14-4
「15分前にモスクワ大使館から入った情報によると、クレムリンはGRUスペツナズにより制圧され、大統領の安否は確認できていない。反乱軍の指揮を取っているのはスヴァロフ中将…いや、首都が陥落した現在こいつらが新たな政府軍な訳だが。今もモスクワで抵抗を続ける勢力はそう多くない、彼らが1人もいなくなる前にアメリカ大使を救出し、できる限りの支援を行う」
「何故支援するんです?」
「ロシアとアメリカは仲が良いとは言えなかったが、それ以上に中国との関係は悪化していた。このまま戦争が再開してもロシアは無関係を貫くか、実質的にアメリカの味方になるはずだったが、このスヴァロフ将軍が国のトップに立ってしまった場合、こいつは筋金入りの親中派でな、どう考えても面倒臭い事になる」
「では我々が起用された理由は?」
「確かにこの案件は核ミサイルとは関係無いが、たった今エセックスが全速でオホーツク海を北上している理由は簡単だ。モスクワの抵抗勢力が全滅する前に駆けつけられる位置にいる特殊部隊は俺達とチーム2だけ、戦力不足だよ」
ブリーフィングルームには666小隊の他にシールズチーム9とCIA組、666小隊は現在CIAのSOGチームの一部として組み込まれているためその名前が使われる事はない。実質、ここにいるのはチーム9とSOGの2個部隊という事になる
「まぁ仕方ないだろう、中国朝鮮連合軍だけで十分だってのにロシア軍まで追加されたら大陸への上陸が困難になる、そうなったら核ミサイル排除なんてやってられなくなっちまう」
アクリッドが一通りの概要説明を終え、部下に地図を要求、作戦説明に移るべくホワイトボードに貼り付ける。地図を用意、磁石を何個か入手した所で全員に顔を向けた
「SVR捜査官アレクセイ・バザロフの顔を覚えてるのはいるか?」
SOGチームのほとんどが手を挙げる。アクリッドは満足し、モスクワ市内地図の一点に緑色の磁石を置いた
「SVR本部は既に陥落しているが、一部の人間は脱出に成功し、我々に助けを求めてきた。救出する価値があるのはアレクセイ・バザロフ他数名、市内のホテルに立てこもった彼らをSVR直下の秘密部隊、通称ザスローンが防衛している。チーム9が大使館の防備を固めている間、SOGには寄り道をして欲しい」
マジかよ、と、室内の半数の人間が顔をしかめる
「市内はどんな状況なのでしょーか?」
「まるっきりの戦場だ。首都防衛部隊は今も抵抗を続けている、アメリカ空軍が現地に展開できるかは不透明だが、制空権は必ず確保するとは言っていた」
「スタート地点はどこに?」
「この後ヘリでウラジオストク、ジェット機でモスクワ近郊の空港まで送って貰って、そこから先はまたヘリになるが、パッケージのいるホテル付近まで近付くのは危険すぎる。最低1kmは徒歩で移動する気でいてくれ」
質問しまくっていたシオンの携帯電話に着信。耳に当て、オッケと返答、2秒足らずで切る
「移動手段の準備完了です、今すぐ出ないと無駄が出る」
「わかった。ひとっ飛びするぞ!全員気を引き締めろ!」
「……空輸…」
「大丈夫だ墜落しない!スティンガーも撃たない!」