表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/36

第1-1話 主任魔法使い、ブラックギルドを見限る

 

「攻撃魔法? そんなものウチのギルドでは必要ねえんだよ!」


「俺の体力5000を削るのに、お前のちんけな花火を何回当てる必要がある? その前にお前は魔力が尽きるか、間合いを詰めた俺の一撃であの世行きさ!」


「がははは、ちげぇねぇぜボス!」「お前ら魔法使いは、おとなしく補助魔法で俺たちをサポートしとけばいいんだよ」


 多様化する魔獣に対抗する為に、ウチのギルドでも”攻撃魔法”の導入を……僕のまっとうな提案に対し、ギルド長のアキムをはじめ、取り巻きの連中から罵声が浴びせられる。


 ここ辺境の島国カント共和国では、物理攻撃至上主義が幅を利かせ、僕のような魔法使いは日陰者扱いだった。



 あっさりと提案を却下された僕は、とぼとぼと自宅に向かって歩く。


 僕の名前はセシル。


 一応、冒険者ギルドの主任魔法使いであり、ギルド内の魔法使いを束ねる立場だが……今所属しているギルドではハズレポジションというしかない。


「まったく……上から下まで脳筋ぞろいと来た……やってらんないよ!」


 思わず道端の小石を蹴る僕。


 カント共和国の冒険者ギルド長のアキムは魔法嫌いで有名であり、彼の治めるギルドでは、魔法の使用は回復魔法と能力向上系の補助魔法に限定されていた。


 彼曰く、攻撃魔法の術式を唱えるより、殴った方が早い……ヒドイ言い草だが、彼がトップなのだからどうしようもない。


 転職したい……そう思うが、アキムは共和国の()()()()()()()()、タッグを組んで僕たち魔法使いを迫害している。


 共和国内での転職は厳しそうだった。


 僕はため息をつくと、冒険着の内ポケットから一枚の板を取り出す。


 縦15センチ、横8センチくらいの透明な板で、板の表面にタッチすると一瞬複雑な術式が表示され、板の中に鮮やかな映像が浮かび上がる。


 海を挟んだ北にあるファレル帝国……そこの大企業が開発した()()()()()()である。


 ”魔導技術”の粋を集めた芸術作品……先日、ようやく共和国でもサービスが始まったので早速購入したのだ。


 離れた端末間でメッセージや映像をリアルタイムで交換したり、ダンジョンの自動マッピングなどの画期的な機能を持つのだが、アキムに言わせると”ただのおもちゃに高い金を払えるか!”である。


 この凄さがわからないとは……思わずため息をつく僕。


 いるんだよなぁ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が……それが自分の上司と言うのが救いようがないが。



 ん? 僕は魔導通信端末の画面に確認メッセージが出ているのに気づく。


「”あなたへのオススメ! 上司に評価されていないと感じたら、スキル診断してみませんか?”」

「なんだこりゃ? 広告か?」


 普段なら無視して閉じるその広告も、やけに自分の現状とマッチしている気がして……僕は思わずそのメッセージをタップしていた。


 その途端、画面に表示される”スキル診断アプリ”の文字。


 ”魔導センサーに親指を置いて……魔力を込めながらいくつかの質問に答えてください”


 微妙にあやしいメッセージに、引き込まれるようにして操作を続ける僕。

 1分ほどの時間が経過した後、画面に表示されたスキル診断結果は……。



 ……

 ……絶対魔法感覚マジックセンス

 ……魔法翻訳トランスレイト

 ……魔法付与マジックギブ

 ……


 スキル組み合わせの出現率……1億分の1!?


 はぁ??

 思わず間抜けな声を上げる僕……確かに僕は表示されているスキルを持っていると思うけど……1億分の1の出現率だって?


 この数字が確かなら、僕のスキルは世界に5人もいない超絶スキルという事になる……ギルドで役立たずと言われてる僕が??


 ……はあ、広告にありがちな誇大表現か。

 即座に冷めた僕は、”転職スカウトサイトにこのスキルを登録しませんか!”とのメッセージに適当に「はい」を選ぶと、魔導通信端末をカバンに放り込み、夕食を食べる為に食堂へ向かった。


 食堂でやけ酒した僕は、転職サイトに登録したことなど、すっかり忘れていたのだった。



 ***  ***


「……うう、頭が痛い……仕事行きたくない」


 翌日、二日酔いの頭痛で目覚めた僕は、ベッドから体を起こすと、なんとなく自分の魔導通信端末を開く。


 そこには……。


「……はぁ!? ()()()()()()()が……1000件以上!?」


 一瞬で目の覚めた僕はベッドから飛び起きる。


 端末の画面は”あなたにスカウトが届きました”の通知で埋め尽くされている。


 そういえば昨日”転職スカウトサイト”に適当に登録したんだった……帝国で流行っていると噂の、架空請求だったらどうしよう……そう思いつつ、もしかして……どこかで期待する僕は震える指で通知を開く。


「な……これって!?」



 ……

 ……XXXXテクノロジ主任研究員 月給10万センドより

 ……ファレル帝国冒険者ギルド所属勇者パーティ 報酬は交渉に応じます

 ……アスレイド王国宮廷魔術師 年俸200万センド保証

 ……



「えええええええええっ!?」


 表示されたのは、僕に対する好条件スカウトの嵐だった。


 こ、これ本物なんだろうか……でもすべてのスカウトメッセージに署名が入っているし……。


 僕でも知ってる大企業に、高名な勇者パーティ、小国だが宮廷魔術師のお誘いまであるぞ……ちなみに、現在の僕の月給は2000センドである。


 スカウトメッセージを一つ一つ開くうち、僕の疑問は確信に変わっていった。


 やっぱり、僕のスキルは超絶レアスキルだったんだ……!


 アレ?

 こんなド田舎の()()()()()()()()()()()()()()()()()



 その可能性に思い当った僕は、いつも机の中に準備していたものの、勇気が無くて渡せなかった”ギルド脱退届”を取り出すと、大急ぎでギルドに走り……受付の野郎に叩きつけるのだった。



 こんなブラックギルド、逆追放だ!!



「ちょ、まてよっ……!」


 ぽかんとした後、慌てて話しかけてくる受付を無視し、僕は外へ駆け出す。



 やばい、これ……()()()()()()!!



 目の前に広がる青い空……僕は自分の人生が大きく動き出したのを感じていた……!



 ***  ***


「アキムさん、いきなりセシルの奴が辞めやがりましたが……大丈夫ですかね?」


 セシルから叩きつけられた脱退届を持ち、微妙に不安そうな表情でギルド長であるアキムに相談する受付。


「ふん……もともとアイツは反抗的で気に入らなかったんだ」


「補助魔法と回復魔法の使い手は十分いるし、全く問題ねぇよ」


 雑魚犬が最後に手を噛んできやがった……全く意に介さないアキム。


 ()()()()使()()であるセシルの脱退……この意味を彼らは全く理解していなかった。


新連載です!

転職から始まる学園ものになります。


気になった方は「ブックマークに追加」して、更新を追いかけて頂ければ嬉しいです。

皆様の応援が、作品の力になります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もし続きが気になる! と思われましたら、「ブックマークに追加」して更新情報をフォローして頂けると嬉しいです!! script?guid=on


小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] 養護するわけじゃないけど魔法放つ際にスキができるからその間に凄まじいスピードで攻撃すれば倒せるから補助魔法と回復魔法いらない気がするなもちろん速くて威力のある魔法だったら良いけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ