推しが押してくる ━番外編2━彼女のセンス
はじめましてさんも2度目以上ましてさんもこんにちは。
神尾瀬 紫です。
本編《Sweet Sweet Smile》が停滞しておりますが、少しずつ書き進めてはおります。
が、先に短編が出来てしまいました。
想像して苦笑いしていただければ幸いです(笑)
「お前さ、彼女に自分の着るものとか選んでもらう?」
仕事後の飲み会の席で、叶多が隣に座る陽翔に話しかけた。
「あ~、そういうセンスあんまり合わないから自分で選ぶけど。叶多さんだって服の好みうるさいじゃん。それでも選ばせるの?」
ウーロンハイを傾けながらニヤニヤと笑う。
「基本的にはセンスが似てるし、センス以前に似合うのを探してくれるからたまに選んでもらうと面白いんだけどさ。」
そこで一度言葉を切り、茄子のわさび漬けを口に運ぶ。
もう一切れ箸でつまみ、自分の取り皿に乗せた。
「この間、パンツを買ってきてくれたんだよ。」
レモンハイを喉に流し込みながら、ツンツンとそのわさび漬けを箸でつつく。
「ま、面白ネタ的な靴下とかよく履いてたりするし、オシャレをするときのセンスと面白がる時のセンスが若干かけ離れているというか。」
「叶多さん。何が言いたいの?」
要領を得ない話し方に、陽翔があきれ始めた。
眉間にシワを寄せた苦笑いという複雑な表情を見せた叶多は、要点をまとめた。
「この間買ってきたパンツってのが、なんと、わさび柄で。トランクスなんだけど、前の真ん中に1本わさびのリアルなイラストがあって、花札の短冊みたいに本わさびって書いてあるやつなんだよ。」
「わさび?」
「そう。全体的に緑で。わさびがまさにそこに描かれてるわけで。」
叶多の微妙な表情と、同じような表情が陽翔の面に浮かぶ。
「なんか、しみて痛そうだね。」
「まぁそれもあるんだけど、絵的にリアルなわさびが1本真ん中にあんのよ。」
叶多が、テーブルの下の胡座をかいた足の付け根辺りで形を手で表現する。
がっつり想像出来た陽翔が、今度こそ同情するような顔をした。
「それを満面の笑みで彼女に見せられた俺の気持ち、察してくれる?」
「・・・・・・。」
かける言葉が見つからず、陽翔は神妙な面持ちで叶多の肩を叩いた。
END
いかがでしたでしょうか。
短すぎるうえに、少々お下品風味。
しかし、特にトランクスには面白柄が多いですよね(笑)
それでは、またお目にかかれるようにがんばりますので、よろしくお願いします。