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「どっせぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!」
『うわああああああああああああ!??』
正面ゲートのバリケードを大型トラックが突き破った瞬間アレクセイは絶叫した、周りにいたロシア兵も叫んだ。バリケード突破の勢いそのまま玄関口まで直行、やかましいブレーキ音を撒き散らしながら柱と屋根をぶち壊して横付けする
「やっほーアレクー!助けて欲しいー?ねぇ助けて欲しいー!?」
「シオン黙ってて!」
衝撃から立ち直った人間から順次発砲を再開していく。ホテルの外は全周に敵兵が配置されていて、ありとあらゆる攻撃を受けた建物はいつかの会津若松城みたいになっていた。上階の方に重機関銃が据えられてはいるが、今の今までよくもってたな、という有様
「状態は!?」
「5名戦闘可能!4名負傷!」
「他はどうしたの!?」
「忘れてください!」
ラファールに手招きされて玄関まで走ってきたアレクセイは完全な手ぶら、ドッグタグすら持っていない。ザスローンという部隊は何もかもを秘匿したがる連中であり、そういう部隊が存在する、くらいの事しかわかっていない。よって他はどうした、といったところで、今頃は骨くらいしか残っていないだろう
「シグ!爆薬ばらまいて!アレクセイ!早く!」
「はいよー!」
爆弾魔が荷台から飛び降りる。手伝いにネアとメルが続き、代わりに負傷者が引き上げられてきた。それが終わらぬうちにC4を使い切った3人が戻ってきて、もたついてるアレクセイのケツを押し上げる
「シオン!出して!」
「ちょっと待ってください!回収部隊は!?」
「俺達さ!!」
日野トラックが再始動、コンクリの瓦礫を乗り越えて正門へ舞い戻る。が、ホテルの敷地を出る前にBTRが顔を出し、バリケードのあった場所を塞ぎにかかった
対するシオン、通信機越しに笑みを漏らし
「日野さんナメんなーーーーッ!!」
質量は攻撃力、それを証明するかの如くトラックはBTRを蹴り飛ばした。とはいえこちらも無傷ではなく、大きくよろめき荷台側面で塀を削り取って
「ひいいいいいっ!!」
続くホテルの大爆発にアレクセイ絶叫、ザスローン隊長もロシア語でなんか言っているが、せいぜい我々への文句だという事くらいしか理解できない
「なんで!!?」
「敵の注意を逸らして時間を稼ぐ!それだけ!」
「ビルひとつ解体する必要はありませんよねそれ!?」
「文句はシグ!!」
轟音と地響きを立てながら斜めに倒壊していくホテルを尻目にトラックは全速へ移行、アメリカ大使館への直行コースを取る。すぐに敵からも逃げ切り、バスバスと2回ヒナが発砲したのを最後に戦闘は終了した
「で、何がどうなってこんな事に?」
「はぁ……ロシア軍全体が新体制の確率を目指し再編を行っていたのは知ってますよね、質を上げて量を減らすという。しかし軍としては規模の大きい方が予算を獲得しやすくなりますから、反発も大きかった。それだけではクーデターが発生する理由にはならないんですが、まぁ何らかの工作があったのでしょう、敵になったのはその旧態依然とした連中です」
「敵と味方の戦力比はどのくらい?」
「いいとこ7対3、モスクワ周辺に関しては間も無く制圧されるでしょう」
上空をフランカーがかっ飛んでいく。攻撃してこないあたり味方の機体だろうが、向かっていく方向は東、敗走中である
「大統領は?」
「さあ、殺しても死なないような方ですが」
と、話していると上空にまた飛行機が現れる。2機編成で現れたそいつらは迅速に積荷の人間をばらまいて、あっという間にいなくなってしまった
「第75レンジャー連隊!」
大量のパラシュートを見ていたら運転席から叫び声が上がった。数はだいたい100人、大使館のあたりに降りていく
「大使見つけたら一旦ずらかるはずじゃ!?」
「そう思ってましたがー!細かく決めてはいなかったなー!まぁわたしらは海軍ですから!陸軍の考えてる事なんてとてもとても!」
面倒な事になりそうだ、SVRに手を貸しただけでも面倒なのに
とか嫌そうな顔をしているとアレクセイが一言
「慣れてるでしょ?」
「あんたのせいでね」




