表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

その8※

R-15、生理ネタがあります。ご注意ください。

―――身体が重たい。目が覚めたのは朝7時。急いで動物、畑の世話をしなければいけない時間帯だ。しかし、全身の倦怠感がひどい。できれば何もせずベッドで休みたい。


(あの後何されたんだろう……)


 昨晩意識を手放した唯子は、あの後何をされたのか分からない。唇、胸、腋、下着がべっとり濡れていることは、もしかして男の行動と関係あるのだろうか……。身体が気持ち悪い。シャワー浴びよう。


 あまり考えたくない。

 ベッドで蹲っていると、少しずつ、じわじわと昨晩の恐怖がせり上がってくる。


 ひどい、ひどい。人としての尊厳を踏みにじられているようだった。

 この先ずっとあんな事をされるのだろうか。絶対に回避したい。口の中を好き勝手舐め回されるのは、本当に気分が悪い。何より、カミルと似た匂いを持つあの男に口腔を犯されて、どこか興奮してしまっていた自分が気持ち悪い。



(もう、カミルに会いに行けないな……)


 知らない男に何をされたか分からない、汚い自分。それにどこか興奮してしまった自分。

 カミルに、こんな自分を知ってほしくなかった。


 怠い身体にムチ打ち、シャワーを浴び、ふと気づいた。


「あ、生理きてる」



 唯子は生理が重たい方だった。






 何とか日課を終え部屋に戻ると、本格的に下腹部痛が強くなってきた。ぎゅうう、と締め付けられるような痛みは、時間が経つごとに強くなっている。

 痛みのあまり冷汗が止まらない。ベッドに横たわり、お腹をさすり、何とか痛みを逃がそうと試みる。



「うぅう、痛い。これはめちゃくちゃ痛い。とっても痛い。いてて」



 痛い時って声が出るよね。むしろ「痛い」と叫ぶことで、痛みの原因が飛んでいかないかなぁとか思っている。あぁ痛い。

 ルーファスさんに痛み止めもらっておけばよかった……。

 この村には使い捨てナプキンなるものが存在しない。村の女性は生理が来ると、長方形に折った八つ折の布を、下着に重ねる。使い終わった布は、洗って使い回すそうだ。所謂布ナプキン。唯子も事前に教えられ、しっかり作っていた。



「痛み止め、欲しい……。めっちゃほしい」



 痛みのあまり、動けない。しかし、その痛みを和らげる痛み止めを村に買いに行こうか真剣に悩む。 

痛みから解放してくれる薬が欲しい。とはいえ村の中心まで1時間、歩けるかどうかわからない。こういう時に一人暮らしは不便だと感じる。


 ドロッと経血が流れ出す感覚があり、気分が悪くなる。



「ぅぅ、どうしようかな。痛い、痛い…。買いに、行ってみようかな。行けるかな」



 痛いなら寝とけばいいじゃん、とか思うかもしれないが、痛すぎて横になっているのもつらいのだ。

 いっそ、痛み止めをもらいに行ってもいいのでは……?

 じゃないと、今日も眠れない。夜に現れる男への対処も考えなければいけない。



「よし、行くか」



 お腹を冷やさないよう、服を重ねて着る。お金も持った。さぁ、何とか頑張ろう。

 





――――――休み休み、何とか村の中心にたどり着くことができた。


 意外といけた。早く、痛み止めをもらって、この痛みから解放されたい。


 薬屋のドアを開けば、迎えてくれるルーファス。相変わらず不愛想であるが、意外と優しい人物であると最近知った。

 一見無表情に見えるがその実、よくよく見ると笑っていたりするのだ。猫が好きらしく、外でよく猫におやつを与えている。たまに見かけてこっそり和ませてもらっている。



「ルーファスさん、いらっしゃいますか」

「唯子か」

「すみません、痛み止めもらえませんか?」

「あぁ、ちょっと待ってろ」



 店の奥から痛み止めと思わしき錠剤が入っている瓶を持ってきたルーファス。

 ふと何かに気づき、顔を顰める。



「血の臭いがする……」

「え、何ですか?」

「お前から血の汚らわしい臭いがすると言っているんだ」



 整った顔を更に歪め、吐き捨てるように放つ。

 眼鏡の奥に見える瞳は歪み、顔を真っ赤に染めて汗をダラダラかいていた。息も荒い。

 こんな表情のルーファスさんを見たことがなかった。


(アレ……何かが変だ)



「ぁ、あの、月のものが来まして、痛み止めを頂きたくって。ルーファスさん、どうされました?」

「月のもの―――。痛み止めだよな。あぁ、分かっている。いやしかし―――こんな雌の臭いをプンプンさせて。体液と血が混ざりあった臭いだ……」



 ぶつぶつと己の世界に閉じこもるルーファス。こんな彼は見たことがなかった。


(いや待って、普段は無表情で実は猫好きってだけの青年じゃなかったの?)


 普通に怖い。瞳をかっ開きながら、ぶつぶつ独り言を呟いている。

 ここにいちゃあ、マズイ気がする。

 今日知った。ルーファスさん、普通にヤバい人だった。

 言動から、この人もしかして経血の臭いに興奮している―――?という嫌な閃きがあった。なんか雌とか言ってるし。息荒いし。

 今も生理痛がしんどい。這う這うの体でやっとかし薬屋に来たのに、まさかこんなダークホースがいるとは……。


(とりあえず逃げよう……。マイル医師に痛み止め貰えないかなぁ)



 こそっと逃げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ