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ワールドリフレイン  作者: 春ノ嶺
止めた歯車、三度回る
14/37

14-10

「うわっち!!」


正面ゲートを守っていた日野トラックがお寺の鐘みたいに轟音を立てた。ザスローンに気を取られていたら対戦車部隊の接近を許していたらしい、彼らのおかげで包囲網は崩れつつあるものの、バリケードを突破されるのは頂けない


「あれぇ?もしかして吹っ飛ぶぅ?」


「いくらなんでもRPGで破壊は無理でしょ、火が点いたけど微動だにしてないし……」


「燃料抜いてないんすよぉ」


「抜いとけーーーーっ!!!!」


ラファールが絶叫するのと同時、日野トラックは閃光を発した。爆発と言うには少し物足りない炎と音の大きさだったが、それでもその巨体は僅かに浮き上がり、バランスを失って転倒した。パソコンのモニターに目を移す、正面の敵が一斉に前進を始めている


「そっかー、軽油って爆発するんだー…いでっ!」


「ザスローン!これ以上の支援はできない!状況を放棄して打ち合わせ通りに!ルカ!ルカルカルカ!」


「叩かなくてもわかってるから」


シオンの頭を1発、ルカの背中を3発ひっぱたき、ラファールは双眼鏡を投げ飛ばしてHK416を拾い上げた。同じようにシオンがMSRからM4に切り替えるのを確認してから、ルカはMK19をトリガープル


40ミリグレネードといえばそれ自体が歩兵の天敵である、M203のようなライフルにアッドオンされるタイプのランチャーが使う低速弾でも敵兵が裸足で逃げ出す威力を持つ。こいつから飛び出すのはそれよりも高速で装甲車も撃破できる威力の弾丸、それも連射


ドスンドスンドスンドスン!と、敷地内に浸入してきたロシア兵ごと芝生が耕され出した


「オッケ、これでしばらく持つ。アクリッド!上の戦況は!?」


『かなりいい感じだぞ!爆装したホーネットが向かっている!』


塀の中に入りたがる敵兵を片っ端から撃退していく。狙い撃つ必要がないのは良いのだが、そのぶん弾薬消費も激しく、すぐに弾倉が空になった。予備弾倉と交換し、1連射の弾数を減らしながら射撃再開する


『アクリッドから全隊へ!あと3分だ!敵を敷地内に入れるな!石ころでも罵声でも使えるものは全部使え!』


「湧いてんじゃねーぞイワンども橋から落とすぞバーカ!!」


「うるせえ!!」


バルコニーにいる全員がようやく揃って発砲を始めた。正門だけでなく塀も一部が爆破され、四方八方で戦闘が激化する


『ロシア人っていつもこんな感じじゃない?』


『中国人の方がヤバかっただろ』


「狙撃班の方々!?仕事してます!?」


『僕の仕事は終わった』


『わたしゃ撃ってるよー』


ヒナのHK417にはサプレッサーが内蔵されてるからか、上部にいるはずの彼女らはとても静か。確認するため上を見ると、ちょうど最後のフランカーが撃墜される所だった


F/A-18スーパーホーネットが待ってましたとばかりに大使館上空に現れる


『来たぞ来たぞタイムアップだ!全員屋内へ退避!』


弾倉に残った弾を適当に撃って処分、ランチャーを放棄して大使館の中へ逃げ込む


ヒュルルル×50、みたいな音がして


「ちょちょちょちょっとバッカ!!」


ドアの内側に移動しただけで満足していたラファールが慌てて壁にぺったり張り付く、すべてのガラスが吹っ飛んだドアの反対側でシオンがなんか言っているがまったく聞こえない。ヘッドギアがなければ鼓膜にダメージを受けていただろう轟音は30秒以上続き、最後の1発が爆発した後、次にやってきたのは静寂


「…………」


外へ顔を出す、衝撃波は感じない


というか何もない、あれだけあった周囲の建物も、残っているのは瓦礫だけ


「……改めて言いますよ?」


溜息をひとつ、そうしたら、シオンがM4のセイフティをかけながら横に並び


ドヤ顔で


「アメリカなめんな」

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