エピローグ奏多……お題回収SS
いつだっただろう、まだ私がなんの力も持たないただの女の子だった時に夢見た光景……。その時はただの夢物語だったはずが、今じゃ当たり前の光景。
「ジャス君、ここで寝たら風邪ひいちゃうよ〜」
リビングのソファーでうとうとする君は、今はどこにでもいる高校生だ。すーすーと静かな寝息を立てて眠っている。
「もうしょうがないなぁ……今はゆっくり寝かせてあげますか」
私はそう言って彼の右側に座る。今日は忙しかったから眠くなるのもよく分かる。私がこの家に住むことになって沢山の手続きがあった。気疲れも当然だし、私も疲れてるから。
「私もちょっとだけ寝ようかな……寝れるのかな……」
いつも一緒にいるのが当たり前になっていた。でもこの感覚は初めて会った時から一度も変わったことがない。胸の鼓動もそれを伝えている。
「いっぱいいろんなことがあったね」
横を向けばやすらかな寝顔。そういえば初めてのステラバトルの後はほっぺに手形つけちゃったっけ。半年くらい前のはず。そっか、半年しか経ってないんだ。
「あの時はごめんね〜。でも悪かったとは思ってないよ」
それくらい私は怒ってたんだから、許してね。今のジャス君ならもうあんなこと言わないだろうけど。
「かっこよかったんだ。他の子達が、ううん、誰がなんと言おうと私にとって君はかっこよかったんだ、ずっと」
そして今も……。
「で、今はその横に私がいる」
君が完璧じゃなくていい。君が足りないところは私が、私に足りないところは君が、二人で完璧になればいい。
「英雄になんてならなくていい。主人公になってくれたらいい」
と思ってたけど、もう君は立派な英雄だ。私のヒーローなんだ。
「いつまでもこんな平和が続けばいいんだけどね」
でも、私たち2人だけが平和な暮らしをしてても君は納得できないよね。全世界の人々とは言わなくても手が届くなら差し伸べる人だもん。だから私たちはまだ戦いから身を引くことはない。
「でもさ、今日くらいこうしててもいいよね」
そっと彼の肩に頭を預ける。彼も自然と軽く私に寄り掛かってきた。顔がすぐ近くまで寄ってくる。鼓動が少しだけ速くなった気がした。まじまじと顔を見つめる。
「ふふ、ちょっとだけマヌケっぽい。おやすみ、ジャス君」
鼓動の高鳴りは収まらない。けど安心する場所、安心できる場所、今は2人だけの場所。自然と奏多も眠りについた。昔に夢見た幸せな夢の続きを、今彼女は見続けている。
〜You are my hero〜 END