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ワールドリフレイン  作者: 春ノ嶺
止めた歯車、三度回る
6/37

14-2

「よっし!まだ行ける!まだ勝てる!」


「何に」


車庫から戻ってきたシオンは満足したように言いながらソファに座り、緑茶の入った湯呑みを持ち上げてラファールへ手招き、ラファールはいつものようにハチミツを持ってきた。出たよアメリカングリーンティー、とか思ってる間にシオンはハチミツを湯呑みの中にぶちまける


「どうすかなんか面白い事とかは」


「面白い事限定かよ。特にはねえぞ、ガキんちょ組の片割れが数2で0点取ったが教える側からすりゃピクリとも来ねえ」


おいおいスナイパーがよぉ、言った後さっきまで緑茶だったモノを一気飲み。思わず顔をしかめるが、リアクションしたのは明梨だけだった。考えればアメリカ人とドイツ人とフランス人ハーフ、お茶に調味料を入れる事に抵抗のない連中である


「そういやこんな話がある、人生初のコスプレでテンション上がった所を部下に盗撮された腐女子がいた」


「だからその話はもうやめろ!」


「マジで!?見たい超見たい!!」


「黙れ黙れ黙れ黙れ!!」


シオンがグリーンティーを片付けると同時に湯呑みをすべて回収、テーブルを空ける。で、紙を1枚置いた


白紙の見積書である


「それで要件は?」


「そう、そうだった、忘れてた」


忘れんな


「明梨さんを連れてきたのに確たる意味は無いです、心臓直近に埋め込まれていたカプセルは無くなっているのを確認しましたから。ですが無関係ではありませんよ」


ラファールは紙を出したがシオンはタブレットを出した。部屋の有様といい意外とアナクロなのかな、とラファールを見たらちょっと悔しそう


「戦争再開は来週あたり、もしかしたら今週末になるでしょう。これは確定事項です、こちらから仕掛けますから」


「マジで?」


「ほっといたらまた侵攻されるのは明らかですんで、将来の覇権争いも踏まえて、アメリカは先手を取り中国の侵攻意欲を挫きます」


タブレットPCを操作して画像ファイルを表示させる。高精度の衛星写真のようだ、一般向けに提供されるような荒い画像と違い、樹木に付く葉っぱの1枚1枚まで鮮明に写っている。場所はアジアっぽい森の中、何人かの朝鮮軍兵士がトラックにコンテナを積載しようとしていた


「これはその準備過程で撮りまくった写真の一部」


もう1枚、少し巻き戻った写真が映る、朝鮮軍と違う風貌の兵士が別のトラックから荷物を下ろしてコンテナに詰めようとしていた。別になんでもない荷物の受け渡し風景、なのだが、唯一問題があるのは荷物に描かれたマーク


放射能のアレである


「この画像だけではサイズが分かりにくいですけど、この箱の中に核弾頭、もしくはそれに似た放射性物質がひとつだけ入っていた場合、威力はツァーリボンバを超えると専門家が判断しました。現在これは中国南西部にあり、陸路で朝鮮国境へ向かっていると推測されます」


「ツァーリボンバって…そんな重たいもの作ってどうするのよ」


「そうなんですよね、今の核ミサイルってのは1基のロケットに複数の小型弾頭を積んでて、大気圏再突入後に複数目標へ1発ずつ撃ち出すタイプなんですけど」


画像を閉じPDFへ切り替え、ミサイル版散弾銃マーヴシステムの解説図が表示される。弾頭ひとつひとつが誘導能力を持っていて、目標上空でそれが拡散する様はなかなかに美しい


続いてツァーリボンバの説明。ソ連が作って国内実験に使用した世界最大の核爆弾、殺傷力のある爆風は半径58キロメートルに及び、衝撃波は地球を3周した。しかもこれは威力を半分に抑えての結果だ


「廃れた熱核弾頭ではありますが、そもそも朝鮮軍が作れるものはヒロシマレベルの自由落下式爆弾だけだったはず。更に、かつてテポドンを製造していた施設がフル稼動を始めた、そう3ヶ月前から。今そこで作られてるのがコレを搭載するための弾道ミサイルだとしたら、やはり朝鮮軍にはオーパーツ。それと諸々から寄せ集めた情報、そしてタイミングを踏まえた場合……」


ちらっと、シオンが明梨を見る。その時点でラファールは顔をしかめ、タバコの煙で輪っか作ってたりしてるウィルに手招き


「3ヶ月前我々が関わった”あの設計図”が用いられている可能性が高い」


煙を吸い込ませていた空気清浄機ごとウィルがやってくる。来たと同時に明梨を見ながら一服、煙は機械に向かっていった


「それで私達は何をすれば?」


「これを阻止するためだけのタスクフォースが編成されますから、戦闘力を提供して頂きたい。シールズを主力とする予定ですが、ちょっとCIA本部からの無茶振りが入りまして。『現場で直接指示できる部隊を割り込ませろ』」


なるほど、とラファール。ボールペンを掴みつつウィルを指差し


「全員にレベル2で召集かけて」


「はいよー」


見積書を手繰り寄せる、部隊メンバーのコールサインをずらっと連ねる


「最初から関わってたんだから直接関与する余地くらい寄こせ、ってのが偉いさんの主張。開戦までに戦力整えろとかつって、アテがなければぶち切れてる所でしたが」


「長期になるわね、大丈夫?」


「お金の心配はなさらず!」



じゃーん!と、シオンは明梨を紹介するように両手を広げ


「日本一のスポンサーがおります!」

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