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「彼らの装備は?」
「AKー74アサルトライフルとMPー443ハンドガン、それから大量のクレイモア」
「それで何をさせるおつもりで?」
「もう少しすれば制空権が手に入って爆弾の雨が降ってくる。包囲攻撃を受けたとしてもこのまま耐え続ければ勝てるでしょうけど、この後ここを拠点として使い続けるなら人員も施設も最小限の被害で留めたいってのは事実だろうし。ついでに、あの人達がアメリカにとってどうでもいい存在であり、むしろ邪魔者である事も事実」
迫撃砲攻撃から立ち直った敵部隊は前進をやめ左右に薄く広く展開を始めた。初撃の後も何度か砲撃が行われたが、あれほどの成果は得られなかったように見える
話しながらもシオンとマリアンの手は休まる事無く引き金を引き続け、他のチームはそれなりに攻撃を受けているにも関わらず、こちらは流れ弾らしき1発が窓ガラスを割った程度。CIAエージェントはガチンコの軍人という訳ではないのだが、シオンの射撃精度はバイコヌールで確認済み、そのシオンが連れてきたマリアンも黙々とバースト射撃を続け、ドラムマガジンひとつを空けた頃には誰も顔を出さなくなっていた
「要するに?」
「少なくともアメリカ上層部は自爆させるつもりで彼らを送り出した訳よ」
そのポッカリ空いたスペースにザスローンが入り込む、ものすごい勢いでクレイモアを設置する。他国の武器だろとか使い方知らないだろとかそんな文句は通用しない、僅か1分で5人がひとつずつを設置し、起爆コードを引っ張りながら屋内に隠れた
「そのグレランは?」
「侵入された時用に温存してる」
「オッケ、そのまま待機」
ラファールは双眼鏡を持ち出しながらさらなる暇を要求、座射体勢のシオンの横へ陣取って、ザスローンより少し左へレンズを向ける
「彼らの手柄の誘導と安全の確保を私達がやる必要がある。えーと…マリアンだったかしら、あの辺りに弾幕をお願い」
「了解」
本作戦中初めてマリアンが喋ると同時にM27が正しい使われ方をする。新しくしたばかりのドラムマガジンが中身を高速で吐き出し始め、移動した先の薬室で順次着火、銃口の向けられた方向へすっ飛んでいく。50発ほどで一度休止し、少し照準をずらしてもう50発。着弾点に敵がいたかは定かではなかったが、パソコンの反応を見るにいたようだ、ザスローンの待ち伏せ地点に向け移動する部隊を発見できた
「ラファールからザスローンへ、2部隊ほどがそちらへ向かう」
マリアンがマガジン交換している間シオンも射撃をやめ、敵の移動をそっと見守る。そのまま10秒ほどたった頃、5つのクレイモアが一斉に起爆した
「撃破を確認、次のポイントは予定通り。シオン、進路上に敵がいくらかいる」
「追い払えばいいんすね?」
無数の鉄球がロシア兵ごと周囲を穴だらけにしてすぐ、コードだけ回収したザスローンが左へ移動、包囲網に開いた穴を押し広げるようにして次の待ち伏せ地点へ
「影の薄い戦い方を……」
「そうなのよ、普通に戦うんじゃ駄目なのかって聞いたら駄目って言うのよ」
「なんで?」
「敵と正対するの嫌だって」
「引っ込み思案か!!」




