15-1
トースト、レタスとトマトのサラダ、牛乳、それと目玉焼きとベーコンとベーコンとベーコンのプレート
「「…はぁ……」」
「なんで自国の朝食見て溜息ついてんだこいつらは」
ガラスの無くなった窓の側でタバコを吸うウィルが言う。大使館ロビーの中央に置かれたテーブルにはSOGとチーム9人数分の朝食が並べられ、その隣にはクッキングストーブを片付けるラファールがいる。どうやら彼女が調理したようだ、といっても切って焼いただけであるが
「日本のうっすい味付けに慣れすぎたわね……」
「そっすね…今さらこの油ギッシュを朝メシだよーっつって出されても……」
「先に言っとくけど私は言われた通りに作っただけだから」
昨夜はよく眠れたのだろう、勢い良く部屋から出てきたヒナとシオンは早々にげんなりしてしまった。同じ部屋からややふらつきながらメルが出てきて、後はネアとマリアンだが、まだ出てくる様子はない
「寒かったか?」
「いや寒くはなかったよ?どっかの誰かさんが一晩中私を湯たんぽ代わりにしてたからねぇ」
寝起きの3人が席につき、ウィルがタバコを片付け、その辺りで哨戒に行っていたチーム9が帰還した。MREとかLRPとかが主食であろう彼らにとって作りたての温かい食事、しかも女性が作ったならなおさらなのだろう。いい年したおっさん達がYEAAAAAA!!とかFOOOOOOOO!!とか言い出したのを見てラファールさん若干引く
「……なるほど…」
「お前もかイギリス人」
屋根裏の監視所から降りてきた男性陣も椅子につき出す。うちルカが辟易した顔をしたが、概ね黙って食事を開始
食ってみれば食べ慣れた味である、ただし油まみれのベーコン以外
「後の女2人は?」
「ネアさんは仕事始めるまで起こすなと、マリアンはまぁ気にしなくていいです。あとうちのジェラルドは……」
「あと5分で予約が始まるとか言って屋根裏で正座してる」
「蹴っ飛ばしてきます」
トーストをかじりながらシオンが階段を駆け上がる。ちょうど降りてくる所だったアクリッドとぶつかりそうになるも、そんなフラグは立ててたまるかと体を捻って回避、グッモーニンと挨拶しながら消えていった
「今日の予定が決まったぞー」
「風俗街は崩壊してましたよー」
「よーし、ライナーはとりあえず腕立て30回だなー?」
うーいとか言いながら男がテーブルから離れて腕立て伏せを始め、残り少なくなった空き椅子にアクリッド着席。アメリカ人から見れば完璧だがそれ以外にはちょっとアレな朝食をさすが軍人という速度でかき込み、最後のトーストを一口で食べ切ってラファールにグーサイン
「素朴な味だった」
「あの狂ったように塩コショウ振ったベーコンが!?」
調理器具を片付け終えたばかりのラファールが反射的に声を上げ、あ、やっぱそうなんだ、とばかりにSOG全員が頑張って食べるのをやめた。アクリッドは再び立ち上がって地図貼り付け済みホワイトボードを引っ張ってくる
「知っての通り、ここアメリカ大使館とその周辺を除き、モスクワはほぼ陥落状態にある。我々はここを保持しつつアメリカ軍の到着を待っている訳だが、SVR捜査官アレクセイ・バザロフから面白そうな事を教えてもらった。SVRはクーデター発生の5時間前に異変を察知し、国内調査は不得手ながらクレムリンに人員を派遣したらしい。もしSVR本部のサーバーが健在なら彼の集めた情報がアップロードされているかもしれない」
「あいつはどうしたの?」
「死んだように眠っている、そんな疲れる事をしたようには見えなかったが」
気疲れかな、とチーム9側は呟き、いやマジでHP0なんだよ、とSOG側が言う。とかやってる内にパチンパチンと地図に磁石が貼られた、SVR本部に赤、元々丸で囲ってあった大使館に青
「チェックすべきサーバーは2つ、メインサーバーと秘匿サーバーがある。秘匿サーバーの方が遠い位置にあるが、その名の通り隠されているから敵に見つかっていない可能性が高い。メインサーバーは情報量が多いし間違いなく交戦の必要があるだろうから、そちらはチーム9が当たる、SOGには秘匿サーバーを頼みたい」
まぁ特殊部隊と会社員だ、妥当な配分である。アクリッドからラファールへ何らかのカードキーが渡され、ラファールからメルに渡された。マジっすか、という顔
「サーバーが吹っ飛んでしまう可能性があるため、データ回収完了まで航空支援も砲撃支援も使用できない。各員、気を引き締めてくれ」
「「うぇーーーい」」
「……」
「あ、大丈夫、これで締まってるから」




