テレビの前で
「えっジャスくん?!?!じゃあこの子は西町くんなの!?」
急にテレビがつき、流れた映像は奏多にとって衝撃的なものだった。
「えっ、ちっちゃい!!かわいい!!なんだろうこれ、昔の録画とか!?!」
「奏多〜何やって……」
帰ってきた正義が、テレビ画面を見て固まる。記憶のない幼い自分がそこにはいた。
「ねぇねぇ、見てよ。小さいジャス君かわいいね」
「なっ!なんだこれは。奏多、消してくれ」
「えー、やだよ。ほらほら西町くんもかわいい」
うわー、すっごいかわいい、とテンションが高い奏多を見て正義はムッとする。
「西町くんって、顔もいいし、性格もいいし。ちっちゃい時はほんとイケメンだしかわいいね〜!!もう!西町くんをあんまり困らせちゃだめだよ?めっ、だよ、めっ!」
「子供扱いしないでくれよ、奏多……」
「ん?どうしたの?」
元気のない正義を奏多は見つめると、正義の考えに気づいてにやっと笑う。
「あーはいはい。ちっちゃい時の西町くんはたしかにかっこいいしかわいいけどね」
ムッとする正義の頭を撫で始めて、奏多は髪を梳かす。
「今の私にはジャスくんしか見えてないよー」
その日一日、機嫌のいい奏多だった。夕飯が少しだけ豪華になったのは内緒である。数日後、その映像がなくなってしまい、奏多が絶望したことも内緒である。