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第4-2話 出発、湖水地方へ

 

「よし、みんな集まったね」

「今回のクエストの内容を説明するよ」


 ここは特A科クラスの教室。


 僕はクラスの生徒たちにクエストの依頼書のコピーを配る。


「ここ最近、何体も上位魔獣を退治している僕たちの実績が注目されているらしくてね」

「帝国政府から直々のオーダーが来たというわけだ」


「セシルさん、ざっと依頼書を読みましたが、たぶんに政治的な意図も感じます……実績をあげているクラスは他にもあるでしょうに、なぜわたしたちのクラスを名指しで?」


 ひと通り内容を把握したのだろう、実績をあげているとはいえまだ入学してから数か月、しかも1年生のみのクラスに、政府から重要な依頼が来ることに疑問を呈するルイ。


「うん、ルイの言う事も、もっともなんだけど……イレーネ教官、あの人に僕らのクラスが大変期待されているらしくてね……どうやら彼女の差し金みたいなんだ」


「士官学院の主任教官が帝国政府からの依頼を? ずっと思っていたんですが、何者なんですかイレーネ教官? 見た目はあんなにカワイイのに……」


「確かに地方領主はこういう事件を起こしがちですけど……これ、本来は正規軍の仕事じゃ?」


 座学の成績は悪くても、さすがに地方領主の娘である。

 クレアもこの依頼の特異性に気づいたようだ。


「まあ、イレーネ教官の経歴は複雑で、いろんなところにコネがあるらしいけど……それはともかく」


()()()()()()()()の動きが活発になっている今、本格的に正規軍を動かす前に、できるだけ内偵をしておきたいという意図があるようだね」


「(わたしたちのクラスというよりも、セシルさんを鍛えたいという事でしょうね……)……まあ、帝国の治安を守る()()()()()出身のわたしもいますから、適任かと」


「ルイ、”とある部署”って?」


「禁則事項です」


「む~っ!」


 いつも通りの生徒たちに少し安心する。


 今回僕たちに依頼されたのは帝国の南東部、湖水地方にある自治領の内偵……。


 自治領主が不正なビジネスをを行っており、帝国中央へ反乱を企てているとの疑惑がある地方の調査だった。



 ***  ***


「さすが政府の依頼っすね、支援も豪華っす!」


 帝国政府から支給された支度金とマジックアイテム……わずかに魔力を込めるだけで強力な防御陣を展開する新型防具を装備してゴキゲンのカイ。


「それだけ任務が困難ということなので、正直めんどくさいですが……セシルさん、わたしたちは私服で来いとか……こんなに軽装でいいんですか?」


「ああ。 あくまで観光客を装って潜入することになっている」


「湖水地方は美しい森と湖が広がる一大観光地だからな……任務の合間を縫って遊びに行くのもアリだ! 温泉もあるぞ!」


「それですっ! 湖水地方名物の湖畔の露天風呂! あたしずっと行ってみたかったんです!」


「……政府からの任務なのに、いいんですか?」


「ふふふ……敵に潜入捜査を悟られないことも重要だろう?」


 そう、ぱっと見、学生サークルの旅行に見える若い4人組……ある意味観光地に溶け込むには最高の組み合わせかもしれない。


「ということで、せっかくなんで女子は特におしゃれしていけよ?」

「それでは、本日1600 (ヒトロクマルマル)、転移ポートの前に集合だ。 今日はそのまま湖水地方の温泉宿に一泊する!」


「「「は~い!」」」


 生徒たちの返事を聞きながら、僕は魔導通信端末で今夜のお宿を物色するのだった。

 露天風呂は必須だな……!



 ***  ***


「はぁ~っ、ほんとに転移ポートって便利だよね、湖水地方まで一瞬だもん」


「噂では、今年中に諸外国との間でも整備されるらしいですよ」


「うおお、魔導技術ってすっごい!」


 時刻は16時半、転移ポートを使った僕たちは、一瞬で湖水地方の温泉街まで移動していた。


 この転移ポートも魔導革命の一環であり、転移魔法を封じた祭壇のようなモノが帝国各地に設置されている。


 その前に立ち、操作メニューから行き先を選択するだけでその場所に移動できるという、帝国の移動手段、物流、観光に革命を起こした超絶魔導技術である。


 これまた魔導革命の産物である魔導通信端末で湖畔の温泉宿を予約した僕は、生徒たちとその宿へ向かっていた。


「それにしても、ルイの私服カワイイじゃん! どこで買ったの?」


「カインマクビーの通販サイトで……」


 にしし、といたずらっぽい笑みで褒めるクレアに、恥ずかしそうにするルイ。


 彼女は黒を基調にしたゴスロリ調の上着に、黒のニーソにブーツという格好だ。

 うむ、ちょうかわいい。


「そういうクレアさんはその恰好で寒くないんですか?」


 だいぶ暖かくなったとはいえ、夏にはまだ遠い今の季節、丈の短い薄緑のノースリーブのワンピースという格好は、いかにも寒そうに見える。


「なに言ってるのルイ、この季節……みずみずしい10代女子はお肌を晒してなんぼだよ! おしゃれも楽しまなきゃね!」


 そういうクレアは確かに弾むような活力に満ちており、たいへん魅力的だ。

 その迫力のある胸部装甲と相まって最強に見える。


「ふむ……眼福だな、カイ」

「うっす!」


 お金をもらいながらこんな素敵な光景を楽しめるなんて……。

 彼女たちの後姿を眺めながら僕は、あらためて教官職のありがたさを痛感していた。


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