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出会い編そのよん

 顔つきはきつめに見えるけど、かなり美人。

 外人、さん、だよねぇ。白人系な感じ。

 背は私より拳ひとつ分くらい高くて、スラっとしている。えっと……、胸部装甲的な意味でも。

 さっきはよく見ていなかったからちゃんと把握していなかったけど、かなり厚手の衣類をまとっている。……というか、明らかに現代的な服装じゃなくてコスプレっぽい。汚れとか妙にリアルだし使い込んでる感ハンパないけど。

 髪は無造作に後ろに束ねられている。グレーって珍しい髪色だなぁとは思うけど、コスプレ的な衣装とは妙にあってる気がする。


 思わず上から下まで観察しちゃったけど、仕方ないと思う。

 なのに、思いっきり私のことを訝しげに見てくる、風呂場に沸いた不法侵入美人。


 なぜだろう。

 私が家主なのになんで堂々と仁王立ちで私を睨んでんのこの美人。

 美人だからって何もかもが許されるわけじゃないんだからね。そこんとこわかってんのか。


「ねえ、だからアンタ誰なの」

「ここに住んでる三柳真澄(みやなぎますみ)です」


 キツく言えない自分が憎い!

 明らかに私は悪くないのに美人に弱い自分が憎い!

 だって幽霊じゃなさそうだしストーカーでも死体でもなさそうでよくわからないんだもの!


 私が素直に名乗ったのが意外だったのか、眉を吊り上げて信じられないといったような顔をしている。

 私からすると他人の家に不法侵入して堂々としているこの人の神経の方が信じられない。


「住んでるって……ダンジョンに? そんな人間いるわけないでしょ? ナメてんの?」

「ダンジョン……? ここはマンションなんだけど……」

「はあ? 何言ってんの? ってか、ここ何階よ」

「ご、5階だけど……っていうかあなたこそ誰……?」


 なんでものすごく偉そうなのこの人。

 ダンジョンとか意味わかんないこと言ってるし、何かぶれなのよ。どこをどうみてもマンションの一室でしょ。


「ちっ……5階にこんな隠し部屋あったかしら。マナも薄いし…………。ねえ、アンタ……ミヤナギ・マスミ? だっけ?」

「あ、はい」

「帰還硝石とか持ってない? お金なら払うから」

「……なんですかね。それ」


 ……だからさっきからこの人は何を言ってるんだろう。

 お化けとか云々とは別の意味で泣きたくなってきた。言葉は通じてるはずなのに話が通じないってこんなにツライもんなのね。


「ダンジョンにいて帰還硝石知らないって馬鹿にしてんの? ないならないって言いなさいよ」

「あの、だからここはダンジョンじゃなくて……」

「転移トラップ踏んでんのにダンジョン以外に飛ぶわけないでしょ」


 えーん、頭痛いよー。人の話ホントに聞いてくれないんだけど。

 頭おかしい人なのか。なんで呆れ顔で私の方が間違ってるみたいに見てくるの。私の部屋で意味不明な思い込みを発揮しないでほしい。

 そもそもまともな会話をしようとしている私がおかしいのだろうか。さっさと警察に願い出るのが正解な気もしてきた。

 殺意みたいなのはなさそうだし、金銭目的でもなさそう。何が目的で私の部屋のお風呂場に侵入していたのかはわからないけれど、そこは事情聴取とはで明らかにしてほしい。


 よし、と気合を入れて携帯電話を取り出す。

 ……あ、でも警察呼んだとわかったら逆上されるかもしれない。逃げてくれればいいけど、なんかの地雷踏んで殺されたら嫌だ。

 え、どうしよう。出て行ってくれるのを待てばいいのだろうか。


 ちらり、と不法侵入美人を伺い見る。

 こっちをガン見してた。怖いんだけど。


「……なによ、それ? 魔道具?」

「まど……? ただのスマホだけど……」

「すまほ? ……ねえ、さっきから何言ってるの? アンタ」

「ええー……」


 完全にこっちのセリフでしかないんですけども。


 でもそんなことを言って逆上されたら怖いから何も言えない。

 私が沈黙しているのをどう捉えたのか、美人さんは怒涛の勢いでまくし立ててきた。


「5階って言ったわよね。アタシが居たのは37階だったけど、転移トラップ踏んだから予測不能地点に飛ばされた。そこが5階だったのはまあいいわ。下手に下層部じゃなくて助かったくらいよ。でも、そのあとがわけわかんない。アンタ、ここに住んでるとか言ったわよね? アタシの感覚からするとダンジョンに住むなんてありえないわ。そもそもアロイラのダンジョンは何回も潜ってるけど、5階にこんな場所があったなんて聞いたことがない。それにマナもすごく薄いし魔物(モンスター)の気配が微塵もない。加えて、アンタ。ダンジョン舐めてるとしか言えない装備に意味不明な言動。帰還硝石も知らないし、すまほ? とかいう見たこともない道具を持ってる。……ハッキリ答えなさい。嘘偽りは許さない」


 ヒュン、と風切り音がした。

 鈍色にびいろに光るそれを理解することを脳が拒絶する。


「アンタは『何』なの。そしてココは『何処』なの」


 平和な日本に住んでて、まさか長物で脅される日が来ようとは夢にも思わなかった。


人の話を聞かない系女子オリヴィア

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