出すクレア。


「あっ……」


 いまだ暗視魔法をかけていた僕の視界に入ったのは……。

 最高の桃源郷でした(ふぅ)



 ***  ***


「あ、あう……あたし、怒りに我を忘れちゃって……」

「セシル教官、見ました?」


「いや、真っ暗だったからよく見えなかったよ(棒)」


「…………(じ~っ)」


 我に返って硬直するクレアをルイが回収し、お風呂から上がって冒険着に着替えた僕たちは温泉宿の正面に集合する。


 先ほどから顔を真っ赤にしているクレアの質問をはぐらかす僕。


 ……ルイにはバレていそうなので、あとで賄賂スイーツを贈っておかねば……。


「とにかく、魔導通信波のパターンから、おそらくあの魔獣は人為的に改造され、視覚情報をどこかに送っていたと思われる」

「僕の方である程度送信先はトレースしたから、いまから追いかけよう」


「さすがに、ただの盗撮犯があそこまで大がかりな仕掛けをするとも考えにくい……”敵”の可能性もある」


「慎重に行くぞ!」


 真剣な顔になり、頷く3人。


 夜の追跡劇が始まるのだった。


読んで頂きありがとうございます!

3話構成で特A科クラスの冒険を描きます。


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