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ワールドリフレイン  作者: 春ノ嶺
醜い悪意と大掃除
28/37

16-1

「これが大統領府庁舎周辺の地図」


ロシア入りから48時間、ようやくアメリカ大使館と隣のレンジャー陣地は孤立状態から脱出した。大使館の周囲にはハンヴィーと輸送トラックが並び、続々とテントが設営されつつある。展開しているのはエセックスに乗っていた海兵隊500人と、日本の沖縄で出陣準備をしていた残り400人を合わせた1個海兵隊遠征隊である。空港のひとつを借用して空軍基地も設置され、制圧されたモスクワに楔を打ち込む準備が整った。出撃は30分後、目的地はクレムリン


「既に空軍による爆撃が始まっている、迫撃砲部隊も前進を始めている。だが中心部は見ての通り文化遺産が集中しており、多少の被害はやむなしと向こうさんは言ってるが、更地にするのは多少ではないな。という訳でクレムリン内部ではアパッチロングボウによる30ミリチェーンガン、及びハイドラ70ロケット弾の支援しか受けられない。マリーンが準備完了と言うまで突入はするな」


PMCとは次元が違う物量、整った指揮系統、ドスンドスンと遠くで響く爆撃音。最低限の補給で中国大陸を横断しろとか特殊部隊の襲撃から逃れろとか無理難題を押し付けられる訳でもなく、支援が受けれないと言いつつしっかり戦闘ヘリを用意、しかも戦況不利となればどうせ爆撃して更地にするんだろう。SOGのみならず、ここにいる全員がクリスマス気分である。唯一、脇で見ている明梨はドン引きしているが


「レンジャーには前線基地の防衛を任せるので、投入戦力は第32海兵隊遠征隊とタスクフォース240のみとなる。チーム9は南のモスクワ川から、SOGは海兵隊と共に北東の赤の広場から突入。まずチーム9が城壁を乗り越えて陽動攻撃をかけるので、SOGは一拍遅れたタイミングで博物館近くの塔に登り、そこでしばらく航空管制を行うCCTを護衛する。アパッチの支援を受けつつ海兵隊遠征隊は制圧作戦を開始、城壁内全体の安全が確保され次第、ロイとヒナの両名を監視兼護衛として残し大統領府及び官邸を包囲、降伏勧告を行ったのち内部を制圧する。官邸にはおそらく大統領とスヴァロフ将軍、そして旧シャリーアのトップでありデトロイトテロの首謀者、通称スティグマがいる、もしくはいた。今どうなってるかは突入してみないとわからん、だから撃つ相手はちゃんと識別しろ。それからもう1人、確保したい人物がいる、ミス葛城」


と、明梨に話が振られる。ワンピース姿の場違いな彼女はホワイトボードに1枚の写真を貼り付け、指差しながら全員に向き直る


「鈴木正彦、私が支援するNGO団体のリーダーです。彼はクーデター発生直前に大統領と会っていました、何をしていたかは不明ですが、聞くところによると中国共産党のメッセンジャーをしていたとか。もし彼を保護できれば、例の核兵器について、朝鮮軍による輸送を妨害するよう共産党に要求できるかも」


「本人がそれを拒否する可能性は?」


「無い、あいつのサイフに金を入れてるのは私だもの」


「でしょうね」


という訳で目的は決まった。大統領とスヴァロフの身柄確保を主として、もしいたらスティグマ、可能であれば明梨のヒモ男


「クレムリンまでは車で移動だ。見ればわかる通り空軍が手当たり次第爆撃しているが、散発的な戦闘が起こる可能性はある。制空権内だからといって気を抜くなよ、よし出撃準備!」


「「ウーラー!!」」


「うおっ!」



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