表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

エピローグ

 翌日月曜日、七時頃。

「おはよう」

 隆靖は起床し、制服に着替えてキッチンへ。

「隆靖、おっはよう!」

「タカヤス、おはよう。早起きしたんなら手伝ってくれない?」

今朝の朝食は四日振りに、実帆子と絵里乃が作っていたが。

「まあ、レタス並べるくらいなら」

 隆靖も快く朝食作りに参加。

「隆靖、それ済んだらお弁当作りも手伝ってくれない?」

「ああ、分かった」

 隆靖がレタスを千切ってお皿に並べている時、

「隆靖、ポニャメラちゃん帰ったけど朝食作ってるんだな」

 七時一五分頃、いつもと変わらぬ時間帯に父が起きてくる。

「なんか目が覚めちゃって」

「タカヤス、これからも引き続き毎日朝食作り、出来れば夕食作り他家事いろいろ手伝って欲しいな」

「出来るだけそうするよ」

「隆靖、ポニャメラちゃんのおかげでカジメン力相当上がったわね」

母も感心してくれた。

「パパも隆靖を見習って家事をどんどん手伝って欲しいなぁ」

 実帆子は朝食を進めつつ父のお顔を見つめる。

「実帆子、おれはもう五〇間近だし今さらいいだろ。隆靖はこれからの時代を生きる若者だから、家事はどんどんやった方がいいぞ。それじゃ、行って来ます」

 父は苦い表情でそう伝えて席を立ち、すみやかにここから逃げて行ったのであった。

     ※

 八時頃、以前と同じく隆靖、千晃、絵里乃に加え、今日は一限から講義のある実帆子も交じって四人で通学路を歩き進む。

「隆靖くん、今朝も朝食作り手伝ったんだね。えらいっ!」

「うん、つい癖で」 

「隆靖けっこう楽しんでたわよ」

「そっか。隆靖くん、この調子で今日の調理実習はちゃんと調理も手伝ってあげてね」

「分かってるって。でも手が荒れてき出したからな」

「はい隆靖くん、家事のお供、ハンドクリーム。これさえあれば手荒れもへっちゃらだよ」

「あっ、どうも」

「隆靖、もっともっとお料理上手になってね」

「タカヤス、これからもさらに家事の腕を磨いていってね。ワタシももう少し楽したいし」

「分かった。俺なりに頑張るから」

      ※

八時二五分頃、ポニャメラは所属する中学部一年二組の教室に登校するや、

「えっ!? あのおじちゃん、この学校の先生だったの?」

「うちもついさっき知った。めっちゃびっくり」

「アタシその先生見た覚えないけど」

「高等部二年の生物担当だったらしいけど、うちも存在すら知らんかったよ」

 金曜の夜、銭湯に現れた女装おじさんの正体をお友達から聞かされたのであった。

       ※

十時半頃。翠比丘高校調理実習室で、一年五組の家庭科の調理実習が始まった。

 今回の課題は親子丼だ。

「あの、俺がやるよ」

「えっ!? 遠藤くん、やってくれるの?」

「ああ」

隆靖は包丁を手に取り、玉ねぎやにんじん、白菜を切る作業をテキパキ進めていく。

「手際良いね」

「やるなあ隆靖」

 同じ班の子に褒められ、

「四日ほど練習したからな」

 隆靖は少し照れた。

(遠藤くん、よく頑張ってるわね)

 保母先生の彼に対する評価もさらに上がったようだ。

「和秀さん、この玉ねぎ、包丁でスライスしてね」

「なんで僕が?」 

「つべこべ言わずにやりなさい!」

「はっ、はいぃ。あの、公文さん、どうして今回は僕に対し、そんなに厳しく接するのでありましょうか? いっ、いてててっ。やっぱり僕には無理ですよぉん」

「和秀さん、ちょっと指切ったくらいで大げさ過ぎ。玉ねぎ包丁で切ることくらい小学生どころか幼稚園児でも簡単に出来ることよ。その包丁の持ち方はダメ」

 和秀は史緒里に命令され、仕方なく調理作業を手伝う。

「今日のしおりちゃん、ちょっと怖い」

 同じ班の女の子が微笑む。

(公文さん、烏谷くんへの愛情が篭ってるわね)

 保母先生は教卓から感心気味に観察していた。

「和秀、頑張れよ。料理出来るようになるとけっこう楽しいぞ」

「和ちゃん、頑張って隆靖くんみたいに家事の出来る男の子になってね」

 隆靖と千晃はそんな和秀を傍から応援してあげた。

     ※

「やっほー隆靖お兄ちゃん、家事は今もちゃんとやってる?」

次の日曜日、ポニャメラがまた遠藤宅を訪れて来た。

「いや、昨日からはほとんどやってない。俺今、期末試験前で忙しいからな」

「それは絵里乃お姉ちゃんも同じことでしょ。甘えちゃダメ。サボり癖がついてまた元に戻っちゃいそうね」

ポニャメラはあれ以降もわりと頻繁に遠藤宅や埴岡宅へやって来て、隆靖に熱心にイクメン候補育成指導をしてくれている。

「おい母さん、このジャージ、明日の朝までにアイロンかけといて。審判任されてて明日着ていくから」

「はいはーい。そこ置いといて」

ちなみに父は以前と全く変わらず、家事は頼り切り。

隆靖が将来立派なイクメンパパになるためには、父を見習わないべきだろう。

    ※

隆靖達の通う高校の夏休み初日からは、

「やっほー和秀お兄ちゃん、お久し振り♪」

「あっ、あなたは確か、遠藤君に、イクメン候補育成指導をしたという、ポニャメラ・ピュロポンパさん」

「あったり♪ フルネームで覚えててくれて嬉しいな。さすが翠高でも学年トップなだけはあるね」

「なっ、なぜ? 僕んちに? 僕の部屋に?」

「お母様から頼まれたの」

「へっ!?」 

「和秀ちゃん、この可愛らしいお嬢ちゃんの言うことをちゃんと聞いて、家事上手になってね。和秀ちゃんなら絶対なれるわ」

「ママ、そんな話聞いてないよぉん」

「和秀ちゃんには、パパみたいにクイズと筆記試験のお勉強だけが取り柄の人間になって欲しくないの」

「このお兄ちゃんも指導しやすそう。よろしくね、和秀お兄ちゃん。さあ、さっそく昼食作りよ。エッチなゲームするのはそのあとね。んっしょ」

「ちょっ、ちょっと待って下さぁい。下ろしてぇー」

「頑張れ和秀ちゃん。ポニャメラちゃん、ご褒美におやつに生八ツ橋をご馳走するわね」

「ありがとうございますお母様。アタシ、和菓子大好き♪ 頑張るぞぉっ!」

 ポニャメラは和秀にもイクメン候補育成指導をすることになったのであった。

(おしまい)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ