表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

第2話

お久しぶりですこんにちは。第1話ぶりですね。

 朝食を食べ終わった二人は身支度を整えて家を出る。

「それじゃあ、学校に行きましょう。湊さん、身分証明カードは持ちましたか?」

 玄関を閉める直前に、プリムラが念のためにと湊に聞く。

「ああ、そういえば今朝の本の栞の代わりに使ったままだったな」

 エロ本に挟んだままだったことを思い出した湊が部屋に身分証明カードを取りに行く。システムの発達したこの時代に、身分証明カードを忘れては商業施設もインフラ設備のほとんども利用できない。

「いい加減、その近くにあったものを栞に使う癖、治りませんかね?」

 プリムラが呟いて数十秒後、戻ってきた湊と今度こそ家を出たのだった。


 二人の通う学校は徒歩で通える範囲なので、めったなことでは公共交通を使わない二人は今日も並んでい歩いている。

「随分と暖かくなってきましたね」

「そうだな」

「草花も生えてきましたし。あ、湊さん! あそこにプリムラの花! 私と同じ名前の花ですよ!」

「知ってるよ」

「そういえば私、久しぶりに湊さんが作った料理が食べたいな~、なんて」

「僕が作るよりプリムラが作る方が材料と時間の節約になる。そもそもプリムラは食物を摂取しなくても問題ない構造だろう」

「そりゃ、私は基本エネルギー源は電気ですけど人間みたいに食べ物を取り込むこともできるんですからね! あ、そうだ、ジャンケンしましょうジャンケン! ジャンケンで勝った方の言うことを聞くのが私たちのルールですから! ほら、手を出してください!」

 プリムラが手を出し、湊にもジャンケンをするように急かす。


「いきますよー! じゃーんけーんぽんっ!」

 出された手はグー、グー、パー。

「あ、アタシの勝ち!」


 横から突然顔を出した少女にプリムラが驚く。

「ひゃああ!? イオリさん!? いつから!?」

「ジャンケンの勝者は何でも言うことを聞かせられるんだよね。何にしよっかな~」

「え、イオリさん!? 聞いてます!?」


 プリムラを気にもせず、勝者の特権を何に使うか悩むイオリと呼ばれた少女。

 そして、閃いた、とプリムラに体を向けると

「プリちゃん今日のパンツは何色?」


 一瞬固まるプリムラ。イオリの質問を脳内で数回反芻し、ようやく内容を理解する。

「何を聞いてるんですか!? ていうか言うわけないじゃないですか!!」

「えー。湊くん、プリちゃんのパンツの色知ってる?」

「下着の色なんて何でもいい気がするが」

 そっけなく答える湊。


「冷めてるなー。それでも思春期の男子? あー、思春期的思考なんてこんな世界には無い、か」

 つまらなそうにつぶやくイオリ。というのも彼女は現在では珍しい、感情を豊富に持って生まれた人間(通称『感情持ち』)であり、政府の監視対象でもある特殊な人間である。


「まあ、いいじゃない! 勝者のアタシのためと思ってー! 何色かなープリちゃんのパンツ。白? 水玉? 黒?」

 教えろ教えろと湊に詰め寄るイオリ。

「確か白しか持っていなかったはずだぞ」

 いい加減に鬱陶しかったのかついにプリムラのパンツの色を教える湊。

「わあああああああああああああ!!!」

 あまりの恥ずかしさに両手で顔を覆いその場に蹲るプリムラ。


「あー、プリちゃん。今度アタシと買い物行こう」

 慰めの言葉をかけるイオリだが、それが地味にプリムラの羞恥心をさらにつついていることを知らない。

「うう、今日は何なんですか。パンツの色は知られるし、湊さんは朝からエッチな本読んでるし・・・」

「え、湊くんそんなの読んでるの!? さっき自分で思春期がどうこう言ったけど、こんなかわいい女の子と一つ屋根の下に住んでるくせに堂々とエロ本読むって。ちょっと引くかも」

 湊から数歩下がって距離を取るイオリ。

「政府から届いたものだ」

 と、エロ本の調達源を伝える湊。

 それを聞いたイオリは、なるほど、と納得する。

「とんでもないもの送ってくるのね、あの政府」


 プリムラのパンツの色と湊のエロ本の出どころに満足したイオリは二人とともに学校へ向かう。

 しばらく歩いたところ、前方に短髪でガタイのいい男子学生がいた。

「ん? あそこにいるのって秋久じゃない? おーい、秋久ぁー!」

 秋久と呼ばれた男子生徒は重量のある動作で湊たちに振り向く。


「秋久おっはー」

「おはようございます秋久さん」

「・・・・・・ああ」

「相変わらず寡黙だねー」

  挨拶の返事を一言だけ言った秋久は再び前に視線を戻した。

 それにつられてプリムラとイオリも視線を前に向ける。


「あっ、あれって」

 視線の先、一つの建物から運び出されたのは人一人分ほどの黒づくめの箱。

「あー、『黒箱』だね」

 

 イオリが『黒箱』と呼んだもの。正式名称を『仮想空間接続装置』という。

 世界連合が人口爆発と高齢化社会に対して発動させた計画である。

 一定の年齢を過ぎた者はこの装置の中に入り、その後の余生をすべて仮想世界で過ごすこととなる。

 また、何らかの障がいにより通常生活が困難になった者もこの装置に入ることができる。 


「私、初めて見ました」

「あたしは何度か見たことあるけどねー。将来、あの中に自分が入ると考えると、なんかキモチワルくなるよ。さ、みんなで学校に急ごう」


                     ◇

 

 科学技術が発展した現代ではその仕事のほとんど全てを機械化しており、人間が将来の職のために教育を受ける必要はほとんどない。

 が、現在でも学校制度が残るのは古くからの義務が未だ変わらずに残り続けているからだという。


「いよっし!」

 教室内でイオリがガッツポーズとともに喜びの声を上げる

「ど、どうしたんですかイオリさん」

「プリちゃん聞いてよ! アタシ今回のテストで赤点回避した・・・ん、だ・・・よ・・・?」

 自慢気にプリムラに近づいたイオリの目に映ったのは桁が3つある点数。すなわち満点の100点だった。

 その場に膝から崩れ落ちるイオリ。

 喜びから反転、自分と友人である少女の点差に深い悲しみに襲われる。

 しかしここでめげないのが少女イオリ。

 プリちゃんアンドロイドだし仕方ないよね! と何の解決にもなっていない方法で自分を納得させ、崩れ落ちた膝に力を籠める。

 と、そこで近くにいた湊の点数が見えた。

 2桁。しかし点数は95。


「嫌がらせか湊くんよ・・・」

 イオリの中の何かがぷっちんと切れた気がした。

「何か言ったか?」

「嫌がらせかと聞いたのだよアタシはあああ!! 見せびらかすようにアタシに高得点のテストを見せて! アタシだって芸術科目の評価じゃ湊くんより上なんだからなー!」

 勝手に覗き見たことを棚に上げ、湊に怒りを表すイオリ。

「そうか。だがそもそもこの点数くらい普段のカリキュラムをこなしておけば取れると思うが」

 イオリの胸の深くにグサリと刺さる言葉。

「うわああああああん! プリちゃああん、湊くんがイジメてくるよおおお!」

 イオリは湊に向けていた体を反転。プリムラに抱き着いた。

「み、湊さん。イオリさんにも優しくしてあげないとだめですよ?」

 何が悪かったのか全く分からないといった様子で、湊は小首をかしげる。


 イオリはプリムラに抱き着いたままガバッと顔を上げた。

「プリちゃんっ、アタシに勉強を教えてッ! どうか、アタシにいいい!!」

 そう懇願しながらプリムラの胸に顔をぐりぐりと押し付ける。

「お、教えます、教えますから!」

 プリムラは、やめてくださいいい、と強く拒絶できないままイオリの頼みを承諾する。

「やった! あ、じゃあ放課後にうちに来なよ! 秋久も呼んでさ! アイツ、アタシと同じくらい筆記できなかったはずだから」

「イオリさんの家、ですか・・・?」


実は私(自称)後書きがうるさい勢なんですが、この作品では作品の雰囲気を壊しかねないので大人しくしていることに決めました。(だからどうした)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ