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「鍵はヒューマンの持つ魔力だ。君はヒューマンとそれ以外の人種の間に生まれるハーフというものを知っているかな」
あなたついさっき、ドラゴナートのハーフでリザードマンだって言ったじゃない。それくらい普通に知ってるわよ。かつてこの世界にやってきた神様が、青血の乙女の子供達との間に作った人間種。ヒューマン、エルフ、ドワーフ、ハーフリングを含む8種族。どの種族にも特別な力……つまり魔法が与えられたわけなんだけど、ヒューマンは他と比べてもう一つ特別な点がある。他人種との間にハーフを作れることだ。
一時期はヒューマンとエルフ以外の人種は全て滅びたとか何とか言われてたけど、しばらく前から少ないながらもドワーフやハーフリングの生き残りが現れて、時には大移動し、時にはヒューマンとの間にハーフを作りながら数を増やしている。らしい。
「さて、ではなぜヒューマンのみが他種族との間にハーフを作れるのか。それはとても簡単な仕組みでね。種族ごとに与えられた魔法、その魔力。それが、異種族の腹に生まれることで欠損する要素を継ぎ足すからだと言われている」
『いいえ』
何言ってるのかわからないです。
「まあ簡単に言えば、単純な治癒の効果を持つ魔法はヒューマンの魔法にしかない、ということだな」
さっき出したばかりの黒い石を手の中で弄びながら考える。それはつまり、お腹の中で治癒魔法を使われ続けないとハーフは産まれることができない、ということか。
「ちなみに、母親がヒューマンだと母親の魔力を使う為健康体で生まれ、肉体的に頑強で異種の親の血の影響を受けやすく、逆に父親がヒューマンだと自分自身の魔力を使い続ける為肉体的には標準的だが、幼い頃から両親どちらの種族のものも強い魔力を持つ……などという説もあり、統計ではそれは正しい。真相は謎だがね」
『いいえ』
考えるより先に黒い石が手の中から飛び出していた。
それはつまり、ええと、つまり彼女に薬の代わりに治癒魔法を使い続けろということなのかしら。私治癒どころか葉っぱ一枚動かす程度の魔法だって使えないんですけど。それとも使えるようにしてくれるとか? 無理でしょ、あなた魔法のこと詳しくないって言ってたじゃない。
魔法を知りたくて、魔法を使えるようになりたくて。その私に、魔法を使えと。
あなたが教えることができるわけでもない、魔法を。
「そいう反応か。きみは面白いな」
『いいえ』
石を拾わず、指先でコツコツと叩く。何を言いたいのかわからないけど、こちらは面白くもなんともない。
話を進めなさい。疾くに。
「まあ、もう少し考えてみろ。腹の中の赤ん坊や、普通のヒューマンが魔法を使えるか? 魔力があるヒューマンは珍しくもなんともないが、魔法を使えるヒューマンはほとんどいない。治癒の魔法が使えなければハーフの子供は生まれない……なんてそんなはずがないだろう? ヒューマンの魔力とは、それ自体に癒す力が備わっているんだ。治癒の魔法というのはそれを効率化するにすぎないんだよ」
『いいえ』
初耳だ。そんなの聞いたことがない。だけどそれが本当なら、ヒューマンはもっと魔力を大事にするんじゃないか? もっと誰もが、魔力を扱う訓練をしてもいいはずだ。ハーフの親がどちらかによって魔力の違いがあることの統計を取ったというのなら、その魔力が持つ治癒の力だって決してこの人だけが知ってることじゃないはずだろう。だけどそんなことは聞いたことがない。ならそれは、とてもじゃないけど信じられない。
いや、この人はついさっき、確かに言っていた。毎日魔力を練っていれば喉が治ると。私はてっきり、魔力による裂傷だからなのかと思ったけど、それは関係ないということ?
違う、いや、そうじゃなくて。
なんで私、否定しようとしてるの?
いいじゃない、魔力による治癒。それだって立派な魔法じゃない。さっき私、喜んだわ、『崩声』がまるで魔法みたいだって。私にも使えてたんだって。
そうじゃない、そうじゃないの。ただなんだか変な既視感があって。嫌だったの。
何がそうじゃないのかわからないわ。否定するなら、今確かめれば良い。
息を、吐く。
「っふー」
「うん、どうしたんだ?」
「……すー……うぐっふ、ごほ、げほがほ……!?」
「本当にどうした」
の、喉が痛い。吐くときも違和感がなかったわけじゃないけど、吸うと余計にひどい。痛い。
正直、この痛みじゃ集中どころじゃない、けど、どうせ喉を治すのには必要な作業だ。深呼吸はもともと集中の為に使っている動作というだけで、必要だったわけじゃない。いま、深呼吸なしで魔力を練れるようになる。右手を胸の下に当て、左手をへその下に。呼吸はしない。手のひらから伝わる体温で、全身に循環する流れを創る。そんな想像をする。
想像する。両手のひらの熱が合わさってお腹の中が燃える。
想像する。循環する流れがお腹の中で風車を回す。
想像する。熾き火と風車。魔力。喉。
さすがに『治る』想像はできないから、ただ燃え上がる炎が喉を焦がすように。蝋燭の傷が、火にあぶられて溶けるように、そんな様子を想像する。
……だめだ。うまくいかない。集中が乱れる。余計な想像は省いて、今はただ魔力を練ることに集中しよう。
風車を回す。回す。回す。
「魔力生成反応……なるほど。確かめるのか」
いつも読んでくださってありがとうございます。




