中学時代のぼく 壱
小学校のころ、ぼくは感情的になるとすぐに泣いてしまう癖があった。
馬鹿にされたり、なにか気に入らないことがあるとすぐにカラダの真ん中あたりが熱くなって、ボンと爆発して、目から大量の水分があふれ出してくるのだ。
どんなに我慢しても吃逆が止まらないみたいに全身がひきつって、次から次へと涙があふれてきてしまう。
それを自分の意志で引っ込めることはできない。
そのことにぼくはものすごい劣等感を抱いていた。男のくせに涙をボロボロ流して、自分のことをとても恥ずかしい人間だと思っていた。
まわりのみんなはよくそんなぼくを馬鹿にしていた。
そうやって馬鹿にされるだけでも涙があふれてしまうものだから、まわりもいっそう面白がって、ぼくを泣かせた。一種のゲームのようになった。
ぼくを泣かせる方法は、どんどんエスカレートしていった。
筆箱の中に虫を入れたり、水をぶっかけたり、服の下に雪を突っ込んだり……。
そんな環境から逃げるように、みんなとはちがう遠くの中学校に進学した。
中学一年、春。ぼくは相変わらず泣き虫なままだった。
クラスで最初に後ろ隣りになった男子がとてもいい人で、すぐに友達になった。
そのときは話し相手がいなくて不安だったので、彼が自分に声をかけてくれたことは本当にうれしかった。彼はいかにも好青年という風貌で、たれ目の瞳に、さらさらの黒髪をしていた。
担任はとても頼りになる人で、困っている生徒がいたら率先して話を聞いてくれるような面倒見のいい先生だった。
二年――その最初に友達になった生徒は、自分とすれ違うと因縁をつけてぼくの体を殴りつけるようになった。
「なよなよしててむかつく」からだそうだ。
彼はいつの間にか髪も金色に染めて、耳にピアスまでしていた。彼とつるむ人間も怖い人ばかりになっていた。
暴力沙汰を先生に告げ口するたび、先生はとてもめんどくさそうな顔をしてた。
頻繁に問題を起こす厄介な生徒として見ていたみたいだ。
きっとぼくのことが嫌いだったんだろう。
クラスでもよくぼくをネタにしてみんなを笑わせていた。
ぼくは泣きそうになるのを必死にこらえた。
先生に嫌われてしまったぼくの成績は、いくら点数をとってもずっと悪くて、家でも学校でも肩身が狭かった。
それでも、ぼくは学校に通い続けた。
両親に心配をかけたくなかったからだ。
ぼくの自尊心はそうやって削られていった。
干からびて、朽ち果てるまで。
「ねぇ、私たち、付き合わない?」
ある日、一人の女の子がぼくに告げた。
理想は常に頭の中にいる。
愛が深くて、情熱的で、自分のことを深く想ってくれる人だ。
彼女の瞳は、そういう意味では恐ろしく執着心に溢れた色をしていた。
でも、ぼくは、自分を好きだと言ってくれたその女の子から、一生ふさがらない傷を負うことになる。
恐怖で身がすくんでしまうほどに。
もう一五年も前のことだ。
僕が、ぼくだった頃の記憶。