和解
『汚いぞ小僧!!これが貴様のやり方かーー!!』
宿屋に戻った僕がやったことは漆黒の剣をロープでぐるぐる巻きにして動けないようにして、ベッドに縛り付ける事だった。
案の定目覚めた漆黒の剣は、暴れようとジタバタしている。
「ちょっと待って、まずは落ち着いて」
『この仕打ちで落ち着いてなどいられるか!』
「落ち着いて話ができればちゃんと解くから」
『うるさーーーい!まずは解けーーーー!!』
この前に進まないやり取りをかれこれ30分近く続けており、さすがに僕もイライラしてしまい。握りしめた手に雷光を発現させてしまった。
『っひ』
「......まずは話を聞いて」
『そ、そのバチバチでなにかするのー?』
「話を聞いてくれたら何もしない」
『話きくー。バチバチ嫌だよー。やめてよー」
深いため息を吐いたあと、雷光を鎮める。
『......それで、小僧話とはなんだ』
あまりの態度の急変ぷりに再度ため息が漏れる。ちょっとずつコイツの性格がわかってきたような気がする。
「まずは......君は僕の剣でいいんだよね?」
『そうだ。間違いなく小僧によって俺様は作り出された』
「なんで喋ってるの?」
『それは俺様がインテリジェンスソードと呼ばれる魂を持つ剣だからに決まってる』
あまり説明が頭に入ってこない。頭の中でなんで?どうして?が次々に浮かんでくるのでどうにも的を得た質問というのがなかなかできない。
「どうして、僕はインテリジェンスソードを神から授けられたの?」
『神から授けられた?そういう見方もあるかもしれないが、そうではない。俺様は小僧の魔力によって作り出された存在だ』
「うーん」
『俺様もなんでも知っているわけではない。自分の存在概念は知っているが、他の剣の事など知らん、逆に俺様以外ではどんな剣がある?』
「そうだな、まず喋らない事は前提条件として、鉄剣、属性剣、魔法剣、おまけでインテリジェンスソード......これが僕が知っている剣の種類だよ」
『俺様をオマケにするな。でも推測は立つ。鉄剣はただの切れ味の鋭い剣だろう。属性剣は名前からして刃に属性を持つ剣、斬ったら燃えたり、凍ったりする剣だろう。魔法剣は属性剣の上位互換か、斬らずとも燃やしたり、凍らしたりできる。そうだろう?』
「うん。僕も詳しくは知らないけど当たってると思う、それじゃインテリジェンスソードは喋るだけの剣なの?」
『な?!小僧愚弄するなよ!インテリジェンスソードとは至高の魔剣だ。どの剣よりも鋭く、どの剣よりも強力な魔法を放てる。......可能性がある』
「可能性?」
『ふん。俺様は成長する剣なんだ。魂を持つ代償といってもいい』
「成長する......?まるで人間みたいだね」
『本質的には同じだ。鍛えれば鍛えた分だけ強くなる』
「......それで鍛える方法は?」
『ふははは、乗り気になってきおったな小僧?俺様を鍛える方法ただひとつ、血を肉を喰ら為に斬る事だ。俺様は喰らった分だけ強くなれる!』
「穏やかじゃないなぁ」
『何を言っている。俺様さえいれば無限の強さを手に入れることが出来る。世界征服も夢などではない。俺様と共に世界を統べるのだ!』
「あ、そういうのいいんで」
『んな?!正気か?!絶大な力を手に入れて、それを行使しないなど、小僧はそんなアナルの小さい男なのか?!』
僕はイラッとして無意識に掌に雷光を走らせた。どうやら癖になってきているらしい。
『っひ?!やめてよー。バチバチするのやめてよー。お尻の穴がキュってなっちゃったよー』
剣なのにお尻があるの?とは思ったけどそんなわけはないと思ったので話を進める。
「僕はのんびり平和に生活できたらそれでいいと思ってる」
『うん。そうだよね。バチバチするのやめてよー』
「実は今日、この国を出ようと思ってたんだ」
僕は雷光を鎮め、そしてインテリジェンスソードを見つめる。
「本当は隣国までいくつもりだったけど、喋る剣を持ってるなんて知れたらどうなることか」
悪い想像ばかり浮かんで、残念ながら良い想像は浮かんでこない。
『何を隠す必要がある俺様は至高の剣だ......俺様を誇ればよい』
「......最後にひとつ聞きたい」
『なんだ小僧』
「お前は僕を傷つけるか?」
『そんなわけなかろう、俺様は小僧に作られた存在だ。小僧が死ねば俺様も消える。だが、気に喰わない事があれば文句ぐらいは言うがな。ハハハッハ』
「そうなんだ」
僕はインテリジェンスソードの拘束を解いていく。
『お?』
「僕はルーシェルだよろしく。君に名前はあるの」
『フン。剣の銘を付けるのは製作者と決まっている』
「つまり名前はないと、そうだな」
『名は体を表す言葉、魔剣にふさわしい名をつけろ』
「魔剣......ジグノート」
『小僧にしては悪くない。好きにするがいい』
「ジグノート、そうだな愛称はジグとでも呼ばせてもらうよ」
僕はニッコリとほほ笑み右手を前にだした。その姿にジグの心が揺れたように思えた。ジグの柄の部分を差し出すように剣先が上に上がっていく。
『小僧......隙ありぃぃぃぃい!!!』
ジグは剣先を僕に向けて振り下ろしてきた。大体そんな感じはしていた。だから僕は氷の魔法を行使して、ジグの刀身を巨大な氷で包み込む。ジグはバランスを崩して床に落ちた。
『あれ、あれ......?』
「僕は思うんだ、毎回こんな事されるとさすがに疲れる」
『やだなぁ、冗談だよー』
「本当はこんな事やりたくないんだ。本当は仲良くやっていきたいんだよ?」
僕は掌に雷光を発現させて、床に落ちて身動きのとれないジグにゆっくりと歩み寄る。
『やめてよー。バチバチやめてよー。仲良くするよ?ジグ良い子にするよー?』
「そうだね。良い子の時は何もしないけど、悪い子の時はお仕置きしないとだよね?」
『そんなことないよー。やめてよー。お尻がヒクヒクするよー』
僕は今回だけは、心を鬼にして動けないジグの持ち手部分を強く握った。
『あばばばばばばばばばば!!』
僕は一つだけ確信したことがある。僕のインテリジェンスソードはアホだ。
僕のインテリジェンスソードはアホだ。
というテーマのみで書いてみました。
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