ジャスかな第一回後日談
ステラバトルの長い一日が終わった、次の月曜日、普段通りの日常に戻った正義と奏多の二人は、アンティークショップで登校の準備をしていた。
「朝からわざわざ迎えに来なくたって僕は遅刻なんてしない」
「私が来たいから来てるだけ。裁貴くん、ネクタイ曲がってる」
「いや、これくらい自分で直せるって」
「いいから、やらせて」
あの姿鏡の前でネクタイを確認しながら自分のネクタイをいじる正義の手を払い、奏多が綺麗に結びなおす。そのまるで新婚夫婦のような光景を、仕事の準備をしながらほのぼのと眺める裁貴家の母親だった。
「ありがとう」
「私が世話焼きなだけだから」
「将来、奏多は、いい奥さんになれるな。じゃあ、いってきます」
正義はそういうと奏多を先導するように店を出た。奏多は小さく息を吐くと、少し駆け足で奏多の横に並んで歩き出した。
「なんか嬉しそうだな」
「え、そうかな?」
しばらく何でもないような話をしていた時、正義が突然そう言った。
「うん、なんか嬉しそうだ」
じーっと奏多の顔を見つめる正義。奏多はその視線にどぎまぎして固まってしまう。
「あっ、そうか。前に話してくれた好きな人に久しぶりに会えるからだな」
正義は、何か心に引っかかったような気がした。何が原因なんだと悩んで目線を上げると、疲れたような顔の奏多がいた。
「疲れてるみたいだ、大丈夫?」
「……馬鹿……」
「ん?今何か言ったか?」
「……何でもないっ」
「何を怒ってるんだ、あ、秘密だって言ったことをここでしゃべったからか。ごめん」
「そうじゃないっ、もういい、早くいこう」
奏多は正義の手を握り速足で歩き出す。引っ張られる手をじっと見つめながら、パートナーと一緒に居ることが楽しいならそれでいいかと思った。さっきの違和感はいつか分かるだろう。正義から見えない奏多の表情は、とても楽しそうな嬉しそうな、幸せそうな笑顔だった。