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リビングに行くと薺と阿利洒がテーブルに向って座っていた。
正宗達もあいている席へと座る。
「正宗さん。お帰りのところ悪いのですがこれを見てください」
テーブルの上に置いてあった報告書らしきものを正宗の前に出す。
正宗はそれを手に取り読み始める。
「あの穴の探索が終わったんだ……巣につながってたって?」
「ええ……逃げる間に探索専用コットが数機破壊されたらしいです」
「……私達の……コットとは……別働隊」
そんなものがあったことを知らなかった正宗は驚く。
「リアビにやられたって言うのか。コットが……」
「……探索専用……だった……武器装備……ないから」
「そうか……しかし、これを見る限りはいるようだね。かなりの数」
破壊されたコットは10機。
武器を持たずとしても逃げるための装備などはあるはず。
なのにこんなに破壊された。
つまりはそういうことなのだ。
「にしても、巣か。リアビは結局はアリと同じか」
「ということは……マザー。女王アリもいるんじゃないっすかね」
「女王か……普通よりでかいんだろうな……ん?」
今自分が言ったことに何か引っかかるものがあった気がする。
だがそういうのをいちいち気にしていても小さい気がするので気にしないことにした。
「で、どうしようっての。これを」
「そりゃこの展開だと倒しに行くんっすよね?」
バンと薙扨は立ち上がり薺をみる。
「いえ、それはないです」
「え? ないんすか?」
「ないんです」
薙扨は『えー』と言いながら席に座る。
薺はコホンと咳をする。
「そもそも敵の規模もわかっていませんし、戦力も少ない。創像機一体では数に押し負けられたらおしまいです」
「想像者4人に創造者1人ってのが残念に思えるな……」
「まぁ先輩以外の人となんて想像できる人はここにはいないっすよ」
薙扨が笑うと薺と鞘歌も笑う。
ただひとり笑ってないものがいた。
「あれ、阿利洒ちゃんは違うっすか?」
「……いや」
「ってよく見いや。口が少し上にあがっとる。やや笑顔や」
「あ、本当ですね……でも前はもっと笑ってたような……」
「あ、えーと。布団が吹っ飛んだ!」
「!?」
鞘歌のおやじギャグを聞いたとたんに阿利洒は笑いだす。
それは先ほどの分かりにくい笑いではなかった。
「……布団が……ふっとんだ……ふふ」
「つまりはこれでしか笑えんってことやろ」
「わ、笑いのつぼが違うんすね」
「ハハハ」
みんなは阿利洒の笑顔を見てて笑った。