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ワールドリフレイン  作者: 春ノ嶺
醜い悪意と大掃除
30/37

16-3

武器庫博物館2階に上がってすぐ、猛烈な制圧射撃に晒される事となった。分隊4人を左から迂回させ、自らは最低限の反撃をしつつひたすら待つ。剣や鎧や金銀財宝が弾け飛び、そんなものを気にしている場合ではないと分かっているがそれでも考えてしまう、ああもったいない


「大尉!これ持ち帰ったらどうなります!?」


「窃盗罪どころか国際問題だぞ!指一本触れるな!」


やがて銃撃がやむ、転がるように物影から出て前進、1部屋ぶん進んだ所でまた制圧射撃。迂回させた分隊と合流し、スタングレネードを用意


「フィエンド!何人倒した!」


「1発も撃っていません」


「何…?」


側面攻撃を受ける前に迂回を察して退いたという事である。敵の数は変わらない、ただ場所が変わっただけ。ピンを抜いたグレネードを敵のいる方向へ放り込んで前進待機


「ニッケル!戦闘に参加しなくていいから背後を常に監視しろ!」


ボッ!と炸裂音、次の部屋へとなだれ込む。スタングレネードをマトモに喰らったらしいAN94を持つ男を見つけ、目も耳も使えないだろうに当てずっぽうでこっちに銃口を合わせてきた。引き金を引く前に頭を撃ち抜いて、これでようやく1人。動かなくなったそいつへ駆け寄って胸のエンブレムを確認する


「アクリッドからラファールへ!敵はGRUだ!」


『了解。地上階は片付いてる、4人そちらに送る』


制圧射撃はまだ再開されない、もう一押しとばかりにライナーを前へ。ミニミマシンガンが弾丸をぶちまける、跳弾もやばいが敵は黙り込んだ


「1階から増援が来るぞ!撃つなよ!」


言い終わったか否かというタイミングでそのオレンジは現れ、片腕でG36Cを構えたまま左手でコンバットソードを引き抜きつつ左脇の部屋へと消えていく。やや遅れてシオン、ルカ、HK45のみ持ったメルが続き、ミニミ以外の発砲音が上がり始めた所でライナーに射撃をやめさせる


『1部屋クリア、側面攻撃します、前進してください』


後方監視に2人残し次の部屋へ。大半は既に後退し、殿として残ったであろう2人と極近距離で撃ち合いになるも、次の部屋からいきなりネアが現れ、2人まとめて後頭部を撃ち抜いた


「人間かよ……」


「今回は味方だ、安心しろ」


陣形内部に入り込まれてめっちゃくちゃにされたのはもはやトラウマである。左翼に戻っていったネアを見送りさらに前進、そろそろフロアの端が近い


「どうします?」


「ザスローンとの約束がある、降伏勧告だ」


作戦開始前では大統領官邸の防衛をしていると予想されていたので、そこを陥落させてから行う予定だったが、こうなっては仕方がない。おそらく最後の部屋であろう場所の手前であらかじめ用意しておいた拡声器を口元で構える


「こちらアメリカ海軍シールズチーム9だ!武器を捨てて両手を上げろ!これ以上母国を荒らし回るなんて望んでないだろ!」


射撃停止し思いきり叫んだ。聞こえたらしく、ひとまず銃声が止む


「ザスローンからの願いだ!真っ当な扱いを約束する!」


が、静かになったのは一瞬だけだった


「後方に敵!」


再び猛烈な制圧射撃、迂回したのか隠れていたのか、背後を守らせていた部下も攻撃を受け始める。SOGの4人が後ろに回ったのを見て2個目のスタングレネードのピンを抜いた。突入準備のサインを出し、壁に張り付いたまま後ろ手にスロー


閃光、全員が走り出す。もはや何のことはない、ロクに身動きも取れない相手を順番に撃っていくだけ。唯一、最後の部屋の一番奥にいた男は目が見えているようで、物影に隠れつつライフルを向けてきたが、右腕に弾丸が突き刺さって武器を取り落とし、それでも諦めずハンドガンを左手で掴む


ブスブスと胸へ2発命中、反動で崩れ落ち、壁にもたれかかるように倒れた


『シオンからアクリッド、後ろは片付いた、そちらは?』


まだ片付いてはいない、まだ生きている


「武器を捨てろ、頼む……」


M4を突きつけながら、虫の息となりつつも銃を手放さない男へ言う。

そいつは荒い息を吐きながらにやりと笑って、ハンドガンの銃口を自分の頭へ


「駄目だ!やめろ!」


弾丸1発分の銃声が室内に響き渡った。

カランとハンドガンは床に落ち、残ったのは死体がいくつか


「…………こちらもクリアだ、武器庫制圧」


『了解。ヘリが到着しました、至急、大統領官邸へ』


通信を終了、部下の人数を数える、1人も減っていないし、負傷もない


「行くぞ、まだ終わってない」

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