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「あ、肝心なことをまだ何も教えていませんでしたね」
ぱっと薺は正宗から離れ正宗の前の席に座る。
「肝心なこと?」
「創像機についてですよ」
「確かに肝心だ」
正宗も真剣な表情で薺を見る。
薺も真剣な表情で話し始める。
「創像機は創造者と想像者がいないと召喚できません」
「ふむ」
あたりまえか、と頷く。
「創造者は創像機の操縦、召喚を担当します。そして、想像者は創像機の造形、武器を考え実体化させます」
「だから前回の戦闘中にいろいろ考えてたのか」
戦闘中に考え事をしていてうだうだしていたのはそのためだった。
つまりは外見は考えていたが武器のことなど何も考えていなかったのだ。
薺は少し恥ずかしそうに話を続ける。
「まぁ、その……創像機の操縦者になれて自分が考えたロボットに乗れると思って浮かれてしまっていまして」
「わからなくもないけど。女の子がそこまで興奮するなんて。この世界ではロボットは男のロマンじゃないのかな?」
「いえ、ここも主流は男性ですね。まあ女性パイロットもいますが」
結局はここも自分の世界と同じか、と納得しようとした。
が、そんな時薺の言葉に少し疑問を感じた。
「女性パイロット? ここには他にも創像機を操る人がいるのか?」
「いえいえ。量産機であるコットのパイロットですよ」
「量産機? コットってやつは創像機とは違うんだ」
「ええ、コットは魔学機ですよ」
「魔学機?」
聞いたことのない『魔学』という単語に正宗は興味を持つ。
薺は少し困ったような顔をしてその問いに答える。
「魔学というのはあれですよ。なんでしたっけ……ああそう、科学の魔法版みたいなものです」
「科学の?」
「まぁ、なんです? 科学ってのがどういうのかは知らないですけど……」
「科学を知らない? じゃあなんで科学って単語が出てくるんだ?」
正宗は疑問に思った。
ないのなら『科学』という言葉が出てくるわけもない。
そう思っていると薺が頭をかきながら喋り出す。
「あ~なんて言うかは過去に正宗さんと同じ所から来たって人間が何人かいたらしいんですよ。今現在のこの国の建物とかもその人たちの教えの名残らしくて」
「なるほどな」
だからこの世界には自分が知っているものがいくつもあるのかと納得した。
薺は元気な声で話を続ける。
「なんでも家は和風が一番とかメイドは萌えるから絶対必要とか」
「なるほどな」
一度目と二度目の『なるほどな』の意味は大幅に違う。
もはや先人たちにあきれ果てているのである。
「好き勝手やってたんだなぁ」
「好き勝手? いえ、その人たちは英雄でしたから」
何を言ってるんだという顔をして正宗を見てそういう。
正宗は少し驚いたように話す。
「英雄? 英雄ってことはその人たちも」
「ええ、創像機のパイロットだったんです」
正宗は少し驚いたが、よく考えてみれば納得した。
自分もこの世界に来た時は創像機のパイロットだった。
不思議なことでもない。
「おれの先輩達ってことか」
「わたしのご先祖様でもありますけどね」
「えっ?」
そして衝撃の真実も告げられるのであった。