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いつも読んでくださりありがとうございます。

「ふむ、魔法使いになりたい……ねぇ。ずいぶん難儀な夢を持ったもんだ。しかもその輝かしき門出に最初っから吝嗇ケチがついちょる。熊に襲われたあげく孤児になっちまった子供を拾うなんて……ここで私に会わなかったらどこまで連れてく気だったのやら」

『いいえ』


 出会えた以上そんなもしもを論じてもしょうがないでしょう? と。

 そもそも私のことは今関係ないじゃない、今にも死ぬかもしれない、生きる気がないと言われるあの子をいつまでほっておいているのも怖いのよ、あの子のこと話さないと意味が無いわ。そんな気持ちを込めて見つめてみる。請われるままに身振り手振りで説明してた私も私だけど、そこはまあひとまず置いておいてもらうとして。

 でもまああえて言うなら……うん、多分ずっとかな。


「物珍しさで見てるわけでも何かを探るわけでもない、お前さんかわってるな」


 そんなに顔を見られるのがなれないんだろうか? 変なの。

 彼は……顔を見て改めて男性だと思ったから『彼』と呼称するのだが……多分、とても偏った価値観を持っている。それは、顔を怪我をする人間は特殊な人間だけだ、と言う事だ。いや、あるいは目に見える場所に大きな傷跡を抱えている人間は珍しい、と言う事だろうか。

 それは一面では正しい。

 目につくような場所に大きな怪我をすると言う事は、大概の場合そのまま死んでしまうと言う事を意味している。そしてそしてそういう人は生き残ってもあまり表に出ては来ない。これは単なる事実だ。じゃあ『表』ってどこか、と言えばそれは『不特定多数の知らない人間と関わる場所』だ。つまり表舞台。こういう交易路の真ん中にある休憩所なんかはそのまま『表舞台』と言っても良いけど、私たちが普段暮らしているような村なんかではそれは極めて限定された場所や状況になる。例えば村長さんの家とか、行商人が着たときだ。じゃあそれ以外のときは? 


 割と普通に村の中を出歩いている。


 当然だろう。死ぬような大けがって本当に大事だから、村中総出で治療に必要なものをかき集めたり治療役看護役の代わりに働いたりご飯作ったり、そうかと思えば薪を切ってきてお湯を沸かしたり井戸やら遠い泉やらから水を汲んできて沸かしたり……要するに『子供は見ちゃ駄目!』とか言ってる余裕なんか無いのだ。『きゃー、こわーい』とか言ってる暇はもっとない。よって、誰もが知ってる大怪我の傷跡が残った顔を見て『こわーい』とか言って泣きだすような奴はいない。『生きててよかったなぁ』とかいって泣く奴ならいるかもしれないけど。

 つ・ま・り、顔が変形してるくらいで驚くのはそれこそ彼らのような常に表舞台に立っている人間達、商人や呪い師、薬師などのちょっとした印象次第で商売の正否が大きく変わってしまうような人達ばかりなのである……呪い師が表舞台に立っているのかと言うのはなかなか難しいところだけど、ああいうひとたちは見せ方で自分の印象を操作したりするのも仕事のうちだしね。

 とにかくそんなわけなので、私は『彼』の顔を怖がったりする事は無い。というか彼が気にしすぎなだけであって、彼の顔を恐れる人間なんて世の中そうはいないはずだ。


「なんとなくだ、いいか? なんとなく言うんだが……そういう問題じゃないぞ、お嬢ちゃん」

『いいえ』


 何を言いたいのかわからないのでとりあえず黒い石を出してみる。


「ちなみに喉が潰れてこんな声だが、私は女だ」


 おお!? それはちょっと驚いた。とりあえず私の喉を指差してみる。そこに喉仏っぽいものがあるから私は彼を……彼女を男性だと思ったんだけど……


「これか? ヒューマンの喉仏というものに似てるらしいな。これは男と求愛音を交わすための器官だ。ただまぁ、これが潰れてしまったから私はこうして世捨て人のような生活をしているんだが」

『いいえ』


 そんな話は聞いたことがない。現在世界にいる人間種族は『ヒューマン』『エルフ』『ドワーフ』『ハーフリング』……あと『千年女王』『魔法使い』くらいのものだ。厳密には後ろ二つは『ヒューマン』と同じ種族らしいのだけど、なぜか一般的なヒューマンの寿命を大きく上回る寿命を持っているため別種として扱われる。いや、『千年女王』に関しては偉大なる王を私たちと同じ枠にはめるのがためらわれたとかなんとかあるらしいけど、うちみたいな寒村にそんな詳しい話入ってこないし。

 その上、ドワーフやハーフリングでさえ一時期は滅んだとか言われてたくらいだ。世界の外にはたくさんいるらしいけど、実際のところはわからないし、もしそれら以外の生き残った種族だというのなら、中にいる種族であればどんなものであれ滅びの憂き目にあっているはず。多少見た目が好みじゃないとか気にしないで子孫を残そうとするんじゃ……

 外?


「私は外の世界からやってきたドラゴナート、つまり竜人だ。それも長くハーフであった家系で、一般的にはリザードマンともいうな」


 ……色々聞きたいことがあるけど、とりあえず一個だけ。

 その一般的って、いったいどの一般の話なのかしら?

リザードマンがハーフドラゴナートなんて暴論ぶち込んだの私が初めて……なわけないか。きっとだれかの二番煎じですね。

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