17-5
時間になった。
『ファイアファイアファイア!』
一度たりとも見つからなかった状態からの包囲攻撃だ、相手は死ぬ。数秒前まで静かだった森がけたたましい銃声に包まれるも、すべてこちらの発砲で、中国兵が撃った弾は1発も無い。間も無く誰もいなくなり、また静かになって、ラファールの指示を待たず数人が田園地帯を監視できる位置まで走っていく。
「クリア」
『村の様子は?』
『終わった後だ、倒れているのはすべて中国兵、よく見えんが首を飛ばされたらしい。住民はほぼ逃げたようだが、子供が1人、中央の広場で立ち尽くしている』
『訳わかんないけどそれは確実にまずいわね。ヒナメルに保護させる、特徴は?』
『髪が青い、女性だろう。地面に届くほどの三つ編みで白のタンクトップ、レースを寄せ集めたような膝上のスカート』
「ちょ……!?」
『レイヤースカート』
『恐らくそれだ、色は青……っと」
一息ついていたネアだったが、それを聞いた瞬間に慌てて走る。見通しの良さそうな場所では正宗が喋っており、隣へ急行、双眼鏡を奪い取った。
「どうした?」
「ああまずい……」
写真で見た通りの外見である、間違いない。アレに近付くのは危険だ、伝えるべきなのは確定的だが、ストレートに言うのは面倒だし
『チームナインからスリーシックス、増援の接近を感知した、防衛線を張るぞ』
とかなんとかまごまごしていたらこの有様だ、ヒナメルが孤立しかけている。部隊が一斉に陣形を転換、山に敵を近付けない布陣を敷いていく。別行動の2人は急かされた、早く保護しろ、という方向で。
「てーへんだてーへんだ!」
ちょうどいいのが来た。
「シオンさん、部下の2人は?」
「うん? エセックスでの情報整理に当ててますが」
この場にいないか。
今日の彼女はM4装備、ここからアレを撃つ能力は無い。
「ちょっと走る準備しといてください、村で一悶着あります」
「ふむん…?」
「理由はそのうちわかりますんで」
怪訝な顔をされるも詮索はしてこなかった、そりゃあ向こうは詮索されたくない隠し事の塊だ、こっちの詮索もしなかろう。
今はまたぞろやってきた中国兵への対応だ、今度は敵も撃ってくる。田んぼの向こう側に現れたのは3個小隊、複数の高機動車を盾にして前進してくる。
『はい今』
距離300m、射程に収めるなり1台のタイヤに12.7mmが突き刺さって動かなくなった。他は回避運動を取るも同じ目に遭い、やむなくその場で射撃を始める。こちらは森の中、着弾するのはまったく見当違いの場所だ。そうしたら後は意味の無い攻撃のために頭を出した中国兵を順番に撃ち抜いていくだけの作業である、やはり彼らも大した説明を受けていないらしい、慌てすぎじゃないのか。
『ヒナとメル、村に入る』
なんて、やっていたらそういう通信が聞こえてきて。




