貴方、プロローグを始めなさい
それは夕暮れの放課後の事だった。
帰り道の途中、体育着を忘れてしまって、駆け足で誰もいない教室へと取りに戻った時のあの日。
静まり返った教室の中に入ると、彼女は居た。
突然入ってきたものだから驚かせてしまったのかもしれない。彼女はビクリと大きく肩を震わせると、様子を伺うように僕の方に顔を少し向ける。
名前は…なんて言っただろうか、話した事が無い、それくらいに面識のない。
彼女も何か忘れものでもしたのだろうかと、最初は特に気にも留めなかった。けれども、教室に一歩足を踏み出そうとしてすぐにおかしいなと気が付いた。
彼女が腰を掛けて座っている机は、誰でもない自分の席だから。
「…あれ…そこ…僕の席…」
間違えたのかと思って尋ねるも、彼女は此方に顔を向ける事なく、無言のまま何も答えない。
取りあえず体操着だけでも持っていく為に近づくべきなのか、それとも黙って待っていた方がいいのだろうか。動き出せずに、ただ無言のままじっと待つ。
次第に窓から夕日が差し込み、教室の中はオレンジ色に染まる。
「…ねえ」
先に口を開いたのは彼女の方だった。此方に向かって身体の向きを変えると、僕の瞳を見つめ呟いた。
「貴方、私に恋しなさい」
夕日に照らされた彼女が、まるで頬を赤く染めながら。
こういうの執筆したことないので未熟だと思います。まったり投稿していこうと思います。