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善と悪

 結局、ジグと出会ったその日の出発をあきらめ、翌日に切り替えた。


 今僕が住んでいる国は氷剣のメルガリア。なぜ氷剣とついているかというとこの国を建国した剣王が氷剣の使い手だったからだ。他の国も同じように名づけられている。


 これから僕が目指す国は隣国の炎剣のブルブラ。他にも大地剣、雷剣、風剣、水剣の国がある。国家間で小さないざこざはあるけど、戦争などは起きないぐらいには友好的である。


 それぞれの国で産出されるものを交換してお互いの生活を維持しているといった感じだ。それに敵なら外界にいくらでもいるのだ。人間同士で争うほど不毛な事はない。



 出来ることならもっともっと国を広げ人間の活動圏内を広めていきたいのだが、その機会はなかなか訪れなかった。人間の領地を広げる為には絶大な力、魔法剣が足りていなかった。


 魔法剣は本当に希少で、初代国王が使っていた魔法剣を極めて異質な方法で子孫に代々受け継がされている。



 その方法は悲惨なもので、魔法剣で自害するというものだ。それにより魂が魔法剣へと移り、所持者が死んでも魔法剣が消えることなく、次代に引き継がせることができるのだという。


 この魔法剣継承の話は有名で、国の存亡の為に命を差し出す王族は畏敬の念で国民から絶対的な信頼を獲得している。


 ......だから昨日、ジグは僕の問いに対して嘘をついた時はすぐにわかってしまった。




【お前は僕を傷つけるか?】

【そんなわけなかろう、俺様は小僧に作られた存在だ。小僧が死ねば俺様も消える。だが、気に喰わない事があれば文句ぐらいは言うがな。ハハハッハ】




 この時僕は警戒していたおかげでジグの攻撃に対処できた。もしかしてジグは僕を殺して自由を得ようとしているのではと考えると気が休まらない。



 僕にはジグが何を考えているのかまるでわからない。不遜な態度をとっているかと思えば、魔法による脅しにすぐには屈服する。情緒が不安定というよりも存在自体が不定形といった印象で、正直に言うと恐ろしい。


 ――話を戻そう、魔法剣の継承は極めて異質だといえる。どうして自らの魔法剣で自害することで継承できると分かったのだろうか?


 真偽のほどはわからないがその発端は、国王の魔法剣を簒奪さんだつしようとした息子がその魔法剣で国王を殺したところからきているという噂もある。


 しかし実際にはそういう闇の部分はなく、国王が息子に魔法剣を譲る為に自害したという美談になっている。


 魔法剣を時代に渡せる利点は大きく、それぞれの国王の最後は魔法剣で命を絶つというものらしい。


 王の死と引き換えに魔法剣と共に王位継承されるなんとも穏やかではない話だ。




 突然なんでこんな話をしたかというと、今回この国で2本の魔法剣が誕生した。それもオリジナルの物が2本だ。現在国王が所持している物と合わせると3本となる。


 これは、これまでの歴史を紐解いてもありえない事だ。建国からこれまで、各国の初代国王以外で魔法剣が誕生したことがなかったのだ。



 今、宿から見下ろす街はお祭り騒ぎで、2人の魔法剣士のパレードが行われている。


 時機をみて、領地を拡大すべく開拓が進められることだろう。氷剣のメルガリア国が拡大するかもしかしたら、新しい国が誕生するのかもしれない。そんな歴史的場面だ浮足だつのも仕方がないことだ。


「まいったな」


『どうした小僧?隣国に行くのではなかったのか』


「アレク様とフリージア様のパレードで道が塞がれちゃってるんだ。これを逆行して進むのは無理だよ」


『なら人混みが捌けるまで待つしかないな、なんならもう一泊すれば良いではないか』


「僕だってそうしたいけど、旅路を考えると宿泊するだけの余裕がないんだ」


『なんだ、小僧お金がないのか?なら俺様が用意してやろうか?』


「嫌な予感しかないだけど、どうやって用意するつもり?」


『そんなこともわからんのか?ほら、外にはあんなに人がいるんだ後ろからサクッと刺して財布をもらえば良い』


「ダメだよ!!なんでそんなに邪悪なの!?」


『ッハ!なんだ怖気ついたのか?まったくアナルの小さい小僧だ』


「そういう事じゃない!やっていい事と悪い事がある!当たり前の話だよ!」


『善悪とはなんだ?人間は普段から命を奪い肉を食っている。なぜだ?生きる為だろう?』


「それとこれとは話が違う!」


『いいや、違くないさ。なぜ金が必要なのか?生きるためだろう。金があればいつでも好きな時に肉と交換できる。こいつは便利だ。なら、野ウサギの命を奪うのも目の前の人間から金を奪うのも結局は一緒ではないか」


 僕は無言で掌に雷光を発現させた。


『ッハ!話し合いに暴力を持ちだすか。ハハッハ、化けの皮が剝がれたなぁ小僧?』


「ッぐ......」


 ジグの言っている事は決して正しくはない暴論だ。だが、僕は怒りをぶつけるわけにはいかなかった。魔法による牽制をやめる。今僕がやっている事は本質的にジグが言っている力で奪う行為だからだ。


『小僧の魔法は強力だ。お前は力を持っている。なぜそれを使わない』


 心底不思議そうにジグはこちらを見てくる。


『俺様と小僧の力があれば世界を手に入れるというのに、なぜこそこそ隣国へ逃げる?』


「......逃げるわけじゃない」


『じゃぁなんだというのか、まぁいい。だが小僧がその気になればこの国だって簒奪することだってできる。気が変わったら言うがいい』


「暴力で従わせるなんて、そんな事は絶対にしない」


『ハハ、フハハハハハ。その言葉しかと聞き届けたぞ!それも良いだろう!』


 意外にも肯定の言葉が返ってきて訝しく思い眉間に力が入る。


『ならこれからは俺様にビリビリしたり、チャッカファイアしたらダメだぞ!絶対するなよ!絶対だからな!!暴力はぁぁ!俺様の専売特許だぜぇぇぇ!!』


「おい......ジグ?」


『さぁ!逃げ惑え小僧!!自分でつけた制約に苦しみ、そして死ねええええぇえ!!』


 ジグが嗤いながら僕を弄ぶかのように剣戟を繰り出してくる。だから僕はジグの攻撃を避け反撃した。


『あばばばばばばばばばば!!』


 ジグは雷撃を受け黒煙をあげながら床に落ちた。


『もうやめてよーー。嘘つきー。暴力しないって言ったぁ。言ったもん。暴力しないって言ったよ?』


「悪意に対する正当防衛だよ」


『なにそれーーひどいよぉーー。反撃するならちゃんと言ってよぉーーー。やめてよぉーーー暴力良くない』


「......」


 ジグは一言二言文句を言ったあと、電池が切れたように急に動かなくなった。動かなければちょっと珍しいだけの漆黒の剣。


 漆黒の剣を見下ろして思う。僕のインテリジェンスソードは......嫌な奴だ。



時折ギャグを挟み込んでいきたいと思ってますが、僕自身まだ彼らの事をよくわかっていません。


著者が設定しているのは

ルーシェルが気弱な青年

ジグノートが乱暴者


正反対な2人がボケとツッコミのように面白く変化してくれたらいいなぁと思っていますがどうなるのかは2人の反応次第です。


最初の設定ではルーシェルはもっとビクビクしてるはずだったのですが、なぜかジグノートに対してだけは強気な行動を勝手にとりやがります。


さて、長々と後書きを書くのはここまで(作者の言い訳は終わったので)


1話5分程度、土日更新。平日は物語が書け次第随時更新

なので隙間時間に読んでくれるとありがたいです。


もし、物語でネタをぶっこんで欲しい時は気軽に感想に書き込んでみてください。(プロットも何も用意してないので)

例えば、ハンサムなゴブリンを登場させてみてとか、腹黒美女を登場させてみてとか、幼女が欲しいとか、ちょっと無双してみてとかそんなのでもいいです。もし作者に活用できる力があればギャグネタとして使わせていただきます。

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[良い点] 更新来た!待ってた。 読むの楽しい。更新楽しみ。
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