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「わたしゃ海軍じゃないですけどね!一応言っときましょうか!ようこそUSSエセックスへ!」
甲板へ降り立った直後、シーホークの爆音も収まらぬうちにシオンが言う。先に乗艦していた部下2人と合流、何らかの指示を与えてすぐに戻ってきた
「男の方は話した事ありますよね、あのすげえシャツ着てるのがジェラルド。半分寝てるのがマリアン」
シーホークをどかして、空いたスペースにチヌークが飛来。吊り下げていたコンテナを甲板に接地させ、作業員が素早く扉を開けるとシグと正宗が駆け込んでいく
「そして改めまして強襲揚陸艦エセックスです。乗組員約1000人、乗艦している海兵隊は現在約500人。我々、つまりタスクフォース240の目標が達成されるまで滞在する事になります、人間関係を作る所から始めてください。それ以外の戦力は皆さんスリーシックス、シールズチーム9と私ら3人」
スバルインプレッサWRX STI TypeSがのっそりとコンテナから顔を出し、完全に抜け出た直後、急加速でエレベーターへかっ飛んでいった。かなりエンジンを噴かしたようだが、さすがにヘリコプターの爆音には勝てなかったようだ、何も聞こえない。続いてストライカーICV、ごく普通に徐行でインプレッサの後を追う
「チーム9、覚えてますよね、フランスで襲ってきたあいつらですよ」
「なるほど……」
「心配でしょうが大丈夫、前日に会ってきましたが、引くぐらい人間のできてる連中でした。結局は後付けの思考回路なんですが…まぁ要するに、訓練段階でそういう洗脳を受けてます」
コンテナをぶら下げたままのチヌークの離脱を見届けてからシオンは車両の後を追い、部隊に指で追従を指示しながらラファールが続く。全員がエレベーターに乗った時点でそれは動き出し、やがて下層へ到達。航空機格納庫にはたくさんのシーホークと若干のハリアー、それからセリカとGT-Rが納められていた。インプレッサはセリカの横へ、ストライカーは更に下層の車両甲板へ
「っとお…?」
格納庫は素通りして司令部区間へ、とシオンは思っていたようだが、内部は戦闘中かってくらい慌ただしかった。今乗ってきたものとは別のエレベーターはフル稼動、こっちにもハリアーが向かってくる
「姉さん!」
「ジェラルドくん、何があった?」
「クーデター!」
乱れ気味な青い髪、同じ色の瞳、表情から感情は感じられないが固いイメージはなく、不思議ちゃんみたいな雰囲気。白いタンクトップの上からダッボダボな黒のセーターを重ね着しており、左右どちらかの肩は常に露出している、そんな格好
の、女の子がプリントされたシャツ、を着たメガネ男である
「モスクワのアメリカ大使館が孤立しました、北極海を強行突破してモスクワへ向かいます」
「モス……あぁなんだロシアかよかった…」
「姉さん、よくない」
「……よくないっ!!!!」
シオンが叫んだと同時、エセックスが回頭を始めた。すごい勢いで艦が傾斜していき、慌ててサイドブレーキを引いたインプレッサがズザザとスライド
「とにかくブリーフィングルームへ、僕も今聞かされたばっかだから。あ、どうもジェラルドと申します、こちらはフェイたそ、あっちがマリアン」
「紹介はさっきしたし嫁さんはどうでもいい、ブリーフィングルームどっちだ」
いや嫁という訳では、とか呟きつつジェラルドは先導を開始。艦の傾斜が収まったあたりでシグが合流し、正宗は格納庫の端にあるドアを開けていたら走ってきた。重厚な気密扉を引き開けると、典型的アメリカ軍人が現れる
「おっと…」
「ああ大丈夫です、話は奥で。丁度いいんで紹介しましょう、こちらコールサインアクリッドさん、チーム9隊長です」
白い肌、角刈りの茶髪、ガッチリしているが重そうには見えない身体。完璧である、鬼訓練で作られた殺人マシーンだ
「どうも、この距離で会うのは初めてかな。アルヴィンだ、この間の事は……」
「まぁこの際それはどうでもいいわ、早く行きましょう」
「どうでもいい、そうか」