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冴止達は大統領の前に立つ。
大統領は書類を見ている。
「どうも大統領。私に用とははなんです? 美しいものでも見たかったんですか?」
「美しいと言えば冴止様。間違ってないでやんすね」
何も言わずに書類を読んでいる大統領に冴止達は話しかける。
反応がないのが楽しくないためしかけたのだ。
「君たちは相変わらずだな……」
「ふ。呼んだのに待たせるからです」
「え、今の本気じゃなかったんすか?」
「……どうも私は場をわきまえないと思われているのか」
ツバサはその冴止の発言を聞き、内心驚いていた。
(わたしがつっこまなくてよかった……)
そして内心で安心した。
「本件はこの書類の内容だ……」
そう言って大統領は書類を差し出す。
そして冴止はそれを受け取る。
「……ほぉ。同盟からの救援要請ですか」
「そうだ。リアビの大量発生の元である巣の攻略だ、そうだ」
「この世界に来た時にわたしが倒した巨大昆虫ですね」
冴止はこの世界に来た時にリアビと戦闘していた。
カノットとはその時に出会っていた。
「……同盟国。ディゴットーオスにも創像機のパイロットがいる、と書いてますが」
「ああ……君の友人かも知れんぞ」
「ふむ……」
冴止は顔に手を当てて考える。
その手の当て方は片目を塞ぐようにに恰好をつけたものである。
(一緒に落ちた牙か? いや、残りの二人かもしれない)
冴止は顔から手を離す。
そして目をつぶりフッと笑う。
「わたしとしては友人に出会え協力できる可能性があるというなら今回の件は構いません」
「わっちは冴止様について行く限りでやんす」
2人のその言葉を聞くと大統領は机の上にあったもう一つの書類をつかむ。
そして2人をじっと見る。
「わかった。この書類にサインを」
「……わたしはこの世界の言葉をあまり知らんのですが」
「よい。君の『日本語』というものは一定の地位に就く者ならだれもが知っている」
「……なるほど」
差う言って冴止は書類を受け取りサインをする。
カノットも冴止のサインの下にサインをする。
そして大統領は受取、書類を確認する。
「……カノット君。君は無理して日本語で書かなくてもいい」
「あ、す、すいませんでやんす……」
書類には少し汚いカタカナでカノットの名前が書かれていた。
冴止は再び顔に手を当てる。
(カノットはすでにわたしの教えた日本語をマスターしている……か)
冴止はフッと笑った。