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「情報をくれ」
SVR本部敷地内からたった100メートルじゃあマンホールから出てくる所見られちまうかな、とか言いながらライナーが蓋を開けたがそんなことはまったくなかった。いや実際問題敵兵はいたのだが道の端っこに転がっており、生きたまま待ち構えていたのはザスローンの5人だけだった。そいつらはライナーを引っ張り上げ、開口一番そんな事を言う
「…………ここは安全か?」
「安全じゃないな、先導する」
8人全員を引き上げてからマンホールの蓋を元に戻し、ついでに敵兵の死体を自然な殺され方をしたような配置に移動。アメリカ大使館へ歩き出した
本部は…結構な勢いで燃えている
「つってもまだ中身見てないんだよ、そっちはどうだ?」
「少なからず中国の介入あり。このクソ野郎に覚えは?」
「……君そんな汚い言葉使うタイプだったっけ?」
「それ以外に表現方法がない」
ルカのタブレットがライナーに渡る。保存してあるのは例のページのスクリーンショットのみだが、アメリカ人にとってはそれだけで十分だった。一瞬さっきのヒナみたくぶち切れそうになるも踏みとどまる
「おうロシア人、正式に俺らの仲間入りだ」
そう言ってタブレットの画面をザスローン隊長に見せ付けた。普通のロシア人ならピンと来なかっただろうが、そこは対外政策に深く関わる秘密部隊の人、見た瞬間に顔をしかめた。タブレットをルカに返し、今や敵地となった大統領府を仰ぐ
「つまりなんだ、アメリカで4000人殺したテロリストがロシアにやってきて、この24時間少しで1万人死なせて、今も着々と死人を増やしてると」
「ああそうだ、目標は同じっつーことだよ。どうする?」
「お前達はこの後あそこに踏み込むんだろう?なら俺達のやる事は別にある」
この先まっすぐ、大使館まで敵はいない。言いながらザスローンは先導をやめる。一応名前を聞いてみたが、案の定教えてくれず
「クレムリンにはGRUがいる、が、奴らはここ数ヶ月の酷使でかなりの打撃を受けている。一昨日撃ち合った時にはもう残り10人程度、もう一度叩けば潰れるだろう。それを踏まえた上で、ひとつ提案があるんだが」
「上を切り落とせば降伏する可能性がある」
「ああ、わかるか?」
ついさっきまで仲間だったザスローンほどではないものの、我らがスリーシックスも3度ほど彼らと絡んでいる。20人か30人ばかり消耗に加担してもいるが、できた人間だというのはわかっている
「あのクソ野郎の行き先は調べておく」
それを最後にザスローンは離脱していった。アレクセイも足取りは把握していないらしいが、拠点はどこにあるのやら
「とりあえず大尉と相談だな、帰るぞ」
「ピーナッツバターの件も言っといて」
「それはどうにもならん、諦めてくれ」




