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第3話

前話ぶりですね、こんにちは。

「我が家へようこそー」

 放課後、約束通りにイオリの家へと案内された湊、プリムラ、秋久の3人。


「わあ、広い!」

「まあ、一軒家だからねー。『感覚持ち』の特権、みたいな?」

「へえ、いいですねー」

「プリちゃんたちって今もアパート暮らしだっけ?」

「はい、そうです。さすがに二人じゃちょっと狭いかなーって思う時もあるんですけど、もう慣れちゃいました」

「ふーん、プリちゃんたちも家寄越せって強請ればいいのにー」

「え?」

「多分だけど政府辺りに強請ったら一軒家くらいくれると思うんだよねー。ほら、アタシと同じ観察対象モニターなんだしさ。多少は融通が利くと思うよ?」

 そんなこと初めて知った、とプリムラ。


「一軒家・・・。湊さんはどっちがいいですか? 今のアパートと一軒家」

 今の家もいいけれど、もうちょっと大きい家なら広々悠々と過ごせたりーと考えるプリムラ。

「生活ができればどこでもいい」

 変わらずそっけなく返す湊。

 その様子を見たイオリはやれやれと首に振り

「はあ~、湊くん、そこは『プリムラ、君がいてくれればどこだっていいよ。はぁと』くらい言わないとだよ?」

 茶化すように湊に言う。

 すると少し考え込んで湊

「別に僕一人でも生活はできるが・・・。まあプリムラがいると助かるのは確かだな。一緒にいてもらうことには賛成する」

 と、顔をプリムラに向け視線を外すことなく言い切る。


「はぅっ!?」

「え、なに。今デレたの? 湊くんクーデレ属性だったの!?」

 予想外の湊の発言に驚くプリムラとイオリ。

「クーデレとはなんだ? 僕はただ率直な意見を述べ────」

「はい! こ、ここらへんでいったんどうでしょう!? 勉強しましょう勉強!?」

 慌てたプリムラが話を逸らそうと本来の目的である勉強会の方向へ誘導し、イオリに部屋へと案内してもらう。



 イオリの家に来てから2時間ほどが経った。

 外は陽が落ち始め、夕日が空を赤く染めている。

「────そろそろ休憩にしますか」

「ふあー! 疲れたー! あ、アタシ飲み物と甘いもの持ってくるよ。皆はテレビでも見ながら自由にしといてよ」

 イオリが部屋に設置されたテレビを起動させる。

 画面に映像が流れる。

 花、空、鳥、建物、星。

 パラパラと切り替わる画面内の景色。

 何気なく切り替えたチャンネルではニュース番組が放送されていた。



『続いてのニュースです。世界連合が実験的に提供した感情アンドロイドの1体がロンドン市内で暴走。多数の被害が発生しました。幸い死者は確認されていませんが監察対象モニターの女性が重傷。他多数の損害が出ています。現在、暴走したアンドロイドは鎮圧され、機体は回収されています。世界連合はこの件を重く受け止め、感情アンドロイドへの今後の措置を検討しているもようです』


 思いもよらぬニュースに誰も声をだせずにテレビの画面を見ていた。

 カタン、とイオリが手にしていた盆をテーブルの上に置いた。

「アンドロイドが暴走って・・・。 プリちゃんどうなっちゃうの?」

「どうなるんでしょう。わかりません。世界連合が、感情アンドロイド(私たち)に対してどのような判断を下すのか」

 二人の間に沈黙が流れる。が、

「秋久、違うそっちじゃない。その隣。違う反対だ」

 流れる沈黙など関係なしと聞こえる湊の声。

 見ると、少し離れたところで湊が秋久に何やら指示を出していた。

「あの、結構シリアスな流れだったと思うんだけど、君たちは何をしているのかな?」

 空気を読まない男子二人の行動に若干頬を引きつらせながら訪ねるイオリと、それに振り返る湊。

「何と言われても、イオリが自由にしていいと言ったからな。そこの本棚に気になる本があったので秋久に取って貰っていた。僕じゃ背が届かないところにあってな。ああ、すまない、ありがとう」

 湊が秋久から本を受け取る。

「まっ、そ、それは・・・その本は・・・!!」

 その表紙を目にしたイオリが焦りの声をあげた。


『おねロリ! 禁断の身内×××(R-18)』

 エロ本である。


「あああああああ!!!???」

 叫び、両手で顔を覆うイオリ。

「イオリさん、そういう趣味の方、だったんですね・・・」

「待ってプリちゃん! 違うの! いや違くないけど!!」

 弁明しようとするが弁明の余地がなどなかった。

「ふむ。確か僕の知識ではこういった生殖行為は男女間でのみ成立するはずだが。女性同士では子孫を残せないではないか。 どういった意味があるというんだ?」

 手にしたエロ本を流し読みをした湊が自身の知識と照らし合わせてひとまずの感想を述べる。

 その言葉を聞いたイオリは、ズンズンと大股で湊に近づく。

「何を言うんだね湊くん! 意味とかそういうんじゃないんだよ! 愛だよ、愛なんだよ!!」

「愛?」

「そう! 誰かに強く好意を抱くだとか、安心するだとか、この人と一緒にいたいとか、そういう気持ちだよ! 君もわかるでしょ!?」

「なるほど、それは僕にはわからないものだな。だが、興味深いな」

 湊の瞳の奥を見るように、じっと見つめるイオリ。

「なんだ?」

「・・・何でもない」


 ところで、と、イオリは話を切り替える。

「湊くん。そのー、君のところに政府からエッチな本届くんだよね?」

「ああ。あの手の本は今朝が初めてだったがな」

「それでさ、もし今後、君が今手に持っているような女の子同士の本が届いたら、アタシに譲ってくれないかなー、なんて」

「ああ、別に構わないが」

「ほんと!? やったーありがとう!」

 喜ぶイオリ。


「二人で何て約束してるんですか!?」

 さらっととんでもない提案がなされた二人にプリムラが叫ぶ

「え、聞こえてたの!?」

「聞こえますよ! 最新鋭のアンドロイドの性能ナメないでください!!」



しれっと物語が進展したことをエロ本の登場で隠していくスタイルです

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